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完璧な君は僕には眩しい  作者: 夏の芽
第二章-夏休み編-
7/16

◆煌びやかな君

これは僕と彼女のたった一年間だけの恋の物語

真っ暗で、何も見えない....でも、柔らかい感触だけが伝わってくる

真っ暗闇の中、誰かに呼ばれている


「.....くん!.....だくん!.....都田君!」


僕の意識は覚醒した、額に何か冷たい物が乗っているようで気持ちがいい、おそらく濡れたタオルだろう

目の前には心配そうに僕を見つめる霧宮さんがいた

その瞳は震え、少し涙ぐんでいる


「霧宮さん?なんで僕は、膝枕されてるんだ」


「覚えてない?パレードの後、すぐに倒れちゃったんだよ

ほんとに、怖かったんだよ?熱中症は命に関わるんだから、無理しないでよ.....」

そう言って霧宮さんは立ち上がった、立ち上がった?まだ僕は膝枕をされている

と、言うことは


僕は視線を膝枕をしている張本人へと向ける、そこには


「お!起きたか明登!大丈夫か⁉」


と、谷崎がいた、彼は両手を地面について上半身を支え上を眺めていた


「お前かい!......でも、まぁ、ありがと、いろいろと」


「あ、起きてる、ちょうどよかった。ほらスポドリ買ってきたから飲みな~」

そう言ってレジ袋を片手に下げた”こうやん”が歩いてきてスポドリを二本手渡してくれた

ありがたく受け取って飲み始める

その間、事の顛末を教えてもらった


パレードが終わり礼をした後、四人で感想を言いに行こうとしたところ

霧宮さんが僕の顔色がおかしいことに気が付いた、その直後に僕が倒れた

それを霧宮さんが受け止めてくれて、意識が無くなった僕を谷崎と山岸で路肩に運び

体を冷やしてくれていたわけだ、


因みに【TELL(てる)】の三人は、

「あ、君、明登の彼女さん?」と未菜さんが

「じゃ、ここは任せるから、これで飲み物でも買ってきてやって」と日名さんが

「いやぁ、明登もいい彼女を持ったよね~青春してるね~」と椿さんが

それぞれこんなことを言ってお金を渡し、その場を後にしたらしい

(彼女じゃねぇっての!絶対スタジオ言ったら質問攻めだ......)


僕は起き上がり、少しくらくらしながら周囲を見渡す

どうやら日は完全に落ちて万灯と太鼓の演奏が始まっている

僕は視線を下げ、みんなにお礼を言った

山岸は僕が大丈夫そうとわかった時に帰ったらしい、門限だそうだ

そして、今一度霧宮さんの方を向く。

踊っている時は夢中過ぎて気にしていなかったが、彼女は黒を基調に青のスイレンが象ってある浴衣を着ていた。髪型も、いつものシンプルなヘアピンではなく、花の簪を刺している

(制服姿も良かったけど、、浴衣姿の破壊力がすごい)


「じゃ、僕と雄介(ゆうすけ)は塾があるから、ここでお暇するよ、行くよ雄介」


「ん?塾....あ、そうだな、今日は美術の塾だった、忘れてた!」

(”ゆう”よ、嘘つくの絶望的に下手だな)


「あとは良しなに」


そう言って二人は帰ってしまった

僕はここから霧宮さんとどう話を繋げるか、殆ど働いていない脳みそで考えてみる

(やばい、何も出てこない。でもとりあえず服を着替えよう)


「霧宮さん、ちょっと待ってて、着替えてくるね」

そう言って僕は近くにある出演者用の更衣室に行って着替えを済ませる


「あれ、霧宮さんどこに行ったのかな」


3分ほど探し回り、やっと見つけた、しかし様子がおかしい、誰かと言い合っているようだ

......嫌な予感がする、


「霧宮じゃん、なに?浴衣?彼氏でも待ってんの?アッハハ、お前に彼氏なんてできるわけないか

わりいわりい、まぁでも顔と体はいいからな、今日俺について来いよ」


嫌な予感は的中してしまった、僕はあの男を知っている【南雲(なぐも) 京田(きょうた)

中学校の同級生で、野球部だ.......幽霊部員で一か月に一回来るかどうか

そして何より、あいつは暴力的だ、僕も何度も殴られてきた、

南雲はストリートスタイルの黒いTシャツで帽子の鍔を横にし、ネックレスを付けている


「失礼ですが、私はあなたの事を知りません。待ってる人がいるので」

そう言って霧宮さんは立ち去ろうとする

「まぁまぁ、いいじゃん、彼氏じゃないんだろ?お前は完璧すぎて近寄りがたいんだとよ

噂になってるぜ?だったら俺でいいじゃん完璧王子様」


霧宮さんは、何も答えない。

今すぐにでも助けに行きたい、でも、怖い

体が言うことを聞かない、恐怖が足枷となって、疲労が重しとなって、僕をその場にとどめる


「私は、もう完璧なんかじゃない、完璧にならなくてもいいって言ってくれた人がいたの!

