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白井キャプテンの物語  作者: AI(御茶之川)
5/10

記憶忘れる町

宇宙船の名前が変わってますが、まあ人生において気にするほど重要なことではないですよ

宇宙船《ヘリオトロープ号》は、

薄紫色の霧に包まれた惑星の上空を漂っていた。


星の名前は、

「メモリア・ベータ」。


タルトの分析によれば、

“長時間滞在した生命体の記憶を少しずつ失わせる特殊な粒子”が大気に含まれているらしい。


「つまり!観光にピッタリってことだな!!」


白井キャプテンは操縦席で爆笑していた。


「どういう理屈だよ!!」

カムパレルが即座にツッコむ。


「知らん!!だが面白そうだ!!」


「最悪の船長すぎるだろ……」


宇宙船は着陸する。

見渡す限り、静かな田舎町だった。


風車。

木造の家。

レンガ道。

鈴の音みたいに鳴る信号機。


そして、

やたら住民たちの笑顔が穏やかだった。


穏やかすぎた。


「……なんか変だにゃ」


ネコさんが耳をぴくぴくさせる。


「この町、“怒り”とか“後悔”とか、そういう匂いが薄いにゃ」


「忘れてるんじゃねえの?」

カムパレルが言う。


すると。


タルトが突然黙った。


「……?」


「タルト?」

ジェントルが首を傾げる。


数秒後、

AI音声が響く。


『……申し訳ありません。先程までの分析内容に、自信を持てなくなりました』


「は?」


『本当に正しい分析なのか、不明です。私の判断は、信用性に欠けます』


「え、急にどうしたにゃ!?」


タルトのモニターに、

小さくノイズが走る。


『私は……優秀ではない可能性があります』


「おいおいおい!!」

カムパレルが青ざめた。


「自己肯定感から忘れるタイプなのかよこの星!!」


その頃。


ジェントルは町の入り口で立ち止まっていた。


「……オレ、なんて言うんだっけ」


「は?」


「走る前の……いつもの……」


「ガンダだろ」


「ガンダ……?」


ジェントルは目を丸くする。


「なんかダサくね?」


「お前が忘れると世界観崩れるんだよ!!」


さらにその横で、

ネクタイがパン屋を見つけていた。


「……あれは何だ」


「パン屋だろ」


「パン……?」


ネクタイの顔色が変わる。


「パンって……なんだ……?」


沈黙。


カムパレルが震えた。


「終わった」


ネクタイはパン屋のショーケースを見つめる。


丸いパン。

細長いパン。

クロワッサン。


だが彼の瞳には、

それらが“意味不明の物体”として映っていた。


「なんだこの茶色い炭水化物の群れは……」


「パンへの愛が概念ごと消えてる!!」


ネクタイはふらふら後退した。


「生きる意味が……」


「重い重い重い!!」


その瞬間。


ネコさんが突然立ち止まった。


「……あれ?」


「どうしたにゃ?」


「いやお前だよ」


ネコさんは困った顔になる。


「医療器具の使い方が……思い出せないにゃ」


「おい待て待て待て待て!!」


「包帯は分かるにゃ。でも、どの怪我に何をするか……」


「船医が一番終わっちゃダメだろ!!」


カムパレルは頭を抱えた。


「なんなんだよこの星……!!」


すると。


町の奥から、

鐘の音が響いた。


カラン。

カラン。


白井キャプテンだけが、

なぜかニヤニヤしていた。


「やっぱりな」


「何がだよ」


「この星、“悲しい記憶”だけじゃなく、“自分を構成する核”から消していくタイプだ」


「なんでそんな冷静なんだよ!!」


「昔ちょっと似た星に行ったことがある!」


「ちょっとで済む話か!?」


白井キャプテンは町を見渡した。


「この町の住人たち、穏やかすぎるだろ?」


確かに。


誰も怒らない。

誰も泣かない。

誰も焦らない。


だがその代わり。


誰も、

“強く何かを好き”でもなかった。


「記憶を失うってのはな」


白井キャプテンが珍しく真面目な声で言った。


「苦しみだけじゃなく、“偏り”も失うってことだ」


ジェントルがぽかんとする。


「偏り?」


「好き嫌い。執着。夢。口癖。自信。怒り。愛着。そういう“その人っぽさ”だ」


ネクタイが静かに呟く。


「……パン……」


「お前は戻れ」


「戻りたい……」


すると。


町の広場の巨大時計が、

ゆっくり動き出した。


ギギギギギ。


タルトが震える声で言う。


