停電した電気シティ
タルト『次の目的地。“機械惑星エレクト=ラグ”』
宇宙船の窓の外。
そこには、
青白いネオンに覆われた巨大都市星が浮かんでいた。
高層ビル。
空中道路。
雷みたいに走る電流。
……のはずだった。
今は違う。
真っ暗だった。
カムパレル「停電?」
タルト『はい。この星は全インフラを電力依存しています』
白井キャプテン「面白そう!!」
カムパレル「嫌な予感しかしねぇ!!」
着陸。
都市は沈黙していた。
自動ドアは閉じたまま。
エレベーター停止。
信号停止。
ロボット停止。
空中道路には大量の車が止まっている。
ネコさん「不便そうにゃ〜」
すると、
街の奥から声。
「誰か……電気を……」
現れたのは、
ボロボロの技師たちだった。
技師「中央発電塔が停止したんだ……」
タルト『解析。この都市のエネルギー炉は“超高圧雷電式”』
白井キャプテン、
ゆっくりカムパレルを見る。
カムパレル「……え?」
全員が見る。
ジェントル「おお!!出番じゃねぇか!!」
ネクタイ「……雷パンとか作れる?」
カムパレル「作れねぇよ!!」
技師が頭を下げる。
「頼む……発電塔まで来てくれ……!」
白井キャプテン「よぉぉぉし!!行くぞ!!」
カムパレル「いや待て!!なんでオレ前提なんだよ!!」
タルト『なお現在この星で唯一発電可能なのはカムパレルです』
カムパレル「責任重ッッッ!!!」
技師たちに案内され、
一行は暗闇の都市を進んでいた。
普段ならネオンで輝いているはずの街。
だが今は、
機械音ひとつしない。
静かだった。
空中道路には停止した車。
ショーウィンドウには動かないアンドロイド。
巨大広告ホログラムも、
途中で止まったまま。
ジェントル「なんか寂しいな!」
ネコさん「元気ない街にゃ〜」
カムパレルは、
少しだけ眉をひそめた。
カムパレル「……全部、電気頼りだったんだな」
技師「この星は“雷”で発展した文明なんだ」
白井キャプテン「なるほど!!」
タルト『中央発電塔まで残り3キロ』
その時だった。
ガシャン!!
前方のシャッターが閉まる。
同時に、
赤い警告灯が点滅した。
タルト『防衛システム作動』
カムパレル「停電してるのに!?」
タルト『非常用電源です』
機械音。
ズ ズ ズ……
暗闇から、
大量の警備ドローンが浮かび上がる。
赤い目だけが光っていた。
ジェントル「来たァァァ!!」
カムパレル「うわ最悪!!」
技師「ダメだ……認証システムが停止してるせいで、全員侵入者扱いなんだ!!」
ドローン群、
一斉照準。
タルト『攻撃まで3秒』
白井キャプテン「カムパレル!!」
カムパレル「分かってるよ!!」
バチィッ!!
青い雷が走る。
一瞬だけ、
暗い通路が昼みたいに明るくなった。
ドローン停止。
火花を散らしながら落下する。
技師「す、すごい……!」
ジェントル「うおおおお!!かっけぇぇぇぇ!!!」
ネコさん「ぴかぴかにゃ〜」
カムパレル「はぁ……はぁ……」
白井キャプテンが笑う。
白井キャプテン「やっぱお前すげぇな!!」
カムパレル「……っ」
少しだけ、
照れた。
しかしその瞬間。
都市全体が揺れる。
ゴ ゴ ゴ ゴ……
タルト『警告。中央発電塔、出力暴走』
技師「そんな……!」
窓の外。
遠くに見える巨大な塔が、
青白い雷を噴き上げ始めていた。
空が裂ける。
稲妻が都市中へ落ちる。
タルト『このままでは都市機能が完全崩壊します』
白井キャプテン「よぉぉぉし!!面白くなってきた!!」
カムパレル「面白くねぇよ!!」
すると技師が、
震える声で呟いた。
「発電塔には、“雷王炉”がある……」
カムパレル「雷王炉?」
技師「星そのものの雷エネルギーを制御する炉だ……だが今、暴走してる」
沈黙。
技師は、
まっすぐカムパレルを見た。
「止められるのは……たぶん君だけだ」
カムパレル「……は?」
技師「雷王炉は、生体雷電認証式なんだ」
カムパレル「なんだその嫌な名前」
タルト『簡潔に説明します。“雷を扱える存在”でなければ制御不可能です』
カムパレル「つまり?」
タルト『現在この場で適任なのはカムパレルのみです』
カムパレル「だからー、責任重すぎるだろ!!!!」
ズ ゴ ォ ォ ォ !!
