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掌の水
倒れたディルムッドの前に、フィンが立った。
「いまのお前の姿を、アイルランドの女たちに見せてやりたいものだ」
フィンは、そう言った。美しさが醜さに変わったことを彼は嘲った。
ディルムッドは、かつて宴の席で、フィンの命を救ったことを語った。
そして、水を求めた。
フィンの両掌に汲んだ水は、傷ついた者を癒す力を持っていた。
「井戸など、ない」とフィンは答えた。
「嘘だ。九歩先に、世界で最も澄んだ泉がある」
フィアナの戦士たちが、フィンに水を汲むよう迫った。オスカルは、応じなければ剣を向けると告げた。フィンは、ようやく泉へ向かった。
フィンは掌に水を汲んだ。
しかし、運ぶ途中で指の間から零した。二度目も同じであった。
多くの伝えは、それを故意であったと語る。三度目に、水は運ばれた。ディルムッドは、既に息絶えていた。
アンガスは、亡骸をブルー・ナ・ボーニャに運んだ、と伝えられる。
グラーニアは、悲しみの底にあった。その後の彼女の行方は、語りによって分かれる。