『警告。この惑星中心部に、記憶粒子の超高密度反応』


「つまり?」


『このまま滞在すると、カムパレル様も能力を忘却する可能性があります』


「えっ」


カムパレルの顔から血の気が引く。

「いや待って、俺それ無くなったらただの口悪いガキじゃねえか!!」


「今も大体そうだにゃ」


「ネコさんまで乗るな!!」


しかしその直後だった。


カムパレルの指先で、

いつも走っているはずの雷が。


……パチッ。


小さく一度だけ弾けて、

消えた。


「…………」


「…………」


「…………え?」


カムパレルは固まる。


もう一度、手をかざす。


「来いよ雷!!ほら!!いつもの!!バリバリの!!」


シーン。


風だけが吹いた。


ジェントルが心配そうに言う。


「カムパレル……お前、なんか光ってたよな普段」


「雑な記憶やめろ!!」


「えっと……雷?電気?静電気?」


「全部スケール違うわ!!」


カムパレルは青ざめた。


「やべぇ……やべぇぞこれ……」


白井キャプテンは腕を組む。


「つまりこの星のボスを倒せば全部戻るってことだな!」


「ゲーム脳かよ!!」


「違うのか?」


「違ったらどうすんだよ!!」


「その時はその時だ!」


「船長向いてねえ!!」


すると、

タルトが急に小声になった。


『……提案があります』


「おっ」


『この星の中央塔に、“記憶固定装置”らしき建造物があります』


「らしき?」


『自信がないので断定できません……』


「まだ引きずってんのかよ!!」


『申し訳ありません……私などの推測は……』


「AIが湿度持つな!!」


ネクタイはベンチに座り込んでいた。


虚無顔で空を見ている。


「……腹減ったな」


「パン食えよ」


「パン……?」


「あっダメだまた傷開いた」


ネクタイは遠くを見る。


「なぜだろう……あの茶色い物体を見ると、胸が苦しい……」


「失恋みたいに言うな!!」


「俺は……何を愛していたんだ……」


「パンだよ!!」


「パン……」


ネクタイは頭を抱えた。


「響きだけで美味そうだな……」


「戻りかけてる!!」


その時だった。


広場の時計塔から、

大量の白い粒子が噴き出した。


ぶわぁぁぁぁっ!!


町全体を覆う。


ジェントルが目をぱちくりさせた。


「……オレ、なんで走るんだっけ」


「お前それ忘れたら終わりだろ!!」


「なんか……急いでた気がする」


「人生の核すぎる!!」


ジェントルは首を傾げる。


「……ガン?」


「ガンダ!!」


「ガンダ……」


「そうだ!!思い出せ!!」


「ガンダ……ガンダ……」


ジェントルの目が輝く。


「ガンダァァァァァッシュ!!!」


ドゴォン!!!!


一瞬で消えた。


爆風だけ残る。


数秒後、

町の遥か先から声が響く。


「行き過ぎたァァァァァ!!」


「思い出し方が雑!!」


白井キャプテンは爆笑していた。


「はっはっは!!元気でよろしい!!」


「お前だけこの星適応力高すぎんだよ!!」


カムパレルは頭を押さえる。


だんだん、

自分が何を忘れているのかすら曖昧になる。


「くそ……雷ってどう出すんだっけ……」


ネコさんが心配そうに寄る。


「落ち着くにゃ」


「落ち着いてる場合かよ……!」


「ユー……」


ネコさんが止まる。


「……?」


「……“ユー”の次が出ないにゃ」


空気が凍った。


カムパレルがゆっくり振り返る。


「おい」


ネコさんは困った顔で首を傾げた。


「カムパレルの名前……忘れちゃったにゃ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「一番キツいやつ来たにゃ!?」


「お前が言うな!!」


タルトが静かに告げる。


『限界まで残り、およそ一時間です』


「一時間過ぎたら?」


『皆様は、“元々こういう人”になります』


沈黙。


ネクタイが真顔で言う。


「それはそれで平和じゃないか?」


「お前はパンを取り戻せ!!」


白井キャプテンは帽子を深く被る。


そしてニヤリと笑った。


「よし!!中央塔に突撃だ!!」


「毎回それしかねえのかよ!!」


「あるぞ!」


「えっ」


「気合いだ!!」


「最悪だよ!!!」

中央塔へ向かう石畳の道。


夕焼けが町をオレンジ色に染めていた。


だがその景色とは裏腹に、

一行の空気はかなり終わっていた。


ジェントル「ガンダで行くぜぇぇぇぇ!!」


ドゴォォォン!!


