072 2026年5月04日(月) 守護神胎動
石原と大沼、青山は
児島と若林に聞く。
「嬢ちゃん、見ちまったって?」
指令室は完全に近代化され、
タブレットと立体映像、
最新機器に、ようやく指が追いつき始めている。
「綾は大丈夫って言ってたけど」
パイロットのコンディションは最優先事項だ。
ましてや、特殊中の特殊な状況。
知らなくていいストレスは、
耐性ができてから、段階的に開示する――
それが、四月一日以降、
彼女が万が一適合した場合の暗黙のルールだった。
「つぶれないと、いいわね」
二十六年前より、圧倒的な密度で怪異の襲来が続いている。
しかも三回目は、
“邪神”クラスが四柱。
しかも三柱は気まぐれで見逃してくれただけ。
完全に、こちらが“ターゲット”になっている。
最終決戦仕様のグレート山形ロボでも、
一気に四柱と対峙したら対応できたかどうか。
なし崩しとはいえ、
片桐一葉に負荷をかけすぎたのは、事実だ。
それでも、
彼女は、応えた。
――聡すぎるほどに。
彼女の不在中も、
浮雲の出動は、鶴岡市沖を含めて二回。
半月で、合計五回。
異常だ。
1999年の激闘でさえ三ヶ月で十回なのだ。
全員が、
指令室の外、ドック中央に立つ山形ロボを見る。
完全に、元の形。
無骨な箱。
とってつけたような手足。
ペンチのような拳。
だが――
大沼が、タブレットを操作する。
空中に、機体内部の立体投影が浮かぶ。
三炉の出力配分グラフ。
神経束制御の位相同期ログ。
因果干渉フィールドの負荷曲線。
立体映像の中で、
霊子炉《如来》と、次元炉《菩薩》と、光子炉《観音》の波形が、
緩やかに同期する。
まるで、
今までは強引に並列化していた三つの炉は
“対話”しているみたいに、
静かに同期している。
若林が、タブレットで仕様を見て小さく息を吐く。
「+45〜65%強化?
……完全に別物ね」
児島が、頷く。
「ええ」
「これはもう、今までの山形ロボじゃないわね」
ドックの天井を見上げながら、言う。
「冗談抜きで、“守護神”って言葉が近いわね」
無骨な箱は、何も言わない。
ただ、静かに、そこに立っている。




