うぃー、パンうま最高!
宇宙船の中。
タルトが、船内の食料保管庫を確認していた。
タルト「食料の残量を確認しました」
白井「おう」
タルト「ゼロです」
白井「……」
ジェントル「……」
ペリカリノ「……」
ネコさん「……にゃ」
ネクタイ「…………」
沈黙。
白井「よし、惑星へ行こう!」
ペリカリノ「判断が早すぎる!」
白井「食料がなければ買えばいい!」
タルト「現在の所持金はゼロです」
白井「…………」
ペリカリノ「詰んでるじゃねえか!」
白井「ならば、その惑星で働いて金を稼ぐ!」
ジェントル「働くのか!」
白井「働くぞ!」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
ペリカリノ「そこだけ妙に元気だな……」
こうして一行は、近くにあった惑星へ向かった。
◆惑星
惑星には大きな街があった。
街の中央には冒険者ギルドがあり、そこでは様々な仕事を斡旋していた。
白井「金を稼げる仕事はあるか!」
ギルド職員「ありますよ。採掘、討伐、清掃、書類整理など……」
白井「全部やろう!」
ペリカリノ「人数を考えろ!」
結局、六人はそれぞれ別の仕事をすることになった。
◆洞窟
白井とジェントルは、暗い洞窟の中にいた。
二人の前には大量の石炭。
白井「これを掘ればいいんだな!」
ジェントル「そういうことだ!」
白井「よし!」
白井はつるはしを振り下ろした。
ガキィン!
白井「…………」
ジェントル「どうした?」
白井「硬い」
ジェントル「石だからな」
白井「石炭だろ?」
ジェントル「石炭も硬いぞ!」
白井「なるほど!」
再び二人は掘り始めた。
ガキン、ガキン、と洞窟に音が響く。
ジェントル「結構楽しいな!」
白井「うむ!」
白井は黙々と石炭を掘っていた。
白井「……ところで」
ジェントル「なんだ?」
白井「石炭って何に使うんだ?」
ジェントル「知らん!」
白井「そうか!」
二人は何も知らないまま掘り続けた。
◆森
一方その頃。
ネクタイとペリカリノは森の中にいた。
こちらの仕事は魔物退治。
ペリカリノ「……なんで僕がネクタイと組まされてるんだ」
ネクタイ「パンがないから」
ペリカリノ「理由になってねえよ」
ネクタイ「パンを買うお金が必要」
ペリカリノ「それはそうだけど」
その瞬間。
茂みが揺れた。
ガサッ。
ペリカリノ「……来るぞ」
ネクタイ「……」
巨大な狼型の魔物が飛び出してきた。
ペリカリノ「エレキ!」
バチッ!
電撃が魔物に命中する。
魔物「グルァッ!」
ペリカリノ「効いてる!」
魔物が突進してくる。
ペリカリノ「避けろ!」
ネクタイは動かなかった。
ペリカリノ「ネクタイ!」
魔物の爪が迫る。
しかし。
ネクタイは片手で爪を受け止めた。
ペリカリノ「……え?」
ネクタイ「パン」
ペリカリノ「今それ言う?」
ネクタイが魔物を投げ飛ばした。
魔物は木に激突する。
ペリカリノ「…………」
ネクタイ「次」
ペリカリノ「いや、ちょっと待て」
森の奥から、さらに三体の魔物が現れた。
ペリカリノ「三体……!」
魔物たちが一斉に襲いかかる。
ペリカリノ「ギガエレキ!」
バリィィィッ!!
三体の魔物が吹き飛ぶ。
ペリカリノ「よし!」
しかし、その背後。
巨大な蛇型の魔物が木の上から降ってきた。
ペリカリノ「うわっ!」
ネクタイがナイフを取り出した。
次の瞬間。
ヒュッ。
ナイフが飛ぶ。
蛇型の魔物の目の前をかすめ、地面に刺さった。
魔物が動きを止める。
ペリカリノ「……威嚇?」
ネクタイ「違う」
ネクタイが歩いていく。
ナイフを拾う。
そして、魔物の足元に落ちていた小さなパンの欠片を見つけた。
ネクタイ「……」
ペリカリノ「どうした?」
ネクタイ「パン」
ペリカリノ「それは木の実だ」
ネクタイ「…………」
ペリカリノ「パンじゃない」
ネクタイ「そうか」
ネクタイは無表情で魔物を見る。
ペリカリノ「いや、なんで今ちょっと残念そうなんだよ」
その後も二人は森の魔物を次々と倒していった。
ペリカリノが電撃で牽制し、ネクタイが接近して仕留める。
やがて森には、魔物の姿がほとんどなくなった。
ペリカリノ「……終わったな」
ネクタイ「パンを買う」
ペリカリノ「それしか考えてないのかよ」
◆ギルド
ネコさんとタルトは、ギルドの清掃と情報整理をしていた。
ネコさん「ここ、結構汚れてるにゃ」
タルト「清掃を開始します」
タルトが小さな機械を動かし、床を掃除していく。
ネコさん「タルトちゃん、偉いにゃ」
タルト「ありがとうございます」
ネコさんは書類を整理する。
ネコさん「この情報、古いにゃ」
タルト「更新します」
こちらは極めて平和だった。
◆
夕方。
街の中央に、白井とジェントルが戻ってきた。
白井「石炭を大量に掘ったぞ!」
ジェントル「俺たちは働いた!」
ペリカリノ「こっちも魔物をかなり倒した」
白井「金はいくらになった?」
ギルド職員が報酬を計算する。
ギルド職員「採掘報酬、討伐報酬、清掃・整理報酬を合わせて――」
そのときだった。
街の外から、妙な音が聞こえた。
ドン。
ドン。
ドン。
ペリカリノ「……なんだ?」
建物の向こうから、何かが見えた。
白くて丸い。
長い耳。
小さな目。
そして――
巨大。
白井「ウサギだ!」
ジェントル「可愛いな!」
ペリカリノ「いや、デカすぎるだろ!」
巨大なウサギ型魔物が街へ入ってきた。
その名は――
カツマヨワ。
見た目は、とても可愛らしい。
しかし、その一歩だけで地面が揺れた。
ドゴォン!
