第3章 春季合宿 (前編)
「ううっ…」
僕は家に帰るなり、ベッドの上に突っ伏した。
武内隊長の特訓は厳しく、基礎体力作りから始まった。他にもいろいろやらされたが、あまりの疲労のため、頭が働かない。
ただ、あの2人、結構ついていっていたな。意外と体力あったんだな。
「しかし、明日もこの調子か。ぞっとするよ…」
神崎部長が言ったことを思い出してみた。
「ある願いを叶える木か…。そして、そのことを記した書物…」
一体何の願いを叶えてくれるのだろう?
「今考えても仕方ないな。とにかく寝よう」
そうして、すぐに眠りに落ちた。
それからというもの、同じような特訓が4日間続けられ、その次の日、部室で会議が始まった。
「明日からは春季合宿が始まります。君達の身体能力はかなり上昇したようですね。そこで、合宿中は特訓を中止しましょう。体調を崩されては元も子もないのでね」
それはそうだろ。5日間、想像を絶するほどの特訓をさせられたんだ。合宿中まであんな特訓を持ち込まれたら、合宿期間中に倒れて保健室行きだ。
「あれっ、中止ですか?それは期待はずれですね」
「私も期待してたのに…」
そこの2人、余計なことはいわなくていいっ!
「その代わり、会議を合宿3日目に開きます」
神崎部長がそう言った。
「でも、どこで開くつもりですか」
合宿中は当然先生方による見回りがあるだろう。部屋を抜け出したらすぐにばれてしまう。
「合宿が開かれる場所の部屋をひとつ、卒業生に頼んでひとつ借りてもらったのですよ。毎年同じ所、同じ期間に行われるため、先借りは簡単です。
あとは借りる部屋ですが、書記の吉村君のパソコンデータに合宿場所の内部図があるため、便利な部屋を選び、予約しました」
な、何という周到さだ。ただ、会議を開くためにそんな計画を立てるなんて。
「場所はここで、夜1時からの予定です」
なるほど、
「では、今日はゆっくり休んで、明日からの合宿に備えてください、では、解散」
「明日から、春季合宿か。定期試験のことも考えて臨まないと…」
この6日間、放課後は武内隊長の特訓ばかりしていたので勉強は全く手付かずである。
最低限宿題だけはやっておいたが、明らかに勉強不足である。あの2人は天才だから、そんな心配はないから良いなあ…
「とにかく合宿中は遅れている分を取り戻すぞ!」
僕は気合を入れなおしてベッドに潜り込んだ。
次の日の朝、学園には合宿場所に向かうバスがとまっていた。
「おー、坂上。今日から合宿だぜ。なんかこう、気分が盛り上がるよなあ?」
この緊張感のない声は佐伯だな。こいつは本当に授業中寝てばかりだ。最初は起こしてあげたが、それでもすぐに寝てしまうので
途中から起こす気がなくなった。
「あのなあ、合宿はお祭りじゃないんだ。勉強のためなんだ」
「カタいこというなよ、坂上~」
まったく、どこまで頭が緩いんだ、こいつは。
「やあ、坂上君。今日からの合宿、一緒に頑張ろう」
やっぱり清水君は言う事が違うなあ。佐伯には見習ってほしいところだ。
「ああ、頑張ろう」
それから2時間ほどして、バスが合宿場所に到着した。その間僕はずっと寝ていた。なにせ、入所式を行って荷物整理した後、すぐに授業があるからな。
寝ておかないと体が持たない。
「じゃあ、降りた後、入所式を行うからな。各自速やかに行動するように」
担任の岡本先生が指示した。
入所式が終わり、荷物整理の後、早速授業が始まった。
バスの中で寝ていたおかげか、集中してこの日の授業を終えることができた。
「ああ、疲れた…」
ずっと集中していたからな。肩が凝ってしまったようだ。
「だらしがないねえ」
後ろから佐伯が突っ込んできた。
「お前はほとんど寝ていただろう!」
どこに行ってもマイペースなやつだ。本当にAクラスにいるのか怪しくなってきた。
「睡眠学習といってくれ。ただただ寝ているわけじゃない」
「寝ているだけだろうっ!」
もういい、こんなやつどうだっていい!とにかく疲れたから早く寝よう…
部屋に戻ると、相部屋の都山から話しかけられた。
「坂上、会議のこと忘れていないだろうな?」
「ああ、忘れてないよ。明後日だろ?」
「忘れてなければそれでいい。じゃあ、俺はもう寝るからな」
そう言うと、都山は先に寝てしまった。あいつは結構部活に熱心だな。そんなに謎を解明したいのか?
「自分も疲れたし、寝ようか」
そうして、合宿1日目が終わった。
合宿2日目は、さすがに途中で何回か眠ってしまった。清水君に起こしてもらったから、授業に取り残されずに済んだ。
「お前も人のこと言えないんじゃないか?」
「うるさい、お前と一緒にするな!」
この日も前日と同じやり取りを佐伯とした。全く、他の話題がないのか?
「やあ、坂上君。お疲れ様。明日も集中していこう」
「おう。途中で居眠りしたそのときは…」
「ははは、気にしないで。大丈夫、ちゃんと起こしてあげるよ」
この人は真面目だなあ。本当尊敬しちゃうよ。
「じゃあ、明日に備えて部屋に戻って休もう」
そう言うと、清水君は先に歩き出した。
「坂上、ちょっと良いか?」
部屋に戻るなり、都山から声をかけられた。
「何だ?俺は早く寝たいんだけど」
「時間は取らせない。とにかく場所を移すぞ」
そう言うと、都山は強引に人目のつかない所へと僕を連れて行った。
「お前は、どんな願いを叶えてくれると思う?」
そう都山が切り出した。
「そんなことで俺を連れ出したのかよ。正直言って見当もつかない」
「そうか、そうだよな…」
都山はそう言って考え込んだ。
「俺も考えてみたが、思いつかなかった。しかし、ただ1つ言えることがある」
「それは?」
「即物的なものではないということだ。つまり、一般人が望むような、金銭といったものじゃない、特殊な願いだ」
「なぜ断定できる?」
「よく考えてみろ。もし即物的な願いだったら、既に叶っている可能性がある。当然、叶ったなら他の人たちもこぞって願うに違いない。
しかし、そのような出来事は学園に一切なかったはずだ。ということは、条件が厳しく、特殊な願いとなる」
なるほど、さすが理論の都山。言われて納得だ。
「ここまでは分かるが、それが何なのかは分からない。暇があれば徹底的に調べてみようと思う」
自分はそのような暇がないと思うので、1人で頑張ってください。
「話はそれだけだ。部屋に戻って寝るぞ。明日が会議の日だからな」
都山は1人で戻っていった。自分も早いところ休もう…
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