遠くで発電塔が爆ぜる。
空へ青白い雷柱。
都市全体の照明が、
点いたり消えたりを繰り返す。
止まっていた巨大広告が、
一瞬だけ起動。
『本日のおすすめ!感電防止ゴム手袋!』
カムパレル「今それ出すなよ!!」
白井キャプテン「よし、急ぐぞ!!」
ジェントル「ガンダで行くぜぇぇぇぇ!!」
ド ゴ ン !!
ジェントル、
走った瞬間に地面を割る。
技師「速っ!?」
カムパレル「だから毎回加減しろって!!」
一行は、
停止した空中列車へ飛び乗る。
当然、
動いていない。
白井キャプテン「カムパレル!」
カムパレル「はいはい!!」
バチィッ!!
雷を流し込む。
すると。
ブ ゥ ゥ ゥ ン……
列車起動。
車内照明復活。
エンジン点火。
技師「動いたァァァ!!」
ジェントル「すげぇぇぇ!!」
ネコさん「車内ちょっと暖かくなったにゃ〜」
カムパレル「……」
少しだけ、
嬉しそう。
だがその時。
タルト『警告。前方線路崩落』
カムパレル「は?」
窓の先。
空中レールが途中で消えていた。
ジェントル「うおおおおお!?!?」
白井キャプテン「問題ない!!!」
カムパレル「あるわ!!!」
白井キャプテン、
操縦桿を握る。
白井キャプテン「列車とはつまり細長い宇宙船だ!!!」
カムパレル「違ぇよ!!!!」
ガコン!!
列車変形。
技師「変形したァァァ!?」
タルト『《緊急飛行モード》へ移行』
ネコさん「そういう機能あったんだにゃ」
カムパレル「なんでだよ!!」
列車、
空へ飛ぶ。
下では、
暗い都市が雷に照らされていた。
その中心。
巨大発電塔。
空へ伸びる塔の周囲で、
青い雷竜みたいなエネルギーが暴れている。
技師が青ざめる。
「あれが……暴走した雷王炉……」
タルト『出力値、危険領域突破』
白井キャプテンの目が輝く。
白井キャプテン「カッコいいなァァァ!!」
カムパレル「感想が小学生なんだよ!!」
その瞬間。
雷竜が、
こちらを見た。
巨大な雷竜は、
空中でゆっくり首をもたげた。
青白い電撃でできた身体。
都市ビルほどある角。
目は、
発電塔そのものみたいに光っている。
ギ ロ リ。
カムパレル「……見た?」
タルト『はい。“認識”されました』
次の瞬間。
ズ ガ ァ ァ ァ ン !!
雷ブレス。
空が裂ける。
ジェントル「うおおおおおお!?」
白井キャプテン「回避ィィィ!!」
列車が急旋回。
雷がかすめた瞬間、
後方のビル群が蒸発した。
技師「ひぃぃぃぃ!?」
カムパレル「威力おかしいだろ!!」
ネコさん「静電気ってレベルじゃないにゃ〜」
雷竜は、
低く唸る。
タルト『解析。“雷王炉の自己防衛機構”と思われます』
白井キャプテン「なるほど!!つまりアイツを突破すればいいんだな!!」
カムパレル「毎回その結論だけは早いな!!」
雷竜、
再び口を開く。
バチバチバチッ!!
周囲の空気が焼ける。
タルト『第二射、来ます』
白井キャプテン「ジェントル!!」
ジェントル「ガンダで行くぜぇぇぇぇ!!」
ド ゴ ン !!
ジェントル、
飛び出す。
空中を走る。
いや、
雷の上を走っている。
技師「人間!?」
カムパレル「気合いで説明つくタイプのバカだ!!」
ジェントルは、
雷竜の顔面へ一直線。
ジェントル「うおおおおおお!!!」
ズ ガ ァ ァ ン !!