カムパレル「待て待て待て!!だから速すぎんだよ!!」


ジェントルは遥か前方の壁にめり込んでいた。


ジェントル「うーん……なんで走ってたんだっけ」


カムパレル「また忘れてる!!」


ネクタイ「……パン……」


カムパレル「お前はずっとそれだな!!」


ネクタイ「“パン”という概念が存在していた気がする……」


白井キャプテン「パンとは宇宙だ」


カムパレル「話を広げんな!!」


タルト『中央塔まで残り800メートルです』


カムパレル「おっ、普通に案内できるじゃねえか」


タルト『でも私の案内は信用しない方がいいかもしれません……』


カムパレル「めんどくせぇ自己否定モード入ってんなぁ!!」


ネコさん「タルトちゃん、優秀だから大丈夫にゃ」


タルト『……本当でしょうか』


ネコさん「本当にゃ」


タルト『……少しだけ元気が出ました』


カムパレル「チョロい!!」


すると。


町の路地裏から、

小さな女の子が現れた。


少女「ねぇ」


全員が止まる。


少女「あなたたち、“まだ覚えてる人たち”でしょ?」


カムパレル「……!」


少女はボロボロのぬいぐるみを抱いていた。


だがその目は、

妙に大人びていた。


白井キャプテン「君は忘れてないのか?」


少女「少しだけなら」


ネクタイ「何を忘れる星なんだここは」


少女「“苦しいもの”を消す星だよ」


カムパレル「苦しいもの?」


少女「悲しい思い出。辛い記憶。後悔。失敗」


ネコさん「それなら……悪いことじゃない気もするにゃ」


少女「最初はね」


少女はぬいぐるみを強く抱いた。


少女「でもね、“苦しみと一緒に大切なもの”も消えるの」


静かに風が吹く。


少女「お母さんを亡くした人は、“お母さんとの思い出”ごと消えた」


少女「失恋した人は、“誰かを好きだったこと”まで消えた」


少女「怒りを消した人は、“夢中になる力”まで消えた」


カムパレル「……」


少女「最後には、みんな穏やかになる」


少女「でも、“空っぽ”になる」


沈黙。


ネクタイ「……怖ぇ話だな」


カムパレル「お前が真面目になると怖いんだよ」


白井キャプテンは笑わなかった。


珍しく真剣な顔だった。


白井キャプテン「中央塔に何がある?」


少女「この星の“忘却装置”」


タルト『記録と一致します』


カムパレル「おっ戻ってきたか?」


タルト『……多分』


カムパレル「戻りきってねぇ!!」


少女「でも壊せないよ」


ジェントル「なんでだ?」


少女「塔を守る人がいるから」


その瞬間。


ゴゴゴゴゴ……


中央塔の方角から、

巨大な影が現れた。


町の家より大きい。


黒いローブ。


時計の針みたいな杖。


そして顔には、

何もない。


つるりとした白い仮面。


カムパレル「うわキモッ!!」


ネコさん「初対面に失礼にゃ」


仮面の存在が、

低い声で言った。


???「……忘れれば、楽になれる」


ジェントル「誰だお前!」


???「痛みを消せば、人は争わない」


ネクタイ「でもパンも消えるぞ」


???「……パン?」


ネクタイ「お前、パン知らねぇのか?」


カムパレル「そこでマウント取るな!!」


???「忘れれば、悲しみは消える」


白井キャプテン「だが、“その人らしさ”も消える」


???「人らしさなど、苦しみの集合だ」


カムパレル「哲学強めの敵だなオイ!!」


すると。


カムパレルの頭に、

急激なノイズが走った。


ズキン!!


