表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/200

052 2026年4月27日(月)_05 激闘、白川ダム

飯豊町、白川ダム。

水没林の上に、影が立っている。


巨体。

短く、ずんぐりとした人型のシルエット。

全高、二五メートル。

“無理やり大きくされた”感じが、関節に滲んでいる。

膝も肘も、本来あるべき位置から、ほんの数度ずれている。

それだけで、見ている側の身体が不安になる。


わかることは、ひとつだけ。


あれとは、絶対に意思疎通できない。


足元では、派手な格好の観光客らしい集団が、地元警察ともめている。

声が荒い。

視線が、ロボじゃなく、“何か別の方向”を向いている。


今田の声が入る。


「……多分、敵対存在の狂信者です」


一葉は、鼻で笑う。


「信仰は自由だけどさ。

あれ、ご利益、なさそうだよね」


その瞬間、ふと、思い出す。


整備の鎌田さんと、お父さんの言葉。


「月山おろしは、二発しか撃てない。

チャージに、時間がかかるんだ」


だから、外すな。

使うなら、決めろ。


――ゴン。


衝撃が来る。


一葉は、反射でガードを上げた。

低遅延がウリのブラウン管モニターだからこその反応。

山形ロボの右腕装甲に、巨大な“爪”が叩きつけられる。


え?!


装甲が、抉られる。

金属が悲鳴を上げる。


武田の声が、早口でまくし立てるように響く。


「山形ロボの板金装甲はっ、

自己修復性高分子材料――セルフヒーリングポリマーとっ、

形状記憶合金――シェイプメモリーアロイをっ、

ふ、複合化した、多層メタ、メタマテリアル構造ですっ!」


「構成材は、

高張力鋼っ、

耐熱セラミッっ、

およびっ、

精神感応金属、ヒヒヒロカネがっ、含まれますっ!」


「と、特に外装表層にはっ、

マイクロカプセル封入型の修復層がっ、は、配置されておりっ、

亀裂が発生するとっ、

こ、硬化性樹脂と、しょ、触媒がっ、自動放出されますっ!」


「中間層にはっ、

か、ぎゃきょ、結合ネットワークを持つっ、

高分子マトリクスがありっ、

お、応力集中を検知するとっ、

ぶ、分子配列がっ、再構成されてっ、

破断エネルギーをっ、ね、熱とっ、形状回復にっ、変換しますっ!」


「――ただの怪異程度では、傷つけるのは不可能なはずです!」


一葉は叫び返す。


「よくそれ、スラスラ出てくるね!!

こっちは、さっぱりだよ!!」


操縦桿を叩き込む。


山形ロボのアームが、唸りを上げて振り抜かれる。


ドン。


手応え。

だが、柔らかい。

筋肉質な“何か”を殴った感触。


ダメージは、浅い。


同時に、相手の爪が、追撃で振り下ろされる。


今度は、ガードしていた左腕。

装甲が、ざっくりと裂ける。


今田の声が、震える。


「相手の神性が、こちらの結界を上回っています!

……現実の法則が、ねじ曲げられてます!」


一葉は、歯を食いしばる。


「――そうですか!」


深く、踏み込む。


山形ロボの巨体が、地面を割る。

ボディブロー。

湖面の水が、衝撃で跳ねる。


間髪入れず――


「月山おろし!」


右前腕装甲、展開。


内部で、チャージ音。

低く、重い、山が鳴るような振動。


だが。


巨人が、動いた。


両腕で、山形ロボの装甲展開途中の右腕を――掴む。


ギャリリリリリ。


嫌な音。

金属、駆動モーターが、高負荷で擦れるような音。


失敗?


右腕は、待機状態のまま、唸り続ける。

エネルギーが、逃げ場を失って震えている。


槌谷の声が、鋭く飛ぶ。


「距離を取ってください!

ロボのセンサーが、相手の神性の増大を確認しています!」


一葉は、視界の端で、結界の縁が“歪む”のを見る。

空気が、厚くなる。

音が、遅れて届く。


「……ヤバいね」


操縦桿を引き、強制後退。


湖面が、ロボの足元で割れる。

水没林の影が、揺れ、沈み、また浮かぶ。


巨人は、ゆっくりと、首を傾ける。


観察している。

学んでいる。


次の一撃は――

もっと、正確に来る。


なら!


一葉は、あえて前に出た。

怖い。帰りたい。


一番厚い装甲。

箱型ボディ。


山形ロボの“胴”で、巨人の追撃を受け止める。


ドン。


凄まじい衝撃。

巨人の抜き手が、ボディに深く突き刺さる。


「――っ!!」


観測班から、悲鳴が上がる。


装甲が軋む。

内部フレームが、重低音で唸る。

衝撃が、操縦席の床から背骨へ突き上げてくる。

コクピット左側のブラウン管モニターのに亀裂、

映像がチラつきブラックアウト。

煙が出る。

ヘルメットのバイザーに何かが当たり亀裂。

異様にでかい肩パットが弾け飛ぶ。

嫌だ!嫌だ!帰る!死にたくない!死?嫌だ!!


だが――


一葉は、止まらない。さらに一歩。

気密が失われ眼鏡が若干曇る。

お母さん!陽葵!ごめん!ごめん!!


それは策というより、野蛮な賭けだった。


巨人が踏み込む、その“同時”。

左腕の月山おろしを、アイドル状態に移行。


両腕にチャージを続ける

エネルギーを、逃がさず、溜め続ける。

恐怖で、震える手に力をこめる。

今自分が逃げたら、街が、人が、誰かが傷つく!


ボディに深く刺さったまま、

巨人の動きが、鈍る。


通信から誰かの悲鳴。

「右腕、月山おろしを解除してください!破裂します!!」


巨人の腕が抜けない。

引けない。


山形ロボの球体センサー。

感情のないはずの“両眼”が、ゆっくりと巨人を見上げる。


その瞬間。


単眼の巨人が――恐怖する。


遅い。


一葉が、泣きながら叫ぶ。


「――いま!」


両腕に、臨界まで溜め込まれたエネルギーを、解放。


両腕装甲、展開。


右腕は、ほとんど“剥がれる”勢いで外装が開く。

内部機構が露出する。


ゴォォォン――


タービンが唸る。

山の奥で鳴る、地鳴りのような音。


次の瞬間。


冷気が、爆発した。


白い霧が、衝撃波のように噴き出す。

湖面が、一瞬で凍りつく。

空気が、音を失う。


ロボの目が、無慈悲に光る。


「――ダブルで、くらえ!!」


冷たく輝く、ペンチ型の両手。


空間と、巨人の“肉”を、同時に裂く。

内部へ、圧倒的な冷気が、叩き込まれる。


軌跡は、Vの字。


必殺。

月山おろし。両手での発動。


巨人の身体が、まず“凍る”。

次に――世界との“つながり”が、断たれる。


音もなく、

霧のように、散った。


結界の内側に、静けさが戻る。


モニターの端。


やたらと派手な格好の信者達が、膝から崩れ落ちる。

そのままパトカーに“お持ち帰り”されていくのが見える。


一葉は、操縦桿から手を離さず、息を吐いた。


「……作業、完了」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF / ロボット / 地方都市 / 行政・公務員 / 都市伝説
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