◆純粋天使な君
これは僕と彼女のたった一年間だけの恋の物語
「夏だ!海だ!!遊園地だ!!!!」
「テンション高いね、谷崎」
「まぁ、無理もないよ、谷崎さんずっとみんなで遊びたがってたし」
僕たちは今、海にいる。
谷崎がどうしても夏休み最終日に遊びに行きたいと言うことで、午前中は海に、
午後は近くの水族館に行く予定だ
と言うわけで僕らは水着に着替え、浮き輪を受付で借り、海に入る
足に伝わる水のひんやりとした感触と砂のさらさらとした心地よさ、
海で泳ぐのは怖いのでつま先に波が当たる場所で座り込む程度だが、これもこれで思い出だ
”ゆう”は思いっきり海で泳ぎ、”こうやん”はパラソルを広げ、サングラスをかけ
いつの間にか飲み物片手にくつろいでいる
霧宮さんは僕との隣で少し浸かる程度
霧宮さんは学校指定の物ではなく、おしゃれな水着を身にまとっている
胸は黄色を基調に、フリルが付いていて、かなり可愛い
下半身はデニムショートパンツを履いている
そのため体のラインがわかる、とかそういう次元の問題ではない
(まずい、可愛すぎて、何を話せばいいのかわかんない)
「ねぇ都田くん、好きな人いる?」
唐突にそんなことを聞かれた
「え、」
戸惑っている僕をみて霧宮さんは悪戯っぽく笑った
だけどそれは、海の方をじっと見ていて、視線が合わない
「なんとなく聞いてみただけだよ、それで、いるの?」
言葉が詰まる、心臓の拍動がうるさい。どうやって答えるのが正解だ?わからない
「ごめん、わからない」
「そっか、ごめん、変なこと聞いたよね」
「霧宮さんは......いるの?」
「私?私はね~いるよ」
手が体を支えている手が震える、誰だろう、知りたい
「どんな人?」
「頑張り屋さんで、かっこよくて、ちょっとかわいくて、私には優しすぎる人」
「そっ.....か」
そっか、僕じゃないのか、全部、僕には当てはまらない
努力もしない、かっこよくもない、可愛いなんて論外、優しいのは僕の親友達
少し期待していた、もしかしたら僕じゃないのかと、
僕にだけ、その天使のような笑顔を見せてくれているのだと
(なに期待してんだ、僕、最初からわかってたじゃないか、僕は霧宮さんには見合わないって)
僕は選ばれなかった、だったらせめて嫌われないように、霧宮さんを応援しよう
「両想い......だといいね.....」
「そうだね、早く、告白してくれないかな~」
(.....これ以上聞いたらおかしくなる)
僕は振り向くと、砂浜の方へ歩き出そうとした
しかし、その時、目の前にはこちらに向かって走っている”こうやん”の姿があった
”こうやん”はそのまま僕らに向かってくる、両手を大きく広げ僕と霧宮さんを捕らえると
そのまま三人一緒に海にダイブした
”こうやん”は、まるで悪ガキのような、らしくない笑顔を浮かべ
霧宮さんは一瞬困惑していたが、すぐに楽しそうに笑った
ドボンッと大きな水柱が上がる。
一瞬で視界は海の濃い青一色に染められた
その場で足を着き、水面から顔を出す
二人の笑い声が聞こえる
「フフっ松原さんどうしたの」
「ちょっとやってみたくなってね、海に来たらやっぱり全身で水を浴びないと」
「はぁ、襲われるかと思った、いや実際襲われたか」
「アハハ、ごめんごめん、代わりと言っては何だが、あとで僕のジュースをあげるよ」
そんなこんなであっという間に午後になった、海の家で昼食を取り、バスで水族館へ向かう
そこは、市が運営する少し小さな水族館、来館者はかなり少ない
入場すると、最初に見えたのはサンゴ礁と熱帯魚の水槽
小さな熱帯魚が数十匹、サンゴ礁と共生している
そのどれもがそれぞれの輝きを放ち、優雅に水中で生きている
サンゴ礁はじっと、だが微かに揺れながら、自身の居場所を守るため水槽にしがみついている
”ゆう”と霧宮さんは目を輝かせ、水槽を注視する、僕と”こうやん”はその二人を見て表情が緩む
「ちっちぇ~な」
「あ、あの子可愛い、あの子は綺麗」
僕は不意に、この光景を写真に撮りたくなった、スマホを取り出し、シャッターを切る
シャッター音に気が付いた二人が振り向き
”ゆう”は両手を突き出して、霧宮さんは片手で小さくピースを作る
もう一度シャッターを切る
(あぁ、来てよかった、ありがと”ゆう”誘ってくれて)
僕らはまた歩き出す
次に見えてきたのは、深海魚の水槽
