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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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080 2026年5月07日(木)_01 一葉、議場に立つ

県庁まで、三浦が送ってくれる。


児島と並んで、久しぶりにスーツを着た一葉は、

三浦の肩越しに、運転席まわりを覗き込んだ。


……なんか、ピラーに、

メーターが、アホほど付いてる。


円。針。数字。バー。

まるで戦闘機の計器盤だ。


「ん?これか?メーターか?」


三浦が、ハンドルを握ったまま、キラキラした目で言う。


「いいだろ。渡部さんに死ぬほどお願いしたらな、

“車が混じってた方が予算が通りやすい”とか言い始めてさ」


ウインカーの音が、やけに軽い。


「二台目のGRヤリス、“MORIZO RR”仕様資料管理室カスタム。

エンジンは1.8Lに載せ替え。

スーパーチャージャーとターボ、両方だ」


一葉は、瞬きした。


「あと、要所の部品はな――

山形ロボの廃材を、鎌田捕まえて“お願い”して加工させて交換してる」


“お願い”の部分で、声がちょっとだけ悪い顔になる。


「ボディは、装甲加工で出たヒヒイロカネの粉末を塗布。

足回りのサスも山形ロボの廃材流用。

怪物パワー。

意地でも曲がる足回り。

意地でも止まる制動性」


三浦は、誇らしげに、こう締めた。


「最強だぜ?」


……うちのイケオジたちは、

どうしてみんな、こう、濃いのか。


一葉は、天井を仰いだ。


---


県庁のとある会議室。

非公開の、合同ヒアリング。


部屋に入った瞬間、

“肩書きの重さ”が、空気として沈んでいるのが分かる。


県議。市議。

国からの出向官僚。

防災担当。警察。

自衛隊OB。

文化庁の役人。

知事は今回は不在である。


机の中央に、黒いファイルが置かれている。


被害者データ。


一葉が、あの夜、見てしまった――

“観測終了”リストの、正式版。


紙になっただけで、

重さが、増している。


数名はリモート参加。

その中に、明らかに若い顔が一人、混じっている。


スーツは高そうで、

背景は、無駄に整ったオフィス。


会議は、つつがなく進む。


運用評価。

リスク管理。

報告体制。

責任の所在。


一葉は、便宜上、“証人席”に座らされている。

正面は、視線の壁。

斜め後方の、児島が主に答える。


一葉は何も言わない。

でも、そこにいるだけで、周りから受けるプレッシャーが凄い。


突然、名前が呼ばれる。

眼鏡の位置を無意識に整える。


リモート画面の、若い人物。


「操縦者。片桐一葉さん」


背筋が、ふっと、伸びる。


質問が、来る。


「あなたは、ロボットの操縦者らしいですが」

一拍。

「……あれから、結構な数の被害者、出てますよね?」


画面越しの目が、冷たい。


「あなた、それは、どう説明するんですか?」


一葉の喉が、鳴る。


言葉が、出てこない。


“説明”って、何を?


空気が、変わる。


視線が集まる。

責める側と、責められる側。

線が、引かれる。


「それは……」


その瞬間。


ブーブー、ブーブー。


マナーモードにしていた、

支給された資料管理室のスマホが、

静まり返った会議室に、振動音を落とす。


リモートの若い男が、顔をしかめる。


「おい、会議中だぞ。不謹慎だ!」


ほぼ同時に。


ドン、ドン。


乱暴なノック。

返事を待たず、扉が開く。


メモを持った職員が、息を切らして入ってくる。


「失礼します!

笹屋峠で、異常気象、観測!」


ざわめき。


小規模。

だが、明確な――“怪異反応”。


誰かが、低く言う。


「……今ここで、出動判断を」


視線が、集まる。


県議も。

官僚も。

制服も。

モニターの向こうの若い男も。


さっきまで、“責任を問う側”だった人間たちが、

一瞬で、

“判断を押し付ける側”に変わる。


一葉の脳裏に、フラッシュバック。


佐藤雅。

庄司護。

その他、数名。


――観測終了の文字。


児島さんが、何か言いかける。


でも。


一葉が、先に、口を開いた。


声は、少し、震えている。

でも、止まらない。


「私は、出ます」


間が、落ちる。


「でも……」


一葉は、続ける。


「今日、万が一誰かが傷つく人がでてしまったら」

「ここにいる全員、

私と一緒に、その人の名前、覚えておいてください」


空気が、凍る。


リモートの若い男が、鼻で笑う。


「ばかばかしい。

そういう“雑務”は、君らの仕事じゃないのかね?」


一葉は、モニターの、その目を、まっすぐ見る。


「我々は議院だぞ、被害者の名前なんぞ、いちいち覚えきれない」


一葉は、静かに言った。


「でも」

「私たちの仕事は、その“雑務”です」


沈黙。


児島さんは、もう、端末を閉じていた。

三浦には、すでに、状況が入っている。


県庁の外。


あの、怪物みたいな車が、

“運ぶための兵器”が、

エンジンを、かけて待っている。


――次は、

笹屋峠。


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