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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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136 2026年5月18日(月)_02 桜刀、舞う

首都東京上空。


ビル群を眼下に、黒い影が裂く。

カラスのようで、蜂のようで、竜のような異形。

腹部の器官が脈打つたび、空気が歪む。


それを追うのは、紅と白の流線型。

機体各部には認識阻害魔術の術式が、

青白く輝く線となって機体を彩る。


TOKYO CORE UNIT

MODEL: JGR-0013-core02 ver.2020

――通称、クサナギ。


 


コックピット内部は全天周囲モニター。

足元の東京の街並みが、湾曲しながら視界を流れていく。

白い対Gスーツを着た男が、低く呟く。


「対象、超高速飛行突入。追います」


管制の声は冷静だった。


「了解。速度は最大マッハ4。それ以上は機体と世界が持たない」


機首が虚空を撫でる。

――ぐにゃり。

空間が、避ける。


真空の“縁”が、クサナギの周囲に輪を描く。

パイロットは、ペダルを、ふっと踏む。

両手のグリップを、軽く握る。


「……突入」


――ふわっ。


次の瞬間。

因果滑走。


断続的に加速していたカラスを、逆に追い越す。

紅白の機体が、前へ出る。

視界が切り替わる。

クサナギ、変形。


18メートル級人型。

細身だが、華奢ではない。

無駄を削ぎ落とした筋肉の上に、流線型の装甲を重ねたような輪郭。


アスリートがそのまま甲冑を纏ったかのような、機能美と緊張感。


胸部から腹部にかけては引き締まり、腰は鋭く絞られている。

脚部は長く、踏み込みと跳躍を前提に設計された比率。


“戦うための身体”が、そのまま拡大されたかのようだった。

 

鋭いツインアイは、透明度の高いバイザーの奥に収まっている。

直接の光を放たない。

だが、確かにそこに“視線”を感じさせる。

 

彫刻のような頭部。

装飾はない。

だが、面構えは明確だ。


静かな意思を宿す青年の横顔。

激情ではなく、制御された闘志。


都市を背負う覚悟が、無言のままそこにあった。

 

両肩と背中。

三基の次元炉が、並列で低く唸る。

出力は抑えられている。


それでも、空気がわずかに震える。

赤でも青でもない、白に近い淡い輝き。

出力30%キープ。


安定域。


カラスが怯えながらも、鋭い爪を振り上げる。

黒い刃が、都市の空を裂く。


重力制御。


機体が、ふわりと沈む。

爪は空を裂き、衝撃波だけがビルの窓を震わせる。


ガラスが一斉に鳴る。

だが、認識阻害の術式が発動し、誰もそれを気にも留めない。



パイロットの呼吸は、乱れない。


「宇宙行きの切符は、今日は売り切れだ」


スラスター最小噴射。

横滑り。


「あいにく目撃でもされたら邪神どもの神格が上がるからな」


次元炉が一瞬だけ出力を上げる。

空間が、ほんの少し軋む。


「これ以上は行かせない。ここで落とす」


カラスが高周波の悲鳴を上げる。

腹部が光る。

再加速の兆候。

宇宙へ逃げるつもりだ。


「逃がさない」


都市上空。

落とせば、被害は出る。

だから。


重力ベクトルを、上向きに固定。

カラスの軌道を強制的に引き上げる。


「上でやる」



クサナギが顎を掴む。

次元炉が低く唸る。


白いスーツの男は、歯を食いしばらない。

叫ばない。

ただ、淡々と操縦する。


「結界、展開」


一拍。


「半径……100メートル」


薄い光の球体が、二体を包む。

都市から切り離された、局所位相固定領域。


右肘が展開。

小型タービンが冷たく光り、唸る。

終わりを告げるような低いコーラス。

冷却ガスが、白く噴き出す。


「因果凍結兵装、使用」


鋭く揃えた手刀が、冷たい光を帯びる。


「染井吉野・散」


一閃。


黒い巨体を縦に裂く。

両断。


内部へ。

圧倒的な冷気。

存在そのものを否定する力が、叩き込まれる。


カラスの時間が、止まる。

音が、消える。

振動が、消える。

光が、消える。


巨体は霧のように崩れ、粒子となって散った。


静寂。


「これより結界を解除。帰還します」


クサナギが再び流線型へと戻る。

東京の空は、何事もなかったように青い。


これが、


TOKYO CORE UNIT ――クサナギの初陣であった。

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