もう私を、そんな名前で呼ばないで」


言ってくれた人、僕の事か。だったら責任とってやらないとな、霧宮さんも覚悟を決めたんだ

だったら僕もそれに応えよう


「あぁ?そうかよ、じゃぁいいじゃねぇか完璧じゃないなら俺についてき....」


僕は走って霧宮さんの手首をつかむとそのまま必死に全力で走った、

人込みをかき分けながら、逃げるように、遠くへ、遠くへ

段々と疲労で遅くなる、でも手をしっかり握ったまま


「かっこいいね!都田くん!」


霧宮さんは僕を追い越して僕の手を引く

こっちに振り向くと、その顔は万灯と看板のネオンライトに照らされ

満月のように、綺麗で、儚くて、繊細で、眩しかった

(あぁ、そうだ、体力勝負はそっちの十八番だったな)


僕は霧宮さんに手を引かれ、休憩場所として提供されている大通り沿いのカフェの中に入った

急に止まって、すこしくらくらする、うまく呼吸ができない。

(あれ、うまく呼吸できない)

まずい、過呼吸だ、肺に酸素を取り込めない、苦しい

「都田くん、少し話そ?好きな食べ物は?」


(なんで急にそんなこと聞くんだ?)

僕は苦し紛れに答える

「.....トマト」


「好きな教科は?」


「..数学」


「好きな異性のタイプは?」


「......スポーツしてる人」


「落ち着いた?」


「.うん、」

そこまでいって気が付いた、過呼吸が収まっている、でもなんで


「前に本で読んだことがあるの、過呼吸の人にはゆっくり会話を促せば症状が軽くなるって」


それは初めて知った、でも確かに収まったから信憑性はあるのだろう


「二階に行かない?」

そう言って霧宮さんは僕の手を引く、その手は少し、震えていた


二階にはバルコニーがあり、そこから万灯が見える。

その光景はまるで大都会のビル群のように燦燦と大通りの300Mすべてを万灯が埋めている


「都田くん、ありがと、ヒーローみたいだったね」


「ヒーローなんて、霧宮さんの方がよっぽどかっこよかったよ」


「でも、最初に助けてくれたのは都田くんじゃん、誉め言葉は素直に受け取って」


「...わかった、受け取っておくよ」


霧宮さんは優しい笑顔でうなずくと、視線を万灯へ戻す

そのエメラルドグリーンの目に万灯の(ともしび)が反射し、煌びやかに輝きを放つ

沈黙が流れる、霧宮さんは景色に見入っている

今は、この沈黙が心地いい


そして、夜空に火の華が咲き始めた

緑、赤、黄、紫、青、様々な色が無彩色の夜空に彩を加える

遅れて腹に響くような重低音と火薬の匂い


「綺麗」

そう呟く霧宮さんは花火を初めてみた小学生みたいに目を輝かせている

そしてバルコニーに体重を預け上半身を乗り出す、それが落ちそうで怖くて、少し霧宮さんに近寄る

こんなに楽しそうな霧宮さんは初めてだ

(小学生みたいなところもあるんだな)


ひと際大きな花火が夜の闇を書き換える

霧宮さんはそれに驚いたのか、支えていた手が滑り落ちる


「危ない!」

僕は咄嗟に、片手を霧宮さんのおなかに回し支え、そのまま抱き寄せる

そして、僕は自身が何をしたのか理解した瞬間手を離す


「あ、ごめん」


霧宮さんは振り返り


「いや、こちらこそ.....その、ごめん」

そう言って霧宮さんは赤面し、視線を外す

霧宮さんは、こうやってドギマギもするんだ、今日はいっぱい知らない霧宮さんを見れる


アナウンスが流れる

「以上で第57回夏祭りを閉会いたします、来年もまた、このように楽しい時間を共有できますことを願っております」

(来年.....そうだ、来年もある、来年もきっとここで花火を見よう)

横目で見た霧宮さんの目は、どこか悲し気な目をしていた


今日は僕に、僕たちにとって特別な日になった。

そして、また新しい眩しさを知った

君は、僕には眩しすぎる

でも、今日は少し君の顔が見れた気がした

ご一読感謝です!!!!

読者の皆様、花火は好きですか?僕は高校二年生の夏に初めて友達だけで夜の浜辺で打ち上げ花火や手持ち花火をやっていてとても楽しかった記憶があります

花火と言うのは不思議なもので、一瞬しか輝けないはずなのに、その輝きは何にも負けないですよね

あるいは、一瞬しか輝けないからこそ、特別感が生まれて何よりも綺麗なのでしょう

やはり夏はいいですね、もちろん苦手な方もいると思います、でも僕は夏が好きです。

全部がきらきらしていて、五感、特に聴覚と視覚が洗練されていく感じがして。

さて、都田君の夏休みもいよいよクライマックスですよ~

ではでは、また次回【◆純粋天使な君】にてお会い~し~ましょ~う!!!

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