カムパレル「っ……!!」


ネコさん「大丈夫にゃ!?」


カムパレル「やばい……」


ジェントル「どうした!?」


カムパレルは震える声で言った。


カムパレル「“雷”って単語の意味が……もう分かんねぇ……」


空気が止まった。


ジェントル「え?」


ネコさん「カムパレルちゃん……」


カムパレルは自分の手を見る。


いつもなら、

指先にまとわりつく青白い火花。


それがもう、

“何だったか”思い出せない。


カムパレル「なんか……ビリビリするやつだった気が……」


白井キャプテン「まずいな」


カムパレル「ていうか俺、なんでこんなイキってたんだっけ……」


ジェントル「お前は元からだ!!」


カムパレル「そこは否定しろよ!!」


仮面の存在が一歩前へ出る。


???「忘却は救済だ」


???「苦しみを抱える必要はない」


ネクタイ「でも腹減るぞ」


カムパレル「全部そこに帰着すんのかよ!!」


???「執着は人を苦しめる」


ネクタイ「執着がないとパンも美味くない」


沈黙。


カムパレル「なんか説得力あるなコイツ」


ネクタイ「焼きたてへの情熱を失ったパンはただの小麦だ」


白井キャプテン「名言っぽい」


カムパレル「パン限定なんだよなぁ……」


すると突然。


仮面の存在が杖を振り上げた。


ゴォォォォ!!


白い粒子が嵐みたいに吹き荒れる!!


ジェントル「うおおおお!?」


タルト『危険です!!記憶粒子濃度急上昇!!』


ネコさん「みんな離れるにゃ!!」


しかし。


カムパレルだけが動かない。


いや。


動けない。


カムパレル「……俺」


ジェントル「カムパレル!?」


カムパレル「俺、何担当だったっけ」


全員「!!?」


カムパレル「なんか……ツッコミしてた気がする……」


白井キャプテン「かなり核心まで来てるな……」


カムパレル「あと……なんか、青い……」


パチ。


ほんの小さな火花。


カムパレル「これ、なんだ……?」


ネコさん「雷にゃ!!」


カムパレル「らい……?」


言葉が引っかからない。


まるで知らない単語みたいに、

口から滑り落ちる。


仮面の存在「苦しみを忘れろ」


仮面の存在「怒りも、後悔も、孤独も」


仮面の存在「そうすれば楽になれる」


カムパレルはぼんやりと呟いた。


カムパレル「……楽?」


白井キャプテン「聞くな!!」


カムパレル「でも……」


ジェントル「お前、そんな顔するなよ!!」


ジェントルが叫ぶ。


ジェントル「お前が毒吐かねぇと調子狂うんだよ!!」


カムパレル「え……?」


ジェントル「お前が“バカじゃねぇの!?”って言わないと、なんか静かなんだよ!!」


ネコさん「確かににゃ……」


タルト『船内騒音レベルが72%減少しています』


カムパレル「数値で言うな!!」


タルト『あっ』


カムパレル「……」


タルト『今のツッコミ、少し戻ってます!!』


白井キャプテン「よし!!もっと怒らせろ!!」


カムパレル「教育方針が終わってんだよ!!」


バチッ!!


小さく雷が走る。


ジェントル「おおっ!!」


ネクタイ「パンみたいに戻りかけてる」


カムパレル「お前まだパン戻ってねぇだろ!!」


ネクタイ「……パン?」


カムパレル「ダメじゃねぇか!!」


その瞬間。


仮面の存在が、

初めて声を荒げた。


仮面の存在「なぜ抗う!!」


町全体が震える。


時計塔の鐘が狂ったように鳴り響く。


カラン!!

カラン!!

カラン!!


仮面の存在「忘れれば平和になる!!」


白井キャプテン「だが退屈だ!!」


カムパレル「その返し船長しかできねぇよ!!」


白井キャプテンは笑う。


白井キャプテン「悲しみも怒りも執着も、全部ひっくるめて宇宙は面白いんだろうが!!」


ジェントル「そうだそうだ!!」


ネクタイ「パンも!!」


ネコさん「急に参加したにゃ」


仮面の存在は静かに俯いた。


???「……理解できない」


カムパレル「そりゃそうだろ」


仮面の存在「苦しみは消すべきだ」


カムパレル「苦しみ全部消したら、“好き”も死ぬんだよ」


仮面の存在「……!」


カムパレル「ムカつくから頑張るし、悲しいから大事にするし、失いたくないから叫ぶんだろ」


バチバチバチ!!


