◆縁の下な君
これは僕と彼女のたった一年間だけの恋の物語
二学期が始まった、二学期と言えば様々な行事で溢れている期間だ
さっそく、9月初めの体育祭に向け競技の参加者を決めている
「では、どの競技に参加したいか、黒板に名前を書いてください」
司会の霧宮さんの合図でみんな一斉に黒板に名前を記入していく
(玉入れ、大縄跳び、騎馬戦にタイヤ取り、そして選抜リレーか。なるべく楽そうなものは.......)
「おう!明登!!競技どれにでるか決めたか?」
後ろから僕に肩を組んで”ゆう”が聞いてきた
「ん~、特に決まってないけど?”ゆう”は?」
「俺はタイヤ取りに行くわ!!明登、お前も来い!」
「おいおい、僕はそんなにフィジカル強くないぞ?」
「明登ならいけるさ!!じゃ書いてくる!」
「はぁ?って早いなおい」
クラスメイトをかき分け”ゆう”は瞬時に僕と自身の名前を書いて帰って来る
「でも、選抜リレーはいいの?」
「結局全員リレーがあるんだから、リレーは飽きた!」
(なんだよその理由、後でクラスメイトに怒られるやつだな)
”ゆう”はこの学校ではかなり足が速い方で、去年の選抜リレーなんかはアンカーで走っていた
それなのに飽きたからリレーには出ないと言うのは、かなり気分屋なのが伺える
「都田くん、谷崎さん、何に出るの?」
司会を終えた霧宮さんが話しかけてくる
「僕と”ゆう”はタイヤ取りに出ることになったよ」
「え、そうなの?谷崎さんは心配ないけど、都田くんケガしないでね?」
「が、頑張ります、死なないように」
「谷崎さんに誘われたんでしょ?だったら谷崎さん、しっかり責任を持って都田くんを守ってください」
「任せとけって!護衛はお手の物よ!」
少し時間が経ち、全員が書き終わった
細かな調整を経て競技参加者が決まった、因みに”こうやん”は騎馬戦に出るらしい
競技まで残り二日、部活等でケガをしないように部停期間になった
リレーに出る人はバトン渡しの練習を、騎馬戦組はバランスや息を合わせる練習
それぞれの練習に取り組む、僕も”ゆう”とタイヤ取りの練習、と言っても作戦会議程度だが行う
そして帰宅しようとしたが、水筒を忘れたことに気が付いた
(時刻 18;30)
この時間帯はもう下校時間だ、廊下には誰もいない
教室を覗くと、そこには頭を悩ませている霧宮さんがいた
「ん~、ここはこう?いやでも、これじゃここが」
「霧宮さん?なにしてるの?」
霧宮さんは聞こえていないのか返事がない
僕は霧宮さんの前の机に座る
そこで霧宮さんはやっと気が付いたのか、驚いた声を上あげた
「と、都田くん?びっくりした」
「すごく集中してたね、何してたの?」
「リレーの走順を考えてたの、選抜と全員どっちも」
霧宮さんは選抜リレーに立候補していたはずだ、おそらく頼まれたのだろう
霧宮さんの手元には、ノートが開いていた
中身はクラスメイトの50Mの記録と何回も書き直したのであろう走順が書き記されている
「すごい、こんな細かく」
「みんなに頼まれたから、ちゃんとやらないとね
都田くんはどう?タイヤ取り、大丈夫?」
「う~ん、やっぱり少し怖いけど、頑張ってみるよ」
「そっか、じゃあ応援しておくね」
霧宮さんは僕の手を握った
その手は、ほのかに暖かく汗ばんでいた
「で、都田くん忘れ物?教室に来たってことは」
「そうだった、水筒を忘れたんだ」
「じゃあ、気を付けて帰ってね」
「.........うん」
お別れを告げた霧宮さんの目が酷く震えているように感じた
まるで、帰らないでと訴えかけているように
もう少し霧宮さんと一緒にいたい
隣にいないと霧宮さんがいなくなってしましそうだったから
「.いや、やっぱりもう少しここにいるよ」
「そう?じゃあ、話し相手になってくれる?」
霧宮さんは嬉しそうに微笑んだ、まるで欲しかったプレゼントをもらった時みたいに
僕は霧宮さんの隣の席をくっつけ、横に座る
そのあとは本当に何の変哲もない会話が繰り広げられた
外からは学生の帰宅する声が聞こえる。空が濃く茜色に染まってゆく。
「あの恋愛小説の続編がでたんだって」
「それは初耳だ、また見てみようかな」
「今度はネタバレしないようにするね.....」
ペンが走る。心地の良い音が響く。秒針が進む音が聞こえる
「霧宮さんって体育祭好き?」
「ん~、好き....かな....昔の事を想い出せて」
「昔に何かあったの?」
「いろいろとね?あったんだ~」
風が吹く。カーテンが靡く。君の髪が揺れる。花のいい香りが漂う。
「都田くん、走るのって好き?」
「ん~、小学生の時は好きだったけど、今はつらいって感情が強いかな」
「そっか,,,,そうだよね....でも、都田くんの走ってる姿かっこいいよ」
「そう?それは嬉しいな」
烏の鳴き声が響く。空は綺麗な茜色が段々と暗くなる。僕と君の、話し声だけが聞こえる。
「遊んだ日楽しかったね、また行かない?”ゆう”と”こうやん”も誘って」
「もちろん、喜んで........あ、でも谷崎さんを迷子にさせないようにしないと」
「あはは、そんなこともあったね
確か帰り際、隣町行のバスに乗ったんだっけ?」
「それで都田くんに電話が来て泣きながら助けを求めてたね」
一緒に笑う。ずっと、ずっと。この時間がずっと続くと信じて。でも時計の針は進んでゆく
「夏祭り,,,,,楽しかったね,,,,また行きたかったなぁ、都田くんと」
「何言ってるの?また行けばいいじゃん」
「.....そうだね、約束,,,,,だよ?」
「うん、約束だ」
僕は小指を向ける、霧宮さんも向けてくれた
指が組みひものように絡まる、少し恥ずかしい
(中学生にもなって指切りか、でも,,,悪いもんじゃないな)
君は笑った、無邪気な子供みたいに
どこか見覚えのある笑顔、どこか聞き覚えのある【約束】と言う単語
記憶の底に封じ込めた、あの子の笑顔
あの子も君も、今じゃ僕にとって
直視できぬほど、眩しすぎる
「できた」
そう言って霧宮さんはペンを置く
「それじゃ、僕は帰るね.........また明日!」
「うん、また明日」
ご一読感謝です!!!!
中学校でタイヤ取りがあったのですが、外国の子と対面して引きずられたのはいい思い出です、、
皆様も体育祭になにか思い出がありますか???
まぁ、僕は行事に関しては当日よりも準備の方が楽しかった民なので、本番はのらりくらりとやっておりました!
さてさて、ではまた次回!
【◆ずるい君】にて再開を果たしましょう!!




