テハナ編1 召喚装置もしくは転送装置の商品
第19話「こちらの商品はなんと召喚装置もしくは転送装置で、どこかの宇宙のどこかの地球にいる生物を一時的に呼び寄せることができるよ!」の巻。
宇宙船は、何もない宇宙空間を進んでいた。
船内は静かだった。
白井キャプテンを除いて。
白井キャプテン「なあ」
ジェントル「はい!」
白井キャプテン「なんか面白いことしたくないか?」
ジェントル「したいです!」
ネクタイ「パン食べたい」
白井キャプテン「よし、全員一致だな!」
ネクタイ「一致してない」
ネコさん「私はパンでもいいにゃ~」
ペリカリノ「お前ら何の話してんだよ……」
タルト「現在、船内で『面白いこと』に該当する商品を検索しています」
白井キャプテン「商品?」
タルト「はい」
船内中央のモニターに、突然ひとつの商品ページが表示された。
そこには、奇妙な機械の写真が載っていた。
円形の台座。
その中央に立つ一本の柱。
柱の先端には、見たこともない形の金属球が浮かんでいる。
タルト「『こちらの商品はなんと召喚装置もしくは転送装置で、どこかの宇宙のどこかの地球にいる生物を一時的に呼び寄せることができるよ!』だそうです」
全員が黙った。
ペリカリノ「……」
ネクタイ「……パン?」
ジェントル「すげえ!」
ネコさん「すごいにゃ~」
白井キャプテン「買おう」
ペリカリノ「待て」
白井キャプテン「なんだ?」
ペリカリノ「なんで買うんだよ」
白井キャプテン「面白そうだから」
ペリカリノ「理由が小学生なんだよ!」
白井キャプテン「でもな、ペリカリノ」
白井キャプテンはモニターを指差した。
白井キャプテン「この装置、かなり面白いぞ」
ペリカリノ「……何が?」
白井キャプテン「召喚と転送の両方に対応しているように見えて、実際にはどちらでもない」
ペリカリノ「……え?」
白井キャプテン「正確には、『対象の存在情報を一時的にこちらの宇宙へ投影する装置』だ」
ペリカリノの顔から、わずかに毒舌が消えた。
ペリカリノ「……なんでそんなこと分かるんだよ」
白井キャプテン「説明書に書いてある」
ペリカリノ「まだ買ってもいないのに説明書読んでんじゃねえか!」
白井キャプテン「商品ページに書いてある」
ペリカリノ「商品ページかよ!」
タルト「なお、レビューは星2.1です」
ペリカリノ「やめろ」
白井キャプテン「低いな」
タルト「『一回使ったら壊れました』というレビューが多いです」
ペリカリノ「買うなよ」
白井キャプテン「……」
白井キャプテンが商品ページを見つめる。
ペリカリノ「今ので諦めたか?」
白井キャプテン「いや」
ペリカリノ「なんでだよ」
白井キャプテン「面白そうだから」
ペリカリノ「理由が一貫してるの腹立つな!」
白井キャプテンは購入ボタンを押した。
タルト「注文を受け付けました」
ペリカリノ「本当に押したのかよ!」
白井キャプテン「当然だ」
ペリカリノ「返品できる?」
タルト「返品期限は商品到着後三日間です」
ペリカリノ「じゃあ届いてから考えるか……」
ネクタイ「パン」
ペリカリノ「お前は何がしたいんだよ」
ネクタイ「パン食べたい」
そのとき。
タルト「商品が到着しました」
ペリカリノ「早っ」
白井キャプテン「早いな」
ジェントル「すごい!」
ネコさん「通販って便利にゃ~」
船内の壁が開いた。
そこから――
巨大な段ボール箱が出てきた。
箱には大きく、
「召喚装置/転送装置」
と書かれている。
その横には小さな文字で、
「生物以外を召喚しないでください」
と書かれていた。
ペリカリノ「……」
ペリカリノ「誰がやるんだよ」
白井キャプテン「俺」
ペリカリノ「お前だよ!!」
ジェントルが箱を持ち上げた。
ジェントル「運びます!」
白井キャプテン「頼む」
ジェントル「ガンダで行くぜ!」
ジェントルが走った。
箱を抱えたまま、船内を猛烈な速度で駆け抜ける。
ペリカリノ「危ないって!」
数秒後。
ジェントル「到着しました!」
箱が置かれた。
