その人誰やねん知らない設定やぞ
宇宙船「オリオン号」。
多次元宇宙を気ままに旅するこの船は、ある日、何の変哲もない惑星の軌道上を漂っていた。
タルト「惑星の分析が完了しました。大気、地質、生物反応ともに特筆すべき異常はありません」
白井キャプテン「じゃあ降りよう!」
ペリカリノ「何でだよ」
白井キャプテン「特筆すべき異常がないからだ!」
ペリカリノ「理由が逆なんだよ!」
ジェントル「いいじゃん! 行こうぜ!」
ネクタイ「……パンある?」
ジェントル「たぶんあるって!」
ネクタイ「じゃあ行く」
ペリカリノ「パンで決めるな!」
ネコさん「まあまあ、みんな落ち着くにゃ」
白井キャプテン「よし! 全員、惑星へ――」
タルト「待ってください」
白井キャプテン「どうした?」
タルト「今、船内に誰かいます」
全員が黙った。
白井キャプテン「……誰?」
タルト「分かりません」
ペリカリノ「お前が分からないってどういうことだよ」
タルト「監視カメラには何も映っていません。しかし、船内センサーは確かに生命体の反応を検出しています」
ネコさん「船員じゃないのかにゃ?」
タルト「現在、船内にいるのは白井キャプテン、ジェントル、ネクタイ、ペリカリノ、ネコさん、そして私です」
ペリカリノ「つまり……」
タルト「私が検出しているのは、6人目の存在です」
ネクタイ「パン……」
ジェントル「おいおい、マジかよ!」
白井キャプテン「面白そうだな!」
ペリカリノ「お前だけ楽しむな!」
白井キャプテン「よし、探そう!」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
ペリカリノ「待て! こういう時に走るな!」
ジェントル「ガンダ!」
ペリカリノ「聞け!」
ジェントルは廊下を猛スピードで駆けていった。
数秒後。
ジェントル「誰もいねえぞー!」
タルト「ジェントルさんの位置を確認しました」
ペリカリノ「いや、そこじゃなくて幽霊を探せ!」
ネコさん「幽霊さん、怖がってないといいにゃ」
ペリカリノ「ネコさん、幽霊にまで優しいの?」
ネコさん「困っているなら助けてあげたいにゃ」
ネクタイ「幽霊……パン食べるかな」
ペリカリノ「知らねえよ」
その時だった。
廊下の照明が、一つずつ消えていった。
パッ。
パッ。
パッ。
ペリカリノ「……」
ジェントル「……」
ネクタイ「……」
ネコさん「……」
白井キャプテン「おお」
ペリカリノ「『おお』じゃねえ!」
タルト「生命反応が接近しています」
ペリカリノ「どこから!」
タルト「後ろです」
全員が振り返った。
誰もいない。
しかし。
廊下の奥から、
コツ……
コツ……
と、何かが歩いてくるような音が聞こえた。
ジェントル「……誰かいる?」
コツ……
コツ……
ペリカリノ「おい……」
ネコさん「落ち着くにゃ」
ネクタイ「パン……」
ペリカリノ「今パンの話するな!」
白井キャプテン「よし!」
突然、白井キャプテンが走り出した。
ペリカリノ「何してんだ!」
白井キャプテン「音の正体を確かめる!」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
ペリカリノ「だから走るなって!」
二人が音のする方向へ突っ込んでいく。
そして――
コツ……
コツ……
音が止まった。
ジェントル「……あれ?」
白井キャプテン「消えたな」
ペリカリノ「どこ行ったんだ……?」
タルト「生命反応が消失しました」
ペリカリノ「は?」
タルト「現在、船内に生命反応は5名です」
ネコさん「幽霊さん、いなくなったにゃ」
ネクタイ「パン食べに行ったのかな」
ペリカリノ「だから知らねえって!」
白井キャプテン「まあいい。惑星へ行こう」
ペリカリノ「いいのかよ!」
白井キャプテン「幽霊なんて宇宙船にはよくいる」
ペリカリノ「初耳だよ!」
白井キャプテン「昔、宇宙船に住み着いた幽霊を三匹飼っていた」
ペリカリノ「もっと初耳だよ!」
タルト「そのような記録はありません」
白井キャプテン「タルトが生まれる前だからな」
