知恵の鮭
フィンは、詩を学びたいと願った。
詩人たちは、水のほとりで詩想が明かされると信じていた。そこでフィンは、ボイン川のフェクの淵に住む詩人フィネガスのもとを訪ねた。
このとき、フィンは名を明かさなかった。生まれたときの名、デムネを名乗った。少年たちを溺れさせた一件で、フィンの名は既に知れ渡っていた。目立つことを避けたのか、あるいは他に理由があったのか、伝えは多くを語らない。
フィネガスは、七年にわたり、一尾の鮭を待っていた。淵の上流には知恵の泉があり、九本の榛の木がその畔に立っていた。木の実は泉に落ち、鮭はそれを食らって育った。この鮭を最初に食らう者は、あらゆる知を得る。そしてその者は、フィンという名を持つ、という予言があった。
フィネガスは、この予言を知りながら、目の前の弟子がその名を持つ者だとは気づいていなかった。
七年目、鮭は網にかかった。フィネガスは、少年に串を渡し、焼くよう命じた。
「ただし、口にしてはならぬ」と言い添えた上で。
フィンは火のそばで肉を返すうち、皮の一箇所が膨れた。それを咄嗟に親指で押さえた。
灼けた脂が指を打ち、彼は反射的にその指を口に含んだ。
戻ったフィネガスは、少年の様子から事情を悟った。
「食べたのか」
と彼は問うた。
デムネは、火傷して指を口に含んだことを正直に話した。
フィネガスは、なお何かを確かめるように、少年の名を尋ねた。
「私は、フィンとも呼ばれています」
その言葉に、フィネガスは長く言葉を失った。七年待ち続けた予言の主が、己の弟子であったとは、思いもよらぬことであった。
彼は、残りの鮭をフィンに食べさせた。定められた者に、定められたものが落ちたのだと、老人は知っていた。
以後、フィンは判断に迷うとき、親指を口に含んだ。すると、隠された真相が、彼の内に立ち上がったという。
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