胡瓜卵星編3 ネクタイを買って。
胡瓜卵編・最終回「ネクタイを買って。」
商業施設の最上階。
そこには、この惑星でも特に高価な商品を扱う店があった。
白井キャプテン、ジェントル、ペリカリノ、ネコさん、そしてタルトは、その入口に立っていた。
ペリカリノ「……本当にここなのか?」
タルト「はい。先ほど検出した『特殊商品の入荷』記録と一致します」
ジェントル「よっしゃ! ガンダで探すぜ!」
ペリカリノ「待て店内で走るな!」
店内には、奇妙な商品がずらりと並んでいた。
珍しい鉱物。
宇宙船の部品。
異星の食器。
巨大な置物。
そして――
奥のショーケース。
そこに、一人の男が座っていた。
パンを食べている。
ジェントル「…………」
ペリカリノ「…………」
ネコさん「…………」
白井キャプテン「…………」
間違いない。
ネクタイだ。
ネクタイ「パン……」
ジェントル「ネクタイ!!」
ジェントルが駆け寄る。
ネクタイは顔を上げた。
ネクタイ「……ジェントル?」
ジェントル「お前、いつからここにいるんだよ!」
ネクタイ「パンを買いに行ったら……」
ペリカリノ「パンを買いに行ったらなんで商品になるんだよ!!」
ネクタイ「知らない」
白井キャプテン「なるほど」
ペリカリノ「何が『なるほど』なんだよ!」
タルトが店内の記録を調べる。
タルト「この惑星では、非常に珍しい能力や特徴を持つ存在が『特殊商品』として扱われることがあります」
ペリカリノ「つまり……」
タルト「ネクタイさんは、極めて高いナイフ技術を持つことが評価され、特殊商品として登録されたようです」
ペリカリノ「本人の意思は!?」
タルト「記録上、確認されていません」
ペリカリノ「最悪だなこの店!!」
白井キャプテンはショーケースの前に立った。
白井キャプテン「いくらだ?」
店員「3億円です」
全員が黙った。
ジェントル「…………」
ペリカリノ「…………」
ネコさん「…………」
白井キャプテン「…………」
タルト「ネコさんの資産は3億2千万円相当です」
白井キャプテンがネコさんを見る。
白井キャプテン「買えるな」
ネコさん「買えるにゃ」
ペリカリノ「本当に買うのかよ!」
白井キャプテン「仲間だからな」
ネコさんは店員のところへ歩いていった。
ネコさん「この子をお願いしますにゃ」
店員「3億円です」
ネコさん「はいにゃ」
共感通貨が、店員の前に積み上がった。
金貨。
紙幣。
光る硬貨。
その量は、山のようだった。
店員「……確認しました」
店員が鍵を取り出す。
カチャリ。
ショーケースが開いた。
ネクタイ「パン……」
ジェントル「お前、第一声がパンなんだな!」
ネクタイ「腹減った」
ジェントル「パン買いに行こうぜ!」
ネクタイ「行く」
ペリカリノ「急に行動力出るなよ!!」
ネクタイは立ち上がった。
そして店員から渡された紙袋を見る。
ネクタイ「パンは?」
店員「……ありません」
ネクタイ「帰る」
ペリカリノ「切り替え早っ!!」
こうしてネクタイは無事に仲間たちのもとへ戻った。
船へ帰る道中。
白井キャプテン「しかし、3億円使ってしまったな」
ペリカリノ「そりゃそうだろ」
白井キャプテン「残りは?」
タルト「2千万円相当です」
ジェントル「十分じゃん!」
白井キャプテン「よし!」
白井キャプテンが拳を握る。
白井キャプテン「帰るぞ!」
ネクタイ「パン買って」
白井キャプテン「分かった」
宇宙船へ戻る。
ネコさんは少し疲れた様子で椅子に座った。
ネコさん「今日はいっぱいお話を聞いたにゃ」
ペリカリノ「……まあ、結果的には役に立ったな」
ネコさん「みんなのお話を聞けて楽しかったにゃ」
すると、タルトが静かに報告する。
タルト「ネコさん」
ネコさん「どうしたにゃ?」
タルト「共感通貨の残高を確認しました」
ネコさん「まだあるのかにゃ?」
タルト「はい」
全員が振り返る。
タルト「ネクタイさんを購入した後も、残高が2000万円あります」
白井キャプテン「…………」
ジェントル「…………」
ペリカリノ「…………」
ネコさん「よかったにゃ」
ネクタイ「パン買える?」
白井キャプテン「買える」
ネクタイ「よかった」
ネクタイが満足そうに座った。
白井キャプテンは操縦席につく。
白井キャプテン「よし。帰るぞ」
タルト「次の目的地は?」
白井キャプテン「まだ決めてない!」
ペリカリノ「またそれかよ!」
ジェントル「次はどこ行くんだ!?」
白井キャプテン「面白そうなところ!」
タルト「検索します」
ネコさん「楽しみだにゃ」
ネクタイ「パンは?」
ペリカリノ「お前はそれしかないのか!!」
宇宙船が惑星を離れる。
共感によって稼いだ3億2千万円。
そのほとんどを使って、仲間を一人取り戻した。
そして残った2000万円。
ネコさんは、それを見ながら静かに笑っていた。
ネコさん「……共感って、すごいにゃ」
宇宙船は次元の彼方へ飛んでいく。
白井キャプテンは、今日も何も考えていない。
ジェントルは元気に走り回り。
ペリカリノは全員にツッコミを入れ。
タルトは次の星を探し。
ネコさんはみんなを気遣い。
ネクタイは――
ネクタイ「パン」
今日もパンを食べていた。
――結果オーライ。
完
その後……。
ネクタイ「パン買って」
白井キャプテン「分かった」
……とは言ったものの、
白井キャプテン「…………」
タルト「どうしました?」
白井キャプテン「この金、地球で使えるのか?」
タルト「使えません」
白井キャプテン「…………」
ペリカリノ「おい」
ジェントル「おいおい!」
ネコさん「にゃ?」
白井キャプテン「2千万円が紙くずになったぞ!!」
ネクタイ「パン」