クラゲにノコギリザメ、ブロブフィッシュ、リュウグウノツカイのはく製まであった
少しでも触れたら溶けてしまいそうなクラゲがぷかぷかと全方向から見られる水槽に入れられている
霧宮さんはその水槽に手を当て見入っている、その姿はまるで、純粋で世の中の醜悪な部分を知らない天使のようで、僕は、その姿をカメラに収める、
「明登!霧宮!こっち来~い!!」
そう”ゆう”が僕たちを呼んだ、行ってみるとそこには【深海のおじさん】ことブロブフィッシュが展示されていた
深海のおじさんと呼ばれる所以である、陸上に揚げられた時の何とも言えないおじさんのような表情の写真も飾られている
それを見た”ゆう”はゲラゲラとガキのように笑う
「見て!おじさん!水の中におじさんがいる!!」
それを聞いた霧宮さんも笑う
「ほんとだ、画像では見たことあったけど、本物は初めて」
そして、急に”ゆう”が駆け出し、クラゲの水槽の反対側へ行くと
「さっきのおじさん」
と変顔を披露した、変顔と水槽を通すことでの歪みで、かなり面白い顔になっている
三人全員で吹き出し
僕は、面白くて床に倒れ、足をバタバタさせ笑い
”こうやん”は壁に背中を預け肩を震わせて笑い
霧宮さんは腹を抱えてしゃがみ、声を出すまいと手で口を塞ぎ笑っていた
「お前らもこっち来いよ」
と”ゆう”が、僕と”こうやん”の肩を組み連れ出す
「どうせなら霧宮、お前もだ!」
霧宮さんは笑って出た涙をぬぐい
「わかりましたよ~」
と案外乗り気だった、結局後から来た観覧客の人に頼んで写真を撮ってもらった
もちろん、変顔込みで。撮ってもらった写真を四人で見返す
五分くらいみんなで笑い転げて、息が出来なくて、腹が痛くて、楽しかった
最後は、この水族館の目玉であるイルカの大水槽
数匹のバンドウイルカと1匹のシロイルカ、そのほかにも数十種類の魚たちが広大な水槽を泳いでいる
僕たちはその迫力に、雄大さに言葉を失う
「あの子」
霧宮さんが呟く
彼女の視線を追っていくと、そこには美しく、繊細そうな1匹のシロイルカがいた
しかし、そのイルカの近くには何もいない、一目でわかった、避けられている
その美しさゆえか、他のイルカたちは距離を置いているように見えた。
ただ1匹をのぞいて
その1匹はシロイルカに近づき、ついて回る。シロイルカもどことなく嬉しそうだ
近づき、離れ、また近づく。絡み合う糸のように、その光景は儚くも、輝いていた
「私たちみたいだね、都田くん」
「え?」
「ん~ん、なんでもない、忘れて」
そう言って霧宮さんは踵を返す、いつの間にか”ゆう”と”こうやん”は出口に向かっている
「さ、帰ろ?」
そう言って霧宮さんは手を差し出す。
その後ろの壁に、光の環が現れる、それは丁度霧宮さんの頭上に位置し
天使が舞い降りたように見えた、霧宮さんは首をかしげて不思議そうに笑う
僕は振り返り水槽をみる、シロイルカが空気の輪を作り遊んでいた、
水槽の光が空気の輪を通り壁に映ったのだ
「どうしたの?口が空きっぱなしだよ?」
そう言われて初めて自分の口が開いていることに気が付く
僕は恥ずかしさで、視線を逸らす、すると
霧宮さんが僕の両手を掴む、そして片方を離し駆け出す
天使のような君は、子供のように笑う君は、笑いをこらえることに必死な君は
やっぱり、今日も眩しい
--夜--
ダンススタジオ【TELL】の更衣室にて
「で、彼女さん元気?」
「可愛かったね~!」
「後で前の飲み物代でなにかおごってね」
とそれぞれ言いたいように言っている
「だから!彼女じゃないですぅ!クラスメイトですぅ!」
(こうなると思ったよ)
結局朝日さんには100円分のお菓子を買った
ご一読感謝です!!!!
読者の皆様、水族館はお好きですか?僕は家族としかいったことないので、本文を書いている時だいぶ苦戦しました。ちなみに僕は水族館に行くとクラゲのところでいっつも10分くらい立ち止まって観察するくらいクラゲが大好きなんですよね、不思議で、儚くて、すぐに消えてしまいそうで、見てるとほんとに不思議な気分になって、、、、
とりあえず、そんなこんなで第二章-夏休み編は終了です
そして次回は、すこし昔の、小学生時代のお話が始まります
【都田明登】はもちろん、【霧宮明野】主観の物語まで⁉
と、言うことで次回【◆かつて頑張り屋さんな僕】にてお会いしましょう




