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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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089 2026年5月08日(金)_01 モナカはおやつに含まれます

朝。


「おはようございます!」


一葉は眼鏡を直しながら、

指令室へ続く階段を、

カン、カン、カンとリズミカルに駆け上がる。


毎日のトレーニングと、

この階段のおかげで、

脚に“筋肉の気配”が出てきた気がする。


――ビル六階相当。

なかなかの距離だ。


改装工事が終われば、

指令室で使ったクレーンの動力を転用して、

ゆとりのあるエレベーターが設置される予定になっている。


誰とは言わないが、

五名ほどから“非常に強いクレーム”が入り、

それに同調した二名が参戦。


――即決だった。


素直に、

「歳のせいでつらい」

って言えば、可愛げがあるのに。


一葉は、内心そう思う。


……とはいえ、

自分も正直、つらい。


最終的に、

浮雲以外、全員賛成。


――あの人だけ、

なぜか、階段派だった。


---


指令室。


児島が、

昨日の“あの騒ぎ”など無かったかのような、

クールな眼差しでこちらを見る。


「おはよう、片桐さん」


ふと横を見ると、

若林も同じく、何事もなかった顔で続ける。


「おはよう」


――ただし。


珍しく、

間食していない。


席の後ろ。


“封印”と書かれた紙と一緒に、

お菓子の山が、積まれている。


観測班が、声をそろえる。


「「「おはようございます、片桐先輩」」」


一葉は、

そっと近づいて、

お菓子の山を指さす。


小声で。


「……あれ、

いつまでもつと思う?」


武田が、即答。


「一……いえ、半日」


今田も頷く。


「同じく、半日」


槌谷は、

一拍も置かず。


「二時間」


一葉は、

にやっと笑う。


「私は――一時間。

一番ハズレた人、

お昼、おごりね」


全員、

無言で、サムズアップ。


---


児島が、

こちらを見て、少しだけ声を落とす。


「昨日、いろいろあって……

正式な連絡を伝え忘れてたんだけど」


一拍。


「来週、一週間。

出張、お願いできるかしら?」


一葉、

思わず聞き返す。


「……出張?なんかゴールデンウィーク前に聴いた奴ですか?」


頭の中で、

地図が、開く。


「いいですけど、じゃあ、

山形は、誰が守るんですか?

何かあったら――」


すっと、前に出る影。


「そこは、私たちが」


ザ・ナイン。

エリザベスと、タボ。


その後ろ。


浮雲が、

いつものように、

ちょっとだけ、気まずそうに立っている。


……あと、もう一人。


――カマキリみたいな人。

細くて、長くて、

姿勢が、異様にいい。


……誰?


