「絵を描けば描くほどモテる惑星」
多次元宇宙を旅するオリオン号。
ある日、タルトが一つの惑星を発見した。
タルト「惑星を発見しました」
白井キャプテン「どんな星だ?」
タルト「生命反応があります」
ペリカリノ「住民がいるのか」
タルト「はい。さらに、非常に興味深い文化があります」
白井キャプテン「降りよう!」
ペリカリノ「だから判断が早い!」
ジェントル「いいじゃん、行こうぜ!」
ネクタイ「パンある?」
ネコさん「惑星にもパン屋さんがあるといいにゃ」
ペリカリノ「そこなの?」
一行は惑星へ降り立った。
そこは、美しい街だった。
そして街の至るところに、巨大な絵が飾られている。
白井キャプテン「絵が多いな」
タルト「住民のほぼ全員が絵を描いています」
ペリカリノ「芸術の惑星か?」
タルト「いいえ」
タルト「この惑星では、絵を描けば描くほど異性からモテます」
全員「…………」
白井キャプテン「よし」
ペリカリノ「何が『よし』だよ」
白井キャプテン「俺も絵を描こう」
ペリカリノ「何でだよ!」
白井キャプテン「モテるためだ!」
ジェントル「俺も描く!」
ネクタイ「パンの絵なら描く」
ネコさん「私はお魚を描きたいにゃ」
ペリカリノ「お前ら、そんなにモテたいのかよ!」
白井キャプテンはさっそく地面に絵を描き始めた。
白井キャプテン「宇宙船!」
タルト「1枚」
白井キャプテン「惑星!」
タルト「2枚」
白井キャプテン「ブラックホール!」
タルト「3枚」
白井キャプテン「宇宙人!」
タルト「4枚」
ペリカリノ「何でもいいのかよ」
すると。
街の住民たちが、ぞろぞろと白井キャプテンの周りに集まり始めた。
住民A「素晴らしい!」
住民B「なんて速さで描くんだ!」
住民C「もっと見せてくれ!」
ペリカリノ「本当にモテてる……」
ジェントル「すげえ!」
白井キャプテン「俺は昔から絵が得意なんだ!」
ペリカリノ「初耳だぞ」
白井キャプテン「今まで描いたことはない」
ペリカリノ「得意じゃねえだろ!」
一方、ジェントルも絵を描いていた。
ジェントル「俺はこれだ!」
そこには、
ムキムキの自分が描かれていた。
タルト「5枚目」
ジェントル「どうだ!」
住民たちが集まる。
住民D「すごい!」
住民E「力強い!」
ジェントル「だろ!」
ペリカリノ「お前は絵まで熱血だな」
ネクタイはというと――
地面にパンを描いていた。
ネクタイ「パン」
タルト「6枚目」
住民たち「……」
ネクタイ「……」
誰も近づかない。
ネクタイ「パン……」
ネコさん「かわいそうにゃ」
ネクタイ「もう一枚描く」
ペリカリノ「そこまでしてモテたいのかよ」
ネクタイはもう一度パンを描いた。
タルト「7枚目」
誰も来ない。
ネクタイ「……」
さらにパンを描く。
タルト「8枚目」
さらに。
「パン」
「パン」
「パン」
「パン」
タルト「現在、パンの絵が47枚あります」
ネクタイ「……」
ネコさん「すごいにゃ」
ネクタイ「パン屋になりたい」
ペリカリノ「目的変わってるぞ」
ところが。
突然、街の住民たちがネクタイの周りに集まった。
ネクタイ「?」
住民F「なんて情熱なんだ!」
住民G「これほどパンを描き続けるとは!」
住民H「彼は本物のパン愛好家だ!」
ネクタイ「……」
住民F「素晴らしい!」
ネクタイ「パン……」
ペリカリノ「結局モテた!」
ネコさん「よかったにゃ」
ネクタイ「パン食べたい」
ペリカリノ「そこは変わらないんだな」
そしてペリカリノ。
ペリカリノ「……」
ペリカリノは絵を描いていなかった。
住民「君は描かないのか?」
ペリカリノ「描きません」
住民「なぜ?」
ペリカリノ「そもそも、何で絵を描いたらモテるんだよ」
住民「この星ではそれが普通だからだ」
ペリカリノ「じゃあ聞くけど」
ペリカリノは街を指差した。
ペリカリノ「誰が一番モテてるんだ?」
住民「……」
ペリカリノ「絵を一番たくさん描いてる奴か?」
住民「……」
ペリカリノ「じゃあ、絵を一番たくさん描いた奴は、世界中の誰よりもモテてるのか?」
住民たちは黙り込んだ。
ペリカリノ「おかしいだろ」
その瞬間。
街中の住民たちが一斉に絵を描き始めた。
住民A「もっと描かなければ!」
住民B「私は100枚!」
住民C「私は1000枚!」
住民D「私は1万枚だ!」
ジェントル「うわあ!」
白井キャプテン「すごい!」
ペリカリノ「違う! そういう意味じゃねえ!」
タルト「惑星全体で絵の生産量が急増しています」
ペリカリノ「報告するな!」
ネコさん「みんな必死にゃ……」
やがて街は、
絵。
絵。
絵。
絵。
絵。
絵だらけになった。
白井キャプテン「……」
ジェントル「……」
ネクタイ「……」
ネコさん「……」
ペリカリノ「……」
タルト「現在、惑星全体の絵の枚数は約8億枚です」
ペリカリノ「増えすぎだろ!」
白井キャプテン「これはまずいな」
ペリカリノ「お前が始めたんだよ!」
白井キャプテン「なら、絵を描くのをやめればいい」
ペリカリノ「そうだな」
白井キャプテンは地面に一枚の絵を描いた。
「全員、絵を描くのをやめる」
タルト「……」
街中が静かになった。
住民たちは筆を置いた。
そして互いを見つめる。
住民A「……」
住民B「……」
住民C「……」
しばらくして。
住民A「……普通に話せばいいんじゃないか?」
住民B「そうだな」
住民C「今まで何で絵ばかり描いていたんだ?」
ペリカリノ「ようやく気づいたか」
ネコさん「絵を描くのは楽しいけど、それだけじゃないにゃ」
ジェントル「一緒に走るのも楽しいぜ!」
ネクタイ「パン食べるのも」
ペリカリノ「お前はそれしかないのか」
白井キャプテン「よし、帰ろう!」
ペリカリノ「急だな!」
白井キャプテン「絵も十分描いた!」
ジェントル「ガンダで帰るぜ!」
ペリカリノ「走るな!」
オリオン号へ戻る一行。
しかし――
出発直前。
タルト「問題があります」
白井キャプテン「何だ?」
タルト「惑星の住民が、オリオン号の絵を描き始めました」
ペリカリノ「……」
ジェントル「……」
ネコさん「……」
ネクタイ「……」
白井キャプテン「モテてるな、俺たち」
ペリカリノ「そういう問題じゃねえ!」
タルト「現在、オリオン号の絵が12万枚あります」
ペリカリノ「なんでだよ!」
オリオン号は慌てて惑星を離れた。
その後も惑星では、住民たちが絵を描き続けた。
ただし以前とは違う。
「誰かにモテるため」ではなく、
「誰かに見せるため」に。
完。




