角砂糖が主食なんでスー
なお、出発する際にエネルギーは使われます。
宇宙船は、白い惑星の上空をゆっくりと旋回していた。
惑星の表面は、ほとんど真っ白だった。
雪ではない。
砂糖である。
地面も、建物も、道路も、遠くに見える山さえも、白い角砂糖のような物質でできている。
白井「うわー。すげえ星だな」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
白井「待て。宇宙船から降りるなよ」
ジェントル「了解! ガンダで待機する!」
ペリカリノ「どういう待機だよ」
ネコさん「ふふふ、みんな元気だにゃ」
タルト「惑星の大部分を構成している物質は、糖類です」
ネクタイ「……パンは?」
タルト「ありません」
ネクタイ「そうか」
ネクタイは興味を失った。
白井「じゃあ、ちょっと着陸するか」
ペリカリノ「どこに?」
白井「あそこ」
白井が指差した先には、巨大な建物があった。
建物の中には、大量の角砂糖が積まれている。
タルト「船長。あの施設は、この惑星の食料貯蔵庫です」
白井「へえ」
ペリカリノ「へえ、じゃねえよ」
白井「じゃあ、近くに停めよう」
ペリカリノ「なんでだよ!」
しかし、もう遅かった。
宇宙船は降下を開始した。
そして――
ズズズズズ……。
巨大な宇宙船が、角砂糖貯蔵庫のすぐそばに停止した。
その瞬間。
宇宙船の底部から、強い熱が放出された。
周囲の空気が揺らぐ。
貯蔵庫の中では――
角砂糖が、少しずつ溶け始めていた。
ポタ。
ポタポタ。
やがて大量の角砂糖が、白い液体へと変わっていった。
しばらくして。
外から悲鳴が聞こえた。
宇宙人「大変だー!」
宇宙人「砂糖が溶けているぞ!」
宇宙人「何者かが砂糖を溶かしたんだ!」
宇宙船の中。
白井「……なんか騒がしくない?」
ペリカリノ「お前のせいじゃね?」
白井「俺?」
タルト「原因を特定しました」
白井「何だった?」
タルト「宇宙船が停止する際に発生したエネルギーによる熱です」
沈黙。
白井「……俺たちのせいじゃん」
ペリカリノ「そうだよ!!!」
ネコさん「まあまあ、事故ならちゃんと説明すれば大丈夫だにゃ」
その直後、宇宙船の扉が開いた。
外には、角砂糖を手にした宇宙人たちが大量に立っていた。
宇宙人「角砂糖を溶かしたな!」
白井「いや、違う! 事故だ!」
ペリカリノ「いや、原因は俺たちだけどな!」
白井「おい!」
宇宙人「問答無用!」
宇宙人たちが一斉に杖を掲げる。
空間が歪んだ。
ペリカリノ「えっ」
次の瞬間。
ドンッ!
船員たちは全員、真っ黒な空間へ落下した。
白井「うわあああああ!」
ジェントル「ガンダで落ちるぜええええ!」
ネクタイ「パン……」
ネコさん「にゃああああ!」
タルト「落下を確認しました」
ペリカリノ「実況してる場合かタルトォ!」
そして――
ドサッ。
全員が地面に落ちた。
空は赤黒く、遠くには巨大な山がそびえている。
無数の悪魔たちがこちらを見ていた。
そこは地獄だ。
ジェントル「……ここ、どこだ?」
タルト「地獄です」
白井「マジか」
ペリカリノ「マジかじゃねえよ!」
悪魔たちが一斉に襲いかかってきた。
白井「全員、戦え!」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
ジェントルが地面を蹴った。
ドンッ!
目にも止まらない速度で悪魔の群れを駆け抜ける。
ジェントル「うおおおお!」
その横を、ペリカリノが走る。
ペリカリノ「ジェントル、右!」
ジェントル「任せろ!」
悪魔が飛びかかる。
ペリカリノは手を掲げた。
ペリカリノ「サンダー!」
バァンッ!!
空から雷が落ちた。
悪魔が吹き飛ぶ。
ペリカリノ「まだまだ!」
別の悪魔が背後から迫る。
ペリカリノ「サンダーアロー!」
バシュッ!
無数の雷の矢が空中に現れ、一斉に飛んでいく。
悪魔たちの動きを封じる。
ジェントル「すげえじゃねえか、ペリカリノ!」
ペリカリノ「当然だろ!」
巨大な悪魔が地面を叩いた。
地面が大きく揺れる。
ペリカリノ「うわっ!」
悪魔の拳が迫る。
ペリカリノは横へ飛んだ。
そして、着地と同時に手を握る。
ペリカリノ「エレキソード!」
バチバチバチッ!
雷が剣の形になる。
ペリカリノは走った。
巨大な悪魔の懐へ入り込み、一閃。
ズバッ!
悪魔がよろめく。
ペリカリノ「まだ終わってねえ!」
雷がさらに激しくなる。
ペリカリノ「ギガエレキ!」
ドォンッ!!