エリザベスが、

ブロンドの髪を揺らしながら、

しまむらの春の新作の袖を、くいっと整える。


「あなたがいない一週間くらい、

この街――

ちゃんと“持たせるわ”」


タボが、

軽く拳を鳴らす。


白い歯が、

褐色の肌に、よく映える。


ストリートカジュアルが、

妙に、似合っている。


「門番は、

得意なんだ」


一拍。


「……なんせ、

二百万年、やってるからね」


一葉、

瞬き。


「……年季、

桁、おかしくないですか?」


タボは、

肩をすくめて笑う。


「細かいことは、

気にしない主義でさ」


---


カマキリみたいな人が、

一歩、前に出る。


「彼らのお目付け兼、

ガイドの――トガシです、“十樫”と書きます」


声は、落ち着いている。


年は、

一葉と同じくらい。


でも、

雰囲気が、どこか――

山倉さんに、似ている。

姿勢が崩れない。


“戦う人”というより、

“達人”の目だ。


十樫は、

軽く会釈する。


「片桐さん。

あなたがいない間、

街はちゃんと、守っておきます」


一葉は、

一瞬だけ、考えて。


それから、

小さく、笑った。


「……お願いします」


---


児島が、

腕を組んで、ゆっくり頷く。


「じゃあ――決まりね」


若林が、

後ろから、ぽつり。


「お土産、

モナカでいいから」


一葉、

即、振り返る。


「指定する!?」


若林、

涼しい顔で返す。


「当然よ。

正しい職権の使い方。」


児島が、

咳払いひとつ。


「では――

私と観測班、浮雲。

それからメンテ班は鎌田さんがまとめる、警備班から1班が出動で」


指を折りながら、淡々と続ける。


「このあたりが出張組。

場所は――太平洋。日本海溝の底。

やることは、

東北六機のうち、五機のサルベージ。」


一葉、

固まる。


「……え?」


一拍。


「ていうか、

東北六機って、こないだ渡部さんも言っていたけども、みんな箱なの?箱大仏なの?」


---


その瞬間。


いつも、

影が薄いのに、

なぜか“こういうときだけ”食いつく男がいた。


奥の事務机から、

ぬっと顔を出す。


齋藤だ。


神経質そうな眼鏡が、

きらりと光る。


そして――

満面の笑み。


「残念ですが箱ではございません」


一葉、

いやな予感。


齋藤は、

立ち上がり、前に出る。


「東北六機とは――

一九九九年、

東北地方を守った

70メートル級の都道府県防衛ロボ群の総称です」


指が、

空中で、次々と動く。


「他にもですね、

九州には“九州九大天王”、

四国には“四国四神”など、

地域防衛ロボの編成が存在します」


一葉の目が、

すでに、半分、死んでいる。


齋藤は、

止まらない。


「で、東北六機は――」


一気に、来た。


「仙台。

コマンダータイプ――

“ギガマサムネ”」


指、一本。


「秋田。

パワータイプ――

“オルグガイスト”」


指、二本。


「岩手。

防御特化タイプ――

“ブランロンダシュ”」


指、三本。


「福島。

重装突撃タイプ――

“クリムゾン・タウルス”」


指、四本。


「青森。

高機動タイプ――

“ヤクトドラグーン”」


指、五本。


一拍、置いて。


「そして――」


ゆっくり、

一葉を見る。


「山形。

唯一の120メートル級。

重装換装タイプ――

“グレート山形ロボ”」


---


一葉、

両手を上げる。


「なーがーい!

覚えるの、むりー!」


槌谷が、

何故か優しい視線をこちらに向ける。

お前の娘になった覚えはない!


武田は、

もう、笑っている。


今田が、

ぼそっと。


「……齋藤さん、

やっぱ、マニアだったか」


齋藤、

誇らしげ。


「“やっぱ”は余計ですが、

好きでなければ……此処にはいません」


一葉は、

今さらのように、

首をかしげる。


「……ていうか、

今、なんて言いました?」


間。


「グレート?」


齋藤が、

深く、頷く。


「はい。

グレートです」

キーボードを叩く。


指令室中央の3Dモニター、

山形ロボの構造図が表示される。


中心部、3つの炉が、

光る。


「我々が、普段見ている山形ロボは、

この――コアユニットに過ぎません」


周囲に、

巨大な外装フレームが、

半透明で、浮かび上がる。


「本来は、

この“グレートフレーム”の頭部に接続して、

完全形態になります」


一葉、

目を見開く。


「……じゃあ、

今の出力三〇パーセント制限って」


齋藤、

にっこり。


「本来のスペックではありません。」


沈黙。


一葉は、

自分の手を見る。


「……え。

あれで、三割?」


槌谷が、

淡々と。


「安全基準的には、

だいぶ、

“優しい仕様”です」


一葉、

思わず、天井を見る。


「……勉強になりました……」


若林が、

横から、突く。


「あんたさ。

こういう説明、

いつも聞きながら――」


にっこり笑って一言。


「寝てるでしょ」


一葉、

目をそらす。


「……ばれてたか」



齋藤だけが、

ちょっと、傷ついた顔をした。


「……いつもは、

鎌田さんに説明の仕事奪われるから……次こそは!」


児島が、

パン、と手を叩く。


「はい、雑談終了」


指令官モードに戻る。


「出張準備。

安心して、海の底は、

地上より静かよ」


タボが、

にやりと笑う。


「……それ、

嫌な予感しかしないな」


エリザベスが、

袖を気にしながら言う。


「大丈夫。

モナカが、溶ける前には、

帰ってくるわ」


一葉、

即、突っ込む。


「エリザベスさん、

それはアイスモナカ。

モナカは溶けない」



――太平洋の底、

静かに、

5機の機神は、

その時を待っていた。


---


ちなみに昼食は

一葉の独り勝ち。


4人仲良く市役所付近のベトナム料理屋さんに行きました、マル

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