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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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199 2026年5月31日(日)_01 学園騎士団

山形駅ビル内3階。スターバックス。


休日の午後のざわめきの中、

片桐陽葵、星奈、心愛の三人はテーブルを囲んでいた。


カップにこんもりと盛られたクリーム。

だが、その空気はどこか張りつめている。


「……瑠羽を襲ったやつ、まだ捕まってないみたい」


心愛が、少しだけ声を落として言う。


「最近、うちの生徒を狙った通り魔。多分そいつがやったんだと思う」


一瞬、沈黙。


星奈がフラペチーノの生クリームを頬張りながら告げる。


「大丈夫」


低く言い切る。


「見つけたら、私がぶっ飛ばす。私、強いし」


その目は、笑っていない。


陽葵は何も言わない。


ただ一人、静かに鞄へ視線を落とす。


「……カル」


小さく呼びかける。


「瑠羽を襲ってるのって……」


鞄の中から、声が返る。


「うん。十中八九、“怪物”だね」


軽い調子。

だが、その内容は重い。


「今の僕じゃ、君たち三人を同時に守るのは難しい。どうしても死角ができる」


陽葵の指が、わずかに強く鞄を握る。


「……山倉さんやヤマセンがいないと、危険だね」


その言葉に、二人は何も返さない。


――そのはずだった。


「そういえばさ」


心愛が、ふと話題を変える。


「陽葵、最近なんで鞄に猫入れてるの?」


空気が、止まる。


星奈も頷く。


「うん。私も気づいてた。よく先生にバレないよね?」


陽葵の思考が、一瞬で固まる。


「……え?」


鞄を見下ろす。


「え?え?どういうこと……カル?」


「いやいやいや」


鞄の中の声が、珍しく焦る。


「僕の認識阻害の魔術は、そう簡単に解呪されるはずが――」


「そっかそっか」


心愛はあっけらかんと頷く。


「なんかモヤッとしてたの、それか。超能力とかそういうやつだよね?」


「うん」


星奈も自然に続ける。


「前におじいちゃんが言ってた。“認識阻害の結界”ってやつ?」


陽葵の喉が、わずかに鳴る。


空気が変わる。


さっきまでの“日常”が、ひび割れる。


二人は、いつも通りの顔をしている。


だが。


“見えている”。


陽葵は、ゆっくりと息を吸った。


そして。


「……二人とも」


言葉を選ぶ間もなく、口から出る。


「何者なの?」


ざわめく店内。


コーヒーの香り。


その中で、


このテーブルだけが、


別の層に沈み始める。


槙島心愛は、改めて陽葵をまっすぐ見つめた。


「あのね……陽葵と瑠羽は巻き込みたくなかったから、ずっと黙ってたんだけど」


一拍。


「私、超能力者なんだ」


空気が、わずかに揺れる。


「……え?」


陽葵が息を呑む。


「じゃあ、星奈も?」


石原星奈は静かに首を横に振った。


「私は何もできないよ。ただ――」


少しだけ視線を落とし、続ける。


「おじいちゃんから、色々教わってるだけ」


そして、陽葵の鞄へ視線を向ける。


「……猫さん。認識阻害の結界、まだ張ってる?」


「え?あ、う、うん……」


「ありがと」


その一言と同時に、星奈は鞄から伸縮式の警棒を取り出す。


カチリ、と伸びる。


次の瞬間。


ブン――


警棒の先から、淡い光が刃のように伸びた。


空気が、わずかに震える。


「これ、おじいちゃんに“筋がいい”って言われててさ。ちょっとだけ仕込まれてる」


軽い口調。


だが、その刃は明らかに“日常の外”にあるものだった。


心愛が、自然に続ける。


「次、陽葵の番」


「……え?」


「陽葵も、こっち側なんでしょ?」


陽葵は言葉に詰まる。


「いや、私は……」


そのとき。


鞄の中から、静かな声が響いた。


「――僕が説明するよ」


一瞬、空気が引き締まる。

するりと子猫が鞄から抜け出した。


「初めまして。陽葵の友人、心愛さん、星奈さん」


声は落ち着いている。


どこか、格式を帯びている。


「僕は聖王国キッズオルナート、聖十字騎士団二番隊隊長。“水の騎士”カル。カル・ヴィー・サージュ」


わずかな間。


「事情があって、この世界に滞在している。今は猫の姿だけど、陽葵の力を借りて、一時的に人の姿に戻ることもできる」


説明は簡潔。


だが、重い。


星奈は一切驚かない。


「初めまして、カルさん」


淡々と受け入れる。


「……さすがプロ、って感じかな」


少しだけ口元を緩める。


「嘘は言ってない。でも――大事なところは言ってないよね?」


沈黙。


カルは、否定しない。


心愛が空気を切り替える。


「でも、とりあえず敵じゃない」


断言。


「それで十分でしょ」


その目は、すでに別の方向を見ている。


「私たち、瑠羽の敵を見つける」


静かな決意。


「陽葵はどうする?」


陽葵は一瞬、迷う。


だが。


すぐに顔を上げた。


「……多分だけど、瑠羽は巻き込まれただけ」


息を整える。


「狙いは、きっと私」


短く、言い切る。


「だから――私も行く」


三人の視線が交わる。


言葉は、もういらない。


フラペチーノを飲み干す。


ストローが、軽く音を立てる。


立ち上がる三人。


そのまま、エレベーターへ向かう。


日常の顔のまま。


だが、その足取りは確かだった。


親友を傷つけた“何か”を探すために。


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