真正面衝突。
衝撃で空が光る。
しかし。
ジェントル「かっっっっっってぇぇぇぇ!!!」
吹っ飛ばされる。
列車へ激突。
カムパレル「うわぁぁぁ!!」
タルト『ジェントル、生存確認』
ジェントル「ガンダで痛ぇ……」
白井キャプテン「よし次!!」
カムパレル「作戦雑すぎるだろ!!」
すると。
雷竜が、
今度はカムパレルを見た。
空気が変わる。
バチ……バチチ……
周囲の電流が、
カムパレルへ集まり始める。
タルト『反応確認。“同属性認識”です』
カムパレル「同属性?」
技師「まさか……」
雷竜は、
じっとカムパレルを見つめていた。
怒っているようにも。
迷っているようにも見える。
ネコさん「……あの子、苦しそうにゃ」
カムパレル「!」
雷竜の身体には、
黒いノイズみたいな亀裂が走っていた。
雷が暴発している。
タルト『炉心エネルギー過多。制御限界を超えています』
技師「雷王炉が壊れかけてるんだ……!」
白井キャプテン「なるほど!!つまり!!」
カムパレル「分かってるよ!!」
カムパレルは、
列車の先頭へ立った。
青い雷が、
身体の周囲へ走る。
バチ……バチバチッ!!
ジェントル「おお!!」
ネクタイ「……主人公っぽい」
カムパレル「うるせぇ!!」
雷竜が咆哮する。
カムパレルも、
雷を握りしめる。
カムパレル「……行くぞ」
雷竜が、
空を裂くように咆哮した。
ズ ガ ァ ァ ァ ァ ン !!
青白い稲妻が、
都市全体へ走る。
ビルが揺れる。
空中道路が崩れる。
技師たちは悲鳴を上げた。
だが。
カムパレルは逃げなかった。
バチ……バチバチッ!!
右手へ、
青い雷が集まる。
白井キャプテン「行けぇぇぇぇ!!」
カムパレル「お前は黙ってろ!!」
ジェントル「ガンダで応援してるぜぇぇぇ!!」
ネクタイ「……終わったらパン食う?」
ネコさん「無理しすぎるにゃ〜」
タルト『カムパレル。炉心との雷同期率、上昇中』
雷竜が突っ込んでくる。
巨大な顎。
暴走する雷。
だがカムパレルは、
真正面から手を伸ばした。
バチィィィィィィィッ!!!!
激突。
都市が昼みたいに光る。
技師「うわぁぁぁ!?」
白井キャプテン「おおおおお!!」
カムパレルの雷と、
雷竜の雷がぶつかり合う。
押される。
身体が浮く。
皮膚が焼けそうになる。
カムパレル「ぐっ……!!」
その時。
雷竜の瞳が見えた。
苦しそうだった。
濡れて凍えた犬みたいに、
震えていた。
カムパレル「……お前」
バチ……。
カムパレルは、
握っていた雷を少し緩めた。
カムパレル「ずっと一人で耐えてたのかよ」
沈黙。
次の瞬間。
雷竜の暴走が、
少しだけ止まる。
タルト『精神同期を確認』
技師「まさか……対話してるのか!?」
カムパレル「分かるんだよ……同じ雷だから」
そして。
カムパレルは、
自分の雷をゆっくり流し込んだ。
破壊じゃない。
落ち着かせるように。
静かに。
優しく。
バチ……バチ……
雷竜の身体を走っていた黒い亀裂が、
少しずつ消えていく。
咆哮が弱まる。
暴走していた空の雷も、
ゆっくり静まっていった。
やがて。
雷竜は、
静かに頭を下げた。
都市に、
光が戻る。
ネオン復活。
空中道路再起動。
止まっていた機械たちが、
次々に目を覚ます。
技師たちが歓声を上げた。
「街が……戻った……!」
「発電塔も正常化してる!」
ジェントル「うおおおお!!すげぇぇぇぇ!!」
ネコさん「頑張ったにゃ〜」
ネクタイ「……今日は雷パン記念日」
カムパレル「そんな記念日ねぇよ!!」
だが。
少しだけ、
嬉しそうだった。
白井キャプテンは、
ニヤニヤしながら肩を組む。
白井キャプテン「やっぱお前、すげぇ魔法使いだな!!」
カムパレル「……うるせぇ」
でも、
今度は本気で嫌そうではなかった。
その後、
機械惑星エレクト=ラグでは、
カムパレルのことをこう呼ぶようになる。
“蒼雷の再起動者”。
なお本人は、
その二つ名を全力で嫌がった。
完ならぬ電。




