白井逮捕編1「キャプテン、逮捕される」
宇宙船の食堂。
白井キャプテンは、コーヒーを片手にサンドウィッチを食べていた。
ジェントルは向かいの席で朝食を食べ、ネクタイはパンを食べ、ネコさんは窓の外を眺め、ペリカリノは読書をしている。
タルトは船内の監視カメラを通して、全員の様子を把握していた。
白井「いやー、今日も宇宙は平和だな」
ペリカリノ「何を根拠に言ってんだよ」
白井「俺の勘」
ペリカリノ「一番信用できねえやつじゃねえか」
その瞬間だった。
ドカーーーーン!!
食堂の背後で猛烈な爆発が起こった。
白井「うおっ!?」
ジェントル「何だ!?」
ネクタイ「パン……」
ネコさん「爆発したにゃ」
ペリカリノ「見りゃ分かるわ!」
タルト「船内後方区画にて爆発を確認。なお、現在こちらへ接近する宇宙警察船を確認しました」
白井「宇宙警察?」
食堂の壁が吹き飛ぶ。
煙の向こうから、宇宙警察の隊員たちが現れた。
警察「動くな!」
白井「え?」
警察「白井颯太氏!」
白井「はい」
警察「あなたを逮捕します!」
白井「……俺?」
ペリカリノ「お前以外に誰がいるんだよ」
白井「何で?」
警察「あなたには――」
白井「ちょっと待って」
警察「何ですか?」
白井「俺、何した?」
警察「……」
白井「いや、本当に何した?」
警察「知らないんですか?」
白井「知らない」
ペリカリノ「ニュース見てねえだろ」
白井「……」
ペリカリノ「図星かよ」
白井「今日の新聞……」
ジェントル「見てないの?」
白井「新聞、取ってない」
ペリカリノ「じゃあニュースは?」
白井「見てない」
ペリカリノ「スマホは?」
白井「宇宙船の航路検索にしか使ってない」
タルト「白井キャプテンは昨日から現在まで、ニュースサイトを一度も閲覧していません」
白井「タルト、お前そういうの言わなくていいから」
警察「では、白井颯太氏。大人しくしてください」
白井「いや待て。俺は何の罪で逮捕されるんだ?」
警察「それは――」
白井「それは?」
警察「……」
警察「署で説明します」
白井「分かった!」
ペリカリノ「納得すんな!署で説明しますって、それもう完全にヤバいやつじゃねえか」
白井「いや待って、待って。俺、本当に心当たりがないんだけど」
警察「心当たりがないというのが、一番の問題なんですよ」
白井「どういう意味?」
警察「それも署で」
白井「教えろよ!」
ジェントル「キャプテン、暴れないで!ガンダで逃げても意味ないから!」
白井「逃げねえよ!質問してるだけだろ!」
ネコさん「みんな、朝ごはん中だったのに騒がしいにゃ」
ペリカリノ「ネコさんはちゃんと状況分かってるのか」
ネコさん「わかってるにゃ。キャプテンが連れて行かれるにゃ」
ペリカリノ「わかってて呑気か」
ネコさん「にゃんとかなるにゃ」
ネクタイ「……パン、まだ半分残ってる」
ペリカリノ「そこは気にすんな!」
タルト「補足情報。宇宙警察船の型式は最新型『バロック』級。逮捕状の正式な発行日は――」
白井「タルト、それより俺の容疑を教えてくれ」
タルト「その情報は暗号化されており、私からは開示できません」
白井「お前がわからないなら誰がわかるんだよ」
警察「本人が一番よくわかっているはずですが」
白井「わからないから聞いてんだろ!」
警察「では、心当たりを一つも思いつかないと?」
白井「思いつかない!」
ペリカリノ「思いつかないって顔じゃねえけどな、それ」
白井「マジで思いつかないんだよ!」
ジェントル「キャプテン、最近何かした? 変なものに触ったとか、変なとこに行ったとか」
白井「普通に星巡って、普通に飯食って、普通に寝てただけだぞ」
ネクタイ「……その『普通』が、危ないと思う」
白井「お前まで疑うのか」
ネクタイ「疑ってない。心配してる」
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警察隊員が両脇からキャプテンの腕を取る。
白井「おい、ちょっと待て、コーヒーがまだ――」
警察「持って行けません」
白井「一口だけ」
警察「規則です」
白井「一口だけだって言ってんだろ!」
ペリカリノ「そこにこだわんな! 連行されてんだぞ、お前!」
白井「大事なことだろ、最後のコーヒーだぞ」
ネコさん「最後って決まったわけじゃないにゃ」
白井「そうだよな、うん、ネコさんの言う通りだ」
ペリカリノ「一瞬で立ち直んな」
タルト「白井キャプテン。念のため申し上げますが、抵抗行為は罪状に加算される可能性があります」
白井「それ先に言えよ!」
タルト「今言いました」
白井「もっと早くだよ!」
警察「では、参りましょうか」
白井「……分かった」
食堂を出ていく白井キャプテンの背中を、四人と一台が見送る。
ジェントル「キャプテン……」
ペリカリノ「なんだよ、湿っぽい声出すなよ」
ジェントル「だって、こんな急に……」
ネクタイ「戻ってくる」
ペリカリノ「なんでそんな自信あんだよ」
ネクタイ「キャプテンだから」
ペリカリノ「理由になってねえよ」
ネコさん「にゃ。でも、当たってる気がするにゃ」
タルト「私の統計データ上、白井キャプテンが窮地から生還する確率は――」
ペリカリノ「今それ聞きたくない」
タルト「では割愛します」
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食堂の壁には、まだ爆発の煙が薄く残っていた。
ペリカリノ「……なあ、タルト」
タルト「なんでしょうか」
ペリカリノ「お前、キャプテンの容疑、本当に知らないのか」
タルト「先ほども申し上げた通り、暗号化情報のため開示できません」
ペリカリノ「知ってるってことじゃねえか、それ」
タルト「否定はしません」
ペリカリノ「教えろよ」
タルト「規則です」
ペリカリノ「お前もキャプテンと同じこと言うのな」
タルト「同じ船の乗組員ですので」
ペリカリノ「そういうとこだけ律儀か」




