第七話「月間順位戦」
四月の月末で週末の昼下がりだった。サークル室に全員が集まった。
「それでは、本日は『月間順位戦』を開催する。そのまえに、新入部員の紹介だ」
小沢に促されて、新入りが挨拶をした。身長は高くはないが、華奢な体つきで甘いマスクを持っていた。身振り手振りがいちいち爽やかなので、一輝以外のサークル員一同が「モテ勝負」での負けを認めた。
「こんにちは~! オイラは海東進一郎ってんだ! よろしくね~!」
「カ~ワイイ!」忍が食いついた。恭次郎、龍之介、小沢、剛志の顔が引きつった。
「オイラは、一輝兄兄の従兄弟なんだ。よろしくね~!」
「よろしくー!」野太い声の塊が返って来た。
「それでは、現在の順位を確認しておく」
「せんぱ~い、すいません。その前に、心の準備としてコーヒー飲んでおきます!」剛志が、三本目のコーヒー瓶にとどめを刺した。
「(くぉの! がきー!)毎月、一瓶がやっとなのに!」龍之介が怒髪天を突いた。
「挑発に乗るな、龍之介。麻雀で勝てばいいだけだ。アイツは、小沢やお前をターゲットにしているらしい。奴の雀力を確かめる、いい機会だ。挑発が上手い奴は、対外試合の時に有効な戦力になる。ウチにはいない存在だ」冷静な一輝に制された。
「御意!」龍之介は、まるで一輝の家臣だった。
(二〇二六年・三月)サークル内順位
1位 雀帝 天翔一輝
2位 武帝 堂満吉太郎
3位 将軍 堂満恭次郎
4位 軍師 小澤流麗
5位 軍曹 五丈原忍
6位 珈琲大臣 碧沢龍之介
「へ~、これが先輩方の順位ナンすか? 珈琲大臣か・・・。俺なら死ぬね・・・」剛志は、龍之介を冷やかした。
「(くぉの! がっきゃー!)」龍之介は怒りで震えが止まらなかった。
「お前は、勝負の前から、龍之介にとことん絡んでいるだ。そんなに奴が好きだか?」吉太郎が尋ねてみた。
「俺の言葉に、いちいち怒るからね。本気で俺を相手にしている証拠だ。相性がいいのかも知れない」さらっと言った。
「(ほぅ・・・、抜け目がないだ)」吉太郎は感心した。
「・・・」このように言われては、龍之介もまんざらではなかった。剛志は、上位三名を目標にしていなかった。最初から、新入りと下位三名を潰すつもりでいた。勝ち方次第で、忍を彼女にする予定だった。股間が膨らんでいることに気付いたのは一輝だけだった。
「(コイツ、マジか・・・)」一輝はドン引きした。
「それでは、新入部員もいるので簡単にルールを説明する。いずれも点数計算は不要だ。兎に角手役を作って、和了すればいい」小沢が、ルールを説明した。
【『撃破戦(下位順位決め)』ルール】
・新入生や、ランキングが下のものから卓に入れる。
【自摸和了の場合】
・自摸和了した親・・・「勲章」三枚得る。北家が交代。
・自摸和了した子・・・「勲章」二枚得る。
・自摸和了された親・・・「傷」二枚与えられ、交代。
・自摸和了された子・・・「傷」一枚与えられる。
【放銃和了の場合】
・放銃した親・・・「傷」二枚与えられ、交代。
・放銃した子・・・「傷」一枚与えられ、交代。
・和了した親・・・「勲章」三枚得る。
・和了した子・・・「勲章」二枚得る。
・点数の高低に関わらず、「勲章」と「傷」のみ蓄積してゆく。
・「勲章」四枚得た時点で、勝ち抜け。【脱落戦】への参加が認められる。
・上位四名が決まるまで対局し、「勲章」から「傷」を差し引いた数で、順位が決まる。
・さらに参加人数が多い場合、最後の四人が残るまで交代を繰り返す。
萬子: 一二三四伍六七八九
筒子: ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨
索子: 123456789
字牌: 東南西北白發中
「最初の対局参加者は、剛志、進一郎、龍之介、忍の四名とする。この順に牌を引きなさい。場決めをする」小沢が仕切った。
「引き勝負、負けたら負けよ。東!」剛志は、起家を引いた。
「南」進一郎は、南家を引いた。
「北」龍之介は北を引いた。
「私は西ね」忍は、引かずに席に着いた。
「あんた、やたらと威勢がいいけど、四人打ち初めてなんだろ?」進一郎が剛志に聞いた。
「あぁ、初めてだぜ。だけど時期部長の座は、俺のものだ!」剛志は、言い切った。
「(そんなものは、くれてやるよ・・・)」小沢以外が、そう思った
「(何だと、あのがきゃー!)」小沢は、内心穏やかではなかった。
東一局 親:剛志 ドラ:③
「?」剛志の配牌を見て、一同が驚いた。
③2東伍3②9東91四④東六
「ふっ、伝説の始まりさ」
と言って、手牌をパタパタ倒し始めた。
「何、やってんだよ!」龍之介が怒鳴った。
「何って? 和了しちまったんだよ」龍之介を睨み返した。
四伍六12399②③④東東東
「! 天和!」一同は驚きを隠さなかった。
「! コイツ! 強い?」忍の剛志を見る目が変わり、以後一切、剛志を軽んじる様子がなくなった。
剛志【勲章】3 進一郎【傷】1 忍【傷】1 龍之介【傷】1 交代