ペリカリノ「……」
白井「…………」
ジェントル「…………」
ペリカリノ「絶対に可愛いだけの生物じゃないだろ!」
カツマヨワがこちらを見る。
次の瞬間。
ドンッ!!
地面を蹴っただけで、猛烈な衝撃波が街を駆け抜けた。
白井「うおおおおお!」
ジェントル「飛ばされる!」
白井とジェントルは、近くに落ちていた鉄パイプを拾った。
白井「ジェントル!」
ジェントル「分かってる!」
白井「行くぞ!」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
二人が走る。
カツマヨワが前足を振り下ろす。
ドォン!!
白井が鉄パイプで受け止める。
白井「ぐっ……!」
ジェントル「白井!」
ジェントルが横から鉄パイプを叩き込む。
しかし――
カツマヨワ「?」
効いていない。
ジェントル「マジか!」
白井「硬すぎる!」
カツマヨワが二人をまとめて吹き飛ばす。
ズザザザザッ!
ペリカリノ「白井! ジェントル!」
ペリカリノが電撃を放つ。
ペリカリノ「ギガエレキ!」
バリバリバリッ!!
カツマヨワに直撃。
しかし。
カツマヨワ「?」
ペリカリノ「…………」
カツマヨワは何事もなかったかのように歩き始めた。
ペリカリノ「効いてない……」
カツマヨワの進行方向には――
一軒のパン屋。
そして、その店の前には大量のパンが並んでいた。
ネクタイ「…………」
ネクタイが立っていた。
パン屋を見ている。
カツマヨワが一歩進む。
ドン。
もう一歩。
ドン。
パン屋まで、あと数メートル。
ネクタイの目が変わった。
ペリカリノ「……ネクタイ?」
カツマヨワが足を上げる。
パン屋を踏み潰そうとする。
その瞬間。
ネクタイ「……」
静かに一歩、前へ出た。
ネクタイ「それはダメ」
ペリカリノ「……え?」
次の瞬間。
ネクタイの姿が消えた。
カツマヨワの横を、風が走る。
ドンッ!!
カツマヨワが吹き飛んだ。
街の外まで一直線に飛んでいく。
――そして、遠くの山に巨大な土煙が上がった。
静寂。
白井「……」
ジェントル「……」
ペリカリノ「……」
ネコさん「……にゃ」
タルト「……」
ネクタイは何事もなかったかのようにパン屋へ歩いていく。
ネクタイ「パン」
パン屋の店主が震えながらパンを差し出す。
店主「ど、どうぞ……」
ネクタイ「全部」
店主「え?」
ネクタイ「全部ください」
ネクタイは、店にあるパンを片っ端から買い始めた。
◆
数時間後。
宇宙船。
食料庫には大量のパンが積まれていた。
食パン。
クロワッサン。
フランスパン。
あんパン。
その他いろいろ。
ネクタイは満足そうにパンを眺めている。
白井「これでしばらく食料には困らないな!」
ジェントル「パンだけだけどな!」
ネコさん「しばらくパン生活だにゃ」
タルト「パンの在庫を確認します」
ペリカリノ「…………」
ペリカリノが全員を見る。
ペリカリノ「いや待て」
白井「どうした?」
ペリカリノ「なんで?」
白井「何が?」
ペリカリノ「なんでウサギが街を襲って、僕らが鉄パイプで戦って、電撃も効かなくて、街が滅びかけて――」
ペリカリノはネクタイを見る。
ネクタイはパンを食べている。
ペリカリノ「――最終的に全部パンの話になってんだよ!!」
ネクタイ「パン、おいしい」
ペリカリノ「そういう問題じゃねえ!!」
宇宙船は、パンを大量に積んだまま惑星を出発した。
今日も結果オーライである。




