第十一話「撃破戦①傷つけあう男たち」
【『撃破戦』ゾンビ回避令和ルール】
①自摸和了(子の場合)親に負傷記録である「傷」を一つ与えることが出来るが、撃破記録の「勲章」を得ることは出来ない。
②自摸和了(親の場合)子に「傷」を一つずつ与えることが出来るが、撃破記録の「勲章」を得ることは出来ない。
③直撃和了(子→子の場合)相手に「傷」を一つ与え、自分は「勲章」を一つ得る。
④直撃和了(子→親の場合)相手に「傷」を二つ与え、自分は「勲章」を一つ得る。
⑤直撃和了(親→子の場合)相手に「傷」を二つ与え、自分は「勲章」を一つ得る。
⑥親の特権(直撃和了した相手を支配できる)
・支配した相手が自摸和了した場合、自分に課される「傷」は無効になる。
・支配した相手が自分を直撃和了した場合、自分に「傷」が与えられるが、相手が「勲章」を得ることは出来ない。満貫以上の直撃和了の場合、もしくは跳満以上の自摸和了をした場合、この支配から脱することが出来、次局以降適用される。
⑦同じ相手からの和了は有効。
⑧合計三つの「勲章」を得たら勝ち抜け(三人撃破が最も素晴らしいとされる)。
⑨「傷」が累計五つ溜まると自摸切りマシンと化し、ゾンビメンツになる。向聴数を下げようが、下家に好牌を送ろうが好き勝手に打って良いが、節度は守らなければいけない。
⑩流局時に聴牌していない者は、自動的に「傷」が与えられ、親が聴牌していない場合、「傷」が与えられ親は流れる。
⑪ 勝ち抜けが決まった場合、「勲章」、「傷」の数、東一局時の座席「東・南・西・北」の順を参考に、順位が決まる。
「それでは、場決めを行う。勲章の数により、吉太郎先輩が出親。勲章が四つで並んでいるが、傷の数により一輝が南家、恭次郎が西家、進一郎が北家とする」小沢が宣言した。
※ 特別ルールとして、「向聴数を下げてはいけない」という、真剣勝負のようなルールを課す団体もある。
萬子: 一二三四伍六七八九
筒子: ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨
索子: 123456789
字牌: 東南西北白發中
「んだば、行くど!」吉太郎がサイコロを振った。場の空気が張り詰めた。
「(ん? メンツの顔つきが変わったな)」剛志は、今頃になってみんなが真剣に戦っていることに気付いた。忍は静かに気配を消して家に帰った。何人かはそれに気付いていたが、敢えて口には出さなかった。
東一局 親:吉太郎 ドラ:⑨
吉太郎:二四伍六七345⑦⑧⑨白白 自摸:三
「仮聴、自摸ったど!」吉太郎が連荘した(②が適用される)。
吉太郎【0-0】 一輝【0-1】 恭次郎【0-1】 進一郎【0-1】
「白以外は苦しい形だど。自摸ったのは、ツイてるだ」吉太郎は機嫌が良かった。
「(鳴いて速攻じゃん)」進一郎は、思った。
「相手に振り込ませるのって、難しくね?」剛志は、小沢に聞いた。
「そういう、戦いなんだよ。直撃を狙う訓練だ。実戦では、自摸を狙う局面も、直撃を狙う局面もある。何でも出来て一人前だ」小沢が答えた。
「ふ~ん・・・」剛志は、理解していなかった。
「(コイツは、まだまだど素人だな。しばらく俺たちの餌だ)」小沢がニヤけた。負けず嫌いの下手糞は大歓迎だった。
東一局一本場 親:吉太郎 ドラ:西
一輝 :一二三三四伍6788⑤⑥⑦ ⑤→8
「(恭次郎が臭い! 多面聴なら負ける!)」恭次郎の三面待ちを読んでの8切りだった。
恭二郎:六七八234567⑤⑥⑦⑧ 8→⑧
「(このルールで、三色を作る意味はない。ヒントを減らすための端切りだ!)」断么九のみの出和了待ちにした。
「ロン! 平和のみ!」一輝が恭次郎を討ち取った。
「!(やられた! 一巡早く処理された!)」恭次郎は、自摸順に泣いた(③が適用される)。
吉太郎【0-0】 一輝【1-1】 恭次郎【0-2】 進一郎【0-1】
「一輝先輩の選択は、8でも⑤でも良かったはず。何で、⑤を切ったんすかね?」剛志が小沢に聞いた。
「自模るよりも、出和了が効果的だからね。恭次郎が切ると読んだんだろう」小沢が答えた。
「何で、それが分かるんすか?」剛志には、一向に理解できなかった。小沢は、剛志を部屋の端っこに連れて行った。そして小声で説明した。
「幾つか推測は出来る。一つは、恭次郎の牌の並べ方だ。萬子・索子・筒子・字牌の順で丁寧に並べるから、矢鱈と索子が多いと読んだんだろう。だから、筒子が溢れると読んだ一輝の勝ちだ。と俺は思う」
「たかが麻雀で、そこまでやるんすか?」
「性に合わないなら、やらなくてもいいよ。麻雀の打ち方や、麻雀に対する取り組み方は自由だ。自分なりに勝てばよい」
「ふ~ん・・・」剛志は、麻雀の奥深さに一歩踏み込んだ気がした。
「・・・」小沢は剛志を憎たらしく思っていたが、強くなろうとしている姿を見て、つい親切に説明してしまった。
「(そらそうだよなぁ・・・。自摸れば三人叩きのめせるが、直撃すれば確実に一人を倒せるんだから・・・)」まだ、撃破戦は始まったばかりだった。




