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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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091 2026年5月08日(金)_03 由来

「……マジで?」


一葉が、思わず声を上げる。


「浮雲さん、

スタバ知らないんですか?」


浮雲が、少し首を傾げる。


「……すたば?」


観測班の空気が、

一瞬、止まる。


白髪をオールバックにした大沼が、

ヨレヨレの白衣のポケットに手を入れて、

懐かしそうに言う。


「スターバックスですね。

一九九九年頃、私が首都圏へ出張した時に使いました。

当時は、かなり人気でしたよ。

日本に展開して、まだ間もない頃でしたから」


早川が、くすっと笑う。


「浮雲、気にするな。

一葉だってな、

陽葵がいないと、

メニューの八割以上は頼めないんだから」


「お父さん!」


一葉が、

ずれかけた眼鏡を直しながら、抗議する。


「もう、大丈夫ですぅ!

最近は、覚えましたぁ!」


児島が、

即、切る。


「はいはい。

親子喧嘩は、よそでやって」


一葉は、

一拍置いて、

にやっと浮雲を見る。


「……で、結局」


間を、取る。


「浮雲さん。

“フラペチーノ”って、

呪文だと思ってるでしょ?」


浮雲は、

一瞬だけ、

本気で考える顔になる。


それから――

小さく、頷いた。


「……正直、はい」


観測班のブースから、

同時に笑いが噴き出した。


武田が、机にうずくまり、

今田が、メモも忘れ、

槌谷が、珍しく声を上げて笑う。


一葉も、

つられて笑う。


浮雲は、

少し照れながらも、

その輪に、入った。


――――――――――――――


その喧騒を、

少し離れた場所で見ていた石原が、

早川の隣に立つ。


「……輪が、できてるな」


早川は、

黙って頷く。


「異物じゃない」


石原の声は、

静かだった。


「一九九九年から、

戦い続けて、

“鬼”に成り果てたあいつ――

浮雲平輔がさ」


もう一度、

笑いの輪を見る。


「……ちゃんと、

人として、受け入れられてる」


石原が、

ぽつりと続ける。


「お前の娘、

本当にすごいな。

……誰とでも、

仲良くなる」


早川は、

少し照れたように、

それでも、はっきり言った。


「……自慢の娘です」


石原が、

ふっと笑う。


「違いない」


一拍。


「“一枚の葉っぱでも、

ちゃんと風を受けて、

空を向くから”――

だったか。

名前の由来」


早川が、

懐かしそうに頷く。


「はい。

浮雲が、つけてくれました」


少し、声を落とす。


「あれ、

続きがあって」


石原が、続きを促す。


「――

“どんな環境の中でも、

倒れないという強さ”

なんだそうだ、

詩的だろ?」


早川が、

苦笑する。


「浮雲、

ああ見えて、

文学好きですからね」


石原が、

思い出したように言う。


「ああ。

確か、

樋口一葉

から名前をもらった、と」


指で、空をなぞる。


「“繊細ながらも、

強い意志を持ち、

自立心の強い性格”――

そんな由来を、

昔、俺に、

やたら熱心に語ってた」


早川は、

小さく笑う。


「……あいつらしいです。

口下手で、

空気読めなくて、

二百万年も我慢して、

人類を守る、

おせっかい野郎」


石原も、

深く頷いた。


「……違いないな」


――――――――――――――


その向こうで。


武田が笑いすぎて地がでる。


「で、結局、

スタバ行くなら、

誰が注文すんの?」


「陽葵、呼びます?」


今田が真顔で突っ込む

「いや、

フラペチーノは封印で」


また、

笑いが起きる。


浮雲は、

少し戸惑いながら、

それでも、

その輪の中に、立っていた。


“見守る者”から、

“一緒に笑う者”へ。


一葉の名前の由来どおり、

一枚の葉が、

確かに、

風を受けて、

空を向いていた。


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