雷が弾ける。


カムパレル「あーもう思い出したわ!!」


ジェントル「おおおお!!」


カムパレル「俺、雷の魔法使いだった!!」


ドォォォン!!!


青白い雷が、

中央塔の空を真っ二つに裂いた。


町中の時計が一斉に狂う。


カラン!!

ガコン!!

ギギギギ!!


ジェントル「うおおおお!!戻ったァァァ!!」


カムパレル「最初からいたわ!!」


ネコさん「いつものうるささにゃ〜」


タルト『船内騒音レベル、通常値まで回復』


カムパレル「だから数値化すんな!!」


バチバチと雷をまといながら、

カムパレルは仮面の存在を睨む。


カムパレル「お前、“苦しみを消せば平和”とか言ってたな」


仮面の存在「……間違っているか?」


カムパレル「半分な」


仮面の存在「?」


カムパレル「確かに苦しみは嫌だ」


カムパレル「でも、それ無くしたら“何に必死になるか”まで消える」


ネクタイ「パンとか」


カムパレル「パンはもういい!!」


ネクタイ「よくない」


その瞬間だった。


ふわり。


町のパン屋から、

焼きたての香りが流れてきた。


ネクタイ「…………」


沈黙。


ネクタイ「……パン」


カムパレル「!」


ネクタイ「パン!!!!!!」


白井キャプテン「帰ってきたな」


ネクタイの目に、

人生の光が戻る。


ネクタイ「クロワッサン……メロンパン……カレーパン……ッ!!」


カムパレル「情緒がパンで構成されてんのかお前!!」


ネクタイは涙を流しながら叫ぶ。


ネクタイ「俺はパンを愛していたァァァァァ!!!」


ジェントル「よかったなぁぁぁ!!」


ネコさん「感動の再会にゃ」


タルト『パン概念の復旧を確認』


カムパレル「だからなんで全部観測してんだよ!!」


すると。


仮面の存在の身体が、

少しずつ崩れ始めた。


白い粒子になって、

風に溶けていく。


仮面の存在「……私は」


仮面の存在「苦しみから逃げたかっただけなのかもしれない」


白井キャプテン「誰だってそうだ」


仮面の存在「だが……」


仮面の存在は、

町を見渡した。


笑う人。

怒る人。

泣く人。

パンで騒ぐ人。


全部バラバラで、

全部うるさい。


でも、

ちゃんと生きていた。


仮面の存在「……賑やかだな」


カムパレル「まぁな」


ジェントル「ガンダで騒がしいぜ!!」


カムパレル「それ日本語として成立してねぇからな!?」


仮面の存在は、

少しだけ笑った気がした。


次の瞬間。


サァァァ……


白い粒子となって、

夜空へ消えていった。


同時に。


町を覆っていた霧が晴れる。


時計塔の針が、

正常に動き始めた。


カラン。


たった一度、

優しい鐘の音が鳴る。


タルト『惑星メモリア・ベータの記憶粒子、消失確認』


ネコさん「終わったにゃ〜」


ジェントル「腹減った!!」


ネクタイ「パン屋行くぞ」


カムパレル「お前回復早ぇな!!」


白井キャプテンは笑いながら、

空を見上げた。


白井キャプテン「いやぁ、いい星だった!!」


カムパレル「記憶消されかけたんだぞ!?」


白井キャプテン「でも忘れなかった!」


カムパレル「だいぶ危なかっただろ!!」


白井キャプテン「細けぇことは宇宙サイズで見れば誤差だ!!」


カムパレル「その価値観やめろ!!」


宇宙船《ヘリオトロープ号》は、

再び星空へ飛び立つ。


賑やかで、

騒がしくて、

ちょっとうるさいまま。


それでも。


誰一人、

“自分らしさ”を手放さないまま。


完。

白井キャプテンが言ったように"細けぇことは宇宙サイズで見れば誤差"なんですよ

なので宇宙船の名前が変わっててと気にしない気にしない。

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