ペリカリノが箱を見る。
ペリカリノ「……開けるの?」
白井キャプテン「ああ」
ペリカリノ「返品しない?」
白井キャプテン「しない」
ペリカリノ「そう……」
白井キャプテンが箱を開けた。
中には商品本体。
そして説明書。
白井キャプテン「よし」
説明書を取り出す。
白井キャプテン「読むぞ」
ペリカリノ「珍しいな」
白井キャプテン「まず電源」
白井キャプテンが装置を組み立てる。
タルトが横から説明書を読み上げる。
タルト「注意事項その一。対象となる生物の知的能力によっては、意思疎通が困難になる場合があります」
ペリカリノ「まあ、それくらいは分かる」
タルト「注意事項その二。対象の生物がこちらの環境に適応できない可能性があります」
ネコさん「それは心配にゃ~」
タルト「注意事項その三。召喚対象が危険な生物である場合、直ちに装置を停止してください」
ペリカリノ「大事だな」
タルト「注意事項その四」
タルトが一瞬停止する。
ペリカリノ「何?」
タルト「『何が起きても自己責任です』」
ペリカリノ「急に雑になったな」
白井キャプテン「分かった」
ペリカリノ「分かったのかよ」
白井キャプテン「よし、試そう」
ペリカリノ「待て」
白井キャプテン「なんだ?」
ペリカリノ「誰を呼ぶんだよ」
白井キャプテン「そこだ」
白井キャプテンは装置を見る。
白井キャプテン「タルト」
タルト「はい」
白井キャプテン「適当に生物を選んでくれ」
ペリカリノ「おい」
タルト「承知しました」
ペリカリノ「承知するな!」
装置が起動する。
低い音が船内に響く。
モニターに大量の文字列が流れ始める。
タルト「対象を選定しています」
ジェントル「何が来るんでしょう!」
ネコさん「楽しみだにゃ~」
ネクタイ「パン食べたい」
ペリカリノ「お前ら危機感なさすぎだろ!」
タルト「対象を決定しました」
白井キャプテン「何?」
タルト「地球型惑星に存在する生物です」
ペリカリノ「それだけ?」
タルト「はい」
ペリカリノ「情報が少なすぎるだろ!」
装置の中心に光が集まっていく。
白井キャプテンは、じっと装置を見つめる。
白井キャプテン「……」
光が強くなる。
そして――
消えた。
装置の中央に、一匹の生物が立っていた。
全員がその姿を見る。
沈黙。
ネコさん「……にゃ?」
ジェントル「……」
ネクタイ「……」
ペリカリノ「……」
白井キャプテン「……」
タルト「……」
その生物は、船内を見回した。
そして白井キャプテンを見る。
白井キャプテン「……お前」
白井キャプテンが一歩近づく。
白井キャプテン「どこの地球から来た?」
生物は答えない。
ただ、静かに白井キャプテンを見つめている。
ペリカリノ「……キャプテン」
白井キャプテン「なんだ?」
ペリカリノ「これ、本当に大丈夫なんだろうな?」
白井キャプテン「たぶん」
ペリカリノ「たぶんで召喚すんなよ!」
すると突然、タルトの船内スピーカーから警告音が鳴った。
タルト「警告」
白井キャプテン「どうした?」
タルト「この生物について、ひとつ問題があります」
ペリカリノ「何?」
タルト「私のデータベースに存在しません」
白井キャプテンが笑った。
白井キャプテン「最高じゃないか」
ペリカリノ「全然最高じゃねえよ!」
そして、その生物が――
初めて口を開いた。
???「……ここは、どこだ?」
白井キャプテンは、嬉しそうに答えた。
白井キャプテン「宇宙船だ!」
???「……宇宙船?」
白井キャプテン「ああ!」
白井キャプテンは胸を張る。
白井キャプテン「そして俺がキャプテンだ!」
ペリカリノは頭を抱えた。
ペリカリノ「……帰す方法、ちゃんとあるんだろうな?」
タルトはしばらく沈黙した。
タルト「…………」
ペリカリノ「おい」
タルト「現在、検索しています」
ペリカリノ「まさか」
タルト「……帰還方法は、まだ見つかっていません」
ペリカリノ「…………」
白井キャプテン「面白くなってきたな!」
ペリカリノ「面白くねえよ!!」




