004 人物記録|奈良 透
人物記録奈良 透
所属:内閣官房 連絡担当官
(表記上:対外調整室・省庁連携窓口)
山形県総務部 防衛課に、
定期とも不定期ともつかない頻度で現れる男。
表向きの役割は、
各省庁間の情報連絡および
地方機関との調整業務。
年齢不詳。
外見上は30代前半と推定される。
口調は柔らかく、距離感が近い。
初対面でも、
「前にも会った気がする」と錯覚させる話し方をする。
訪問のたびに、
県内外の著名な菓子店の茶菓子を携える。
課内では自然と「奈良さん」と呼ばれ、
応接記録にはほとんど残らない。
雑談が異様に巧み。
相手の趣味、家族構成、
最近の体調や悩みまで、
会話の流れの中で自然に引き出す。
本人は、
「覚えているだけですよ」
と笑って済ませる。
【異常記録】
最終決戦前日。
課長・石原の元に、
内密扱いの人物調査結果が届く。
奈良の提出していた経歴書に貼付された写真と、
実際の奈良の顔が、
完全には一致しない。
骨格比率、瞳孔位置、
表情筋の可動域。
いずれも、
生体認証上の“許容誤差”を
わずかに逸脱している。
照合結果は、
「同一人物と断定不可」と記録された。
記録上の分類
――外なる存在。
邪神ナイアルラトホテップ。
人類社会に介入し、
観察し、
必要に応じて事象の分岐点に“揺らぎ”を与えるもの。
破壊を目的とはしない。
選択が生まれる瞬間、
人が決断する場面を、
間近で見届けることを嗜好すると記されている。
【発覚時の挙動(石原・私的証言)】
正体を看破された瞬間、
奈良は驚かなかった。
ただ、
心底愉快そうに、
声を上げて笑った。
「なるほど。
こちらが名乗る前に、
気づかれるとは思いませんでした。」
その直後、
影の中に滲むように輪郭が崩れ、
その場から姿を消失。
侵入記録、
退室記録、
いずれも残らなかった。
【整備班・後日メモ】
奈良は、
指令部との距離が異常に近かった。
入室許可証の確認記録が存在しない。
警備ログにも、
制止した履歴が一切残っていない。
誰もが、
「通して問題のない人物だ」と
無意識に判断していた。
後になって、
その理由を説明できた者はいない。