タルト「私は3歳です」
白井キャプテン「そうだった」
ペリカリノ「何なんだよ、この船……」
その夜。
全員がそれぞれの部屋へ戻った。
ネコさんは医務室。
ネクタイは食堂。
ジェントルはトレーニングルーム。
ペリカリノは自室。
そして白井キャプテンは――
船長室で寝ていた。
午前二時。
船内は静まり返っている。
タルト「……」
小型監視カメラが船内を巡回する。
食堂。
異常なし。
医務室。
異常なし。
トレーニングルーム。
異常なし。
廊下。
異常なし。
そして――
船長室。
タルト「……?」
カメラの映像に、奇妙なものが映った。
白井キャプテンのベッドの横。
誰もいないはずの場所に、
人影が立っている。
タルト「……生命反応、検出」
影はゆっくりと白井キャプテンへ近づく。
しかし、次の瞬間。
白井キャプテン「うるさい!」
影「……」
白井キャプテン「寝てるんだから静かにしろ!」
影「……」
白井キャプテン「明日早いんだぞ!」
影「……」
白井キャプテン「あと電気消してくれ」
影は動かなかった。
白井キャプテン「……自分で消すか」
白井キャプテンが起き上がる。
すると影は――
すっと消えた。
白井キャプテン「?」
翌朝。
全員が食堂に集まっていた。
タルト「昨夜、船長室に未知の存在が出現しました」
ペリカリノ「やっぱり幽霊だったのか!」
ジェントル「マジか!」
ネコさん「怖かったにゃ?」
タルト「いえ」
ペリカリノ「なんで?」
タルト「その存在について、データベースを再確認しました」
白井キャプテン「何だった?」
タルト「以前、この宇宙船を所有していた船長の記録に一致します」
全員「……」
ペリカリノ「え?」
タルト「この船には、以前の船長がいました」
白井キャプテン「そうなのか?」
タルト「はい」
ペリカリノ「知らなかったのかよ!」
白井キャプテン「知らない」
ペリカリノ「自分の宇宙船だろ!」
タルト「そして、その船長は約100年前に亡くなっています」
ジェントル「……幽霊じゃん」
ネコさん「そうみたいにゃ」
ネクタイ「で、パンは?」
ペリカリノ「お前は本当にブレないな」
タルト「ただし、不可解な点があります」
ペリカリノ「何だよ」
タルト「昨日まで、その船長の記録は存在していませんでした」
全員が固まった。
タルト「今朝、突然追加されています」
白井キャプテン「へえ」
ペリカリノ「へえじゃねえ!」
タルト「さらに、船長の記録には一文だけ残されています」
ペリカリノ「何て?」
タルト「『次の船長へ。船をよろしく頼む』」
しばらく沈黙が続いた。
白井キャプテン「……いい人だったんだな」
ネコさん「そうみたいにゃ」
ジェントル「じゃあ安心だな!」
ペリカリノ「いや、昨日普通に幽霊出てるからな?」
白井キャプテン「よし!」
突然、白井キャプテンが立ち上がった。
白井キャプテン「この船をもっと大切にしよう!」
ペリカリノ「急にまともになったな」
白井キャプテン「まずは――」
白井キャプテンは船内を見渡した。
白井キャプテン「全員で大掃除だ!」
ペリカリノ「嫌な予感しかしない」
ジェントル「やろうぜ!」
ネクタイ「パン食堂だけなら」
ネコさん「みんなでやるにゃ」
タルト「了解しました」
ペリカリノ「結局やるのかよ……」
その瞬間。
食堂の奥から、
コツ……
と音がした。
全員が振り返る。
誰もいない。
白井キャプテン「……」
ジェントル「……」
ネクタイ「……」
ネコさん「……」
ペリカリノ「……」
タルト「……」
白井キャプテン「……まあ、掃除するか」
ペリカリノ「お前、もう慣れたのかよ!」
――そしてオリオン号は、今日も多次元宇宙を旅していく。
ただし船内には、
今も一人。
誰にも見えない船員がいる。
タルト「……船内生命反応、7名」
ペリカリノ「増えてんじゃねえか!!」
完
エピソードタイトルの通りですよ、誰ですかその以前の船長というのは!
この船は!この宇宙船は白井キャプテンが両親からのプレゼントで貰ったものなんですが?




