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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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088 2026年5月07日(木)_07 時の流れに身を任せ

県庁から帰還後。


新システム。


携帯用タブレットをドック脇の端子に固定すると、

壁一面のウルトラワイド8Kモニターと自動でリンクする。

UIが“事務モード”に切り替わり、戦域表示は左へ、

右側に報告書テンプレートとログ抽出ウィンドウが並ぶ。


一葉は眼鏡の位置を直して、キーボードに指を置いた。


……で、

一行、打って、

止まる。


画面の方が、勝手に“先”へ進んでいる。


戦闘時刻。

結界半径。

因果兵装の使用ログ。

被害範囲、風向、地表温度変化。


全部、もう、並んでいる。


「……なに、これ」


思わず声が漏れた。


「すご……チャッピー並じゃん。

ていうか、もしかして、それよりすごくない?」


白衣姿の大沼が、

マグカップを片手に、ちょっとだけ誇らしそうに笑う。


「一般的なLLMほど、何でもはできませんがね」


画面を指で示す。


「ウチ専用に特化してます。

様式を選んで、戦闘ログを指定すると――」


タップ。


「資料の下書きは、九割方、こっちで作ります」


一葉の名前が、署名欄に仮入力される。


「片桐さんの苦手な“お役所文章”も、

ちゃんと、役所向けの言い回しに直しますよ」


一葉は、画面と、大沼の顔を、交互に見る。


「……まじで?」


「まじです」


一葉は、椅子にもたれた。


「AI……すご……」


周囲を見ると、

確かに、空気が違う。


誰も、キーボードを叩いていないのに、

資料が、出来上がっていく。


会話がある。

笑い声がある。

でも、仕事は、進んでいる。


――圧倒的に、効率がいい。


部屋の隅。


浮雲が、

立体表示されたホログラムを、

おっかなびっくり、指でつついていた。


「……これ、アニメの世界だな」


指が、空をすり抜ける。


若林が、腰に手を当てる。


「子どもじゃないんだから、落ち着きなさい」


完全に、

世話焼きのお母さんだった。


一葉は、ふと思う。


最近、

この二人、親子にしか見えない。


でも、戸籍上では、

浮雲の方が年上。


しかも、

児島さんより一つ上。


――五十五歳。


五十五歳児。


一葉は、

こっそり、心の中で頷いた。


―――


ふと、観測班のブースを見る。


今田が、

児島の顔を、じっと見ている。


次に、

若林を見る。


最後に、

一葉を見る。


……なに。


ちなみに、

今田は顔は整っている。


でも、

私的には、タイプじゃない。

まだ、推せない。


しばらくすると、

観測班のブースが、

小声で、ざわつき始める。


「……え、これ……」

「うそでしょ……」

「まじか……」


一葉は、若林に聞く。


「なんなんですか、あれ」


若林は、

一葉の口に、ポッキーを、すっと突っ込みながら言う。


「さあ?」


ポッキーを押し込んだまま、続ける。


「でも、三人とも仲いいし、いいんじゃない?

最近、結構、三人でランチとかしてるし」


一葉、

固まる。


「……は?」


ポッキーを引き抜く。


「混ぜろし」


その瞬間。


槌谷が、

噴き出した。


――ドS槌谷、爆笑。


珍しい。


ということは。


一葉が、

ひょいっと、観測ブースに近づく。


その横で、

武田が、

呼吸困難になっていた。


肩を震わせて、

息ができてない。


「……やっぱりね」


一葉が聞く。


「どしたの?

みんな」


今田が、

眼鏡を、くいっと上げる。


「……実は、これ」


新システムになって

過去データベースアーカイブに直結された。


画面に表示されたのは――


1999年・初期配備時の記録映像。


一葉の目が、

ぱっと輝く。


「うわ、石原さん、若い!」

「三浦さん、やっぱ、やんちゃ!」

「鎌田さんと、お父さん、変わんない!」

「青山さんと大沼さん、こわっ!」

「山倉さん……格ゲーのキャラじゃん!」


ふと、

モニターの外を見る。


――目が合う。


当の“おじいちゃん達”。


「おーい、片桐。

煎餅、食うか?」


「あ、あとでもらいます!」


画面に戻る。


浮雲は、

今と、ほぼ同じ。


齋藤さんは、

ヒョロヒョロ。


今野先生は、

めちゃくちゃ若い。


……で。


一葉の指が、止まる。


「ん?」


画面の端。


頭カラフルなギャル三人組。

へそ出し。

濃いメイク。

ポーズ、強め。


「……誰?」


目を凝らす。


赤髪。

その顔。


「……え」


一葉、

思わず叫ぶ。


「お母さん!?」


周囲が、

一瞬、静まる。


「……じゃあ、この茶髪ヤンキー……」


画面を指す。


「……児島さん?」


足、

めちゃくちゃ長い。


「……で、この、腹筋バキバキで、

えぐいほどウェスト細い黒髪の美人……」


一葉の喉が鳴る。


「……まさか……」


モニターの外を見る。


今の若林。


ふくよかで、

ポッキーを、

にこにこしながら、完食している。


もう一度、

画面を見る。


ギャル若林。

浮雲の腕に、がっつり、絡んでいる。


一葉は、

立体映像を触っている浮雲を見る。


「あー……」


納得。


「そりゃ、

第一声、ああなるわ」


児島が、

笑顔で、近づいてくる。


「どうしたの?」


――ヤバい。


一葉と今田、

同時に、

ウィンドウを閉じようとする。


「え、これ、どうやって消すの!」

「閉じ方、分かんない!」


槌谷と武田は、

もう、戦力外。


笑いすぎて、

何もできない。


ひょいっと、

児島が、モニターを覗く。


――沈黙。


次の瞬間。

しばしの沈黙。


クール系美魔女の口から、

聞いたことのない悲鳴。


「いゃぁぁぁぁーーー!!

ゆるして!

見ないで!」


若林も、

体を揺らして、参戦。


「ぎゃぁぁぁぁーーー!!

消して!

今すぐ消して!」


そこに、

おじいちゃん達。


「おー、懐かしいなぁ」


「こいつら、昔はギャルだったからなぁ」


しみじみ。


児島と若林は、

床にしゃがみ込んで、

頭を抱える。


何事かと、

浮雲が近づいてくる。


一葉は、

彼を見て、

ぽつりと言った。


「……浮雲さん」


一拍。


「あなた、

間違ってなかったです」


浮雲は、

よく分からないまま、

困ったように、

頷いた。

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