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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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117 2026年5月14日(木)_02 心機一転

昨晩、晩御飯に何を食べたのか思い出せない。


刺身だったのか。

マグロだったのか。

魚だったか。

いや、覚えていない。

……いや、たぶんマグロだ。

いや刺身だ。

山盛りだった。


朝。


機械的に目が覚める。


アラームが鳴る前に、体が起きる。


想定以上に動揺。


理由はわからない。


ぼーっとしたまま筋トレ。


腕立て。

スクワット。

体幹。


数はこなしている。


だが感覚が薄い。


何を食べてるんだろう。

ショックのあまり食欲がない。


ぼーっと食事。

ぼーっとお代わり。

なめこ汁うめぇ。


味はする。


でも、記憶に残らない。

焼き鮭おかわり。


「……もうありません」


ケチ。


ブリッジ上。


浮雲さんが、今日もアンテナ基部に鎮座している。


風に揺れるしまむらの紳士服。


人間には見えない結界を見つめているらしい。

部下、することなくていっつも艦の片隅で報告書書いてる印象。


私、あんな風に、人外になるのか。


……いや待て。


生活に支障なさそうだな?


黄昏れてるだけだし。


遠くで武田さんが何か言っている。


「………午後一回のダイブでいいです」


はいはいはいはい。


OK。


わかった。


(たぶん)


―――


午後。


無茶苦茶辛い担々麺を流し込む。


辛い。めちゃくちゃ美味い。

痛い。ホアジャオ効きすぎ。

おかわり。


ショックのあまり昼食も喉を通らない。


自室。


全身タイツ――対Gスーツを着込む。


白。

機能優先。

可愛げゼロ。

パツパツ。


眼鏡を変える。


首からお守りを下げる。


深呼吸。


――――――――――――――


コクピット。


シートに身体を預ける。


映画館みたいに、


文字が視界いっぱいに浮かぶ。


<YAMAGATA CORE UNIT>

<MODEL: JGR-06-core ver.2026>


ブロックノイズが走る。


視界が、


“開く”。


静寂。


その中に――


なにかいる。


雑。


雑な山形ロボみたいなマスコットが、ぷかぷか浮いている。


角が曲がってる。


頭でっかち。


手足ちっちゃい。


>こんにちは ひとは


「ちょ!なんかいる!!」


同期率100%?


人として終わった?


あっち側??


「みなさん!陽葵!お母さん!おまけでお父さん!ごめんなさい!ありがとう!いままでありがとう!さようなら!!」


児島の声が割り込む。


「片桐さん、落ち着いて。

片桐さん、落ち着いて聞いて。お願い、聞いて。きーいーて?ねぇ?

てか聞けやおらぁ!!!!」


ビクッ!!!!!!!!!!


武田の吹き出す音。


今田も笑いを堪えている。


槌谷は呼吸が裏返る音を上げる。


児島が仕切り直す。


「あのね。それね。武田さんと今田君と槌谷さん、三人があなたを“あっち側”に行かせないために組んだプログラムなの。わかる?午前中、ミーティングしたわよね?」


え?


「あ、はい」


やべぇ。午前中の説明。


聞いてない。


「同期率が96%を超えたら徐々に“自己同化”が進行する可能性があるの。

それに対する楔」


マスコットが、手を振る。


>ひとは は ひとは です


武田が補足する。


「Guardian Output – Hitoha Lockの可視化インターフェースです。

あなたと機体を“別個の存在”として常時認識させる補助AIです」


槌谷。


「いきなり強制低下は危険なので、

段階的に同期率を下げます」


今田。


「違和感、記憶の抜け、感情の鈍化があったらすぐ報告してください」


あ。


記憶。


「昨日の刺身定食、覚えてません、あと食欲ありません」


観測室、沈黙。


武田が唇を強く噛み、

笑いの衝動をこらえながら言う。


「……通常運転です。

想定範囲内、全食事おかわりも記録してます」


児島。


「今日は一回だけ。

無理はさせない」


マスコットが、再び喋る。


>きょうも がんばろう ひとは


「いやなんでちょっと可愛いの?」


児島。


「可愛い方が拒否反応が少ないから」


槌谷がぼそり。


「デザインは今田です」


今田。


「ちょ!槌谷ぁ!!!!!!!」


「……誰が私の呼び捨てを許可しました?」


「……すみません」


足元には8000メートルの深海、

光の届かない闇。


マスコットの雑さ。


同期率。


95.8%。


96.0%。


わずかに下がる。


95.6%。


モニターに数値が揺れる。


「……あ、なんかちょっとズレた感覚ある」


武田。


「正常です」


児島。


「ひと……片桐さん、あなたは人間よ」


マスコットが手を振る。


>ひとは は ひと


「わかってるわ!」


深呼吸。


視界が安定する。


「では、山形ロボ。今日も着水します」


山形ロボが、ゆっくりと深海へ沈む。


水圧。


闇。


今日の対象。


“ギガマサムネ”。


巨大な刃のような両腕の鎧武者のシルエットの機体だ。


コクピット内で、マスコットが小さくつぶやく。


>ひとは たいせつ


とりあえず、深海行ってみよう!


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