巨大な電撃が悪魔を包み込んだ。
悪魔はその場に倒れた。
静寂。
白井「……」
ジェントル「……」
ネコさん「すごいにゃ」
ペリカリノ「……ふん」
白井「今のかっこよかったぞ」
ペリカリノ「うるせえな」
だが、その直後。
地面が震え始めた。
ゴゴゴゴゴゴ……。
タルト「大型生命体の接近を確認」
白井「どれくらいデカい?」
タルト「非常にデカいです」
白井「ざっくりしてるな」
山の向こうから、巨大な影が現れた。
黒い翼。
巨大な角。
赤い目。
地獄の王――魔王だった。
魔王「よくぞここまで来たな、人間ども」
白井「魔王か」
魔王「そうだ」
ジェントル「じゃあ戦うぜ!」
魔王「話を聞け」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
魔王「聞け!!!」
ジェントルが突っ込む。
魔王が腕を振る。
ジェントルが吹き飛ばされる。
ジェントル「うおおおおお!」
ペリカリノ「ジェントル!」
ペリカリノが魔王を睨む。
ペリカリノ「……やったな」
雷が空を覆う。
雲が集まり、地獄全体が明るくなるほどの光が走った。
ペリカリノ「サンダートルネード!」
無数の雷が渦を巻く。
魔王が防御する。
魔王「ほう……!」
ペリカリノ「これで終わりだ!」
ペリカリノは両手を前に突き出した。
ペリカリノ「エレキサンダー!!!」
巨大な電撃が地面を走り、空へ伸び、魔王を包み込む。
轟音。
光。
そして――
静寂。
魔王「……見事だ」
ペリカリノ「……え?」
魔王「お前、なかなかやるではないか」
ペリカリノ「……そ、そうか?」
魔王「うむ」
魔王は立ち上がった。
魔王「気に入った」
白井「え?」
魔王「飲みに行くぞ」
白井「え?」
ペリカリノ「なんでだよ」
魔王「戦った者同士、酒を飲むものだろう」
こうしてなぜか。
地獄の魔王と船員たちは、酒場にいた。
テーブルの上には大量の飲み物が並んでいる。
ペリカリノ「俺、オレンジジュース」
ネコさん「私はミルクにするにゃ」
タルト「私はガソリンです」
白井「お前それ飲み物じゃないだろ」
タルト「私にとっては飲み物です」
大人たちは酒を飲んでいる。
魔王も酒を飲んでいる。
ついさっきまで戦い合っていたとは思えない光景だった。
魔王「ところで、お前たちはなぜ地獄に来たのだ?」
白井「角砂糖を溶かした」
魔王「……何?」
白井「宇宙船を止めたら、熱で砂糖が溶けた」
魔王「それは……」
魔王は少し考えた。
魔王「お前たちが悪いな」
ペリカリノ「だろ?」
白井「お前まで言うのかよ!」
酒場に笑い声が響いた。
しばらくして。
白井「じゃあ、そろそろ帰るか」
魔王「うむ」
ネコさん「楽しかったにゃ」
ジェントル「また戦おうぜ!」
魔王「次は負けんぞ」
ペリカリノ「俺も負けねえからな」
魔王「楽しみにしているぞ」
魔王と船員たちは、互いに手を振った。
全員「バイバーイ!」
こうして、なぜか仲良くなった魔王と別れた。
しかし――
地獄から出た先には、角砂糖惑星の住民たちが待っていた。
宇宙人「戻ってきたな」
白井「ただいま」
宇宙人「お前たちを地獄から戻す条件を提示する」
白井「何?」
宇宙人「宇宙船に積んでいる砂糖を、すべて我々に渡せ」
白井「全部?」
宇宙人「全部だ」
白井「……」
宇宙人「そして、その砂糖を補充するために働いてもらう」
白井「働くの?」
宇宙人「働け」
ジェントル「ガンダで働くぜ!」
ペリカリノ「お前は黙ってろ」
こうして船員たちは、角砂糖惑星で働くことになった。
運ぶ。
積む。
溶けた砂糖を片付ける。
また運ぶ。
また積む。
ネクタイ「……パンは?」
宇宙人「ない」
ネクタイ「帰りたい」
数時間後。
白井「よし! これで全部終わったな!」
宇宙人「うむ。これで帰っていい」
白井「よっしゃ!」
宇宙船へ戻る。
白井が操縦席に座った。
白井「今度は遠くに停めよう」
ペリカリノ「最初からそうしろよ」
タルト「次回から着陸地点の周囲五百メートル以内に食料貯蔵施設がある場合、警告を出します」
白井「頼むぞ、タルト」
タルト「今回も警告しました」
白井「え?」
タルト「船長は無視しました」
白井「……」
ペリカリノ「お前さぁ……」
宇宙船がゆっくりと浮上する。
角砂糖惑星が遠ざかっていく。
白井は操縦桿を握りしめた。
白井「次はどこ行く?」
ジェントル「ガンダで行けるところ!」
ネコさん「どこだろうにゃ」
タルト「現在地から最も近い惑星を検索します」
ネクタイ「パンがある星」
ペリカリノ「そんな都合のいい星あるかよ」
宇宙船は、次の世界へ向かって飛んでいった。
なお、出発する際にもエネルギーはもちろん当然ながら使われます。




