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罪を被った僕が煉獄刑の果てに見るものは  作者: 津本ジオ


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28. 自然保護区 1

二人で温泉を堪能してリラクゼーションスペースに戻ると、ハムちゃんが待っていた。

「温泉はいかがでしたか?」

備え付けの浴衣を着ているので湯上りなのが分かったようだ。

「最高だった。モール温泉まで用意してもらえるとは驚いたよ」

「ええ、おかげでお肌がスベスベよ」

「僕の記憶だけで、よく再現できたもんだ。植物性の有機物を含んだ温泉ってことくらいしか知らないんだけど」

「はい。フミン質、特にフルボ酸は、食肉の培養とも密接に関係していますので得意分野なのです!」

微生物が長い年月をかけて分解した植物がフミン質だっけか?


「ハムちゃんが来たってことは食事の用意ができた?」

「はい、パティオに用意しています」

「行こう、アタラちゃん!」

「ええ、行きましょう!」


ジンギス奉行(仕切り屋)である僕の采配でジンギスカンは盛り上がった。

ハムちゃんなんて頬袋一杯にラム肉を詰め込み、僕たちの笑いを誘った。肉食動物かよ。

お腹一杯食べたあとは一休みしてまた温泉を楽しんだ。今度は気泡風呂だ。アタラちゃんが「おもしろーい」と気泡にはしゃぐ姿が目の保養になった。

さすがにいろいろありすぎて、疲れがたまっていたので早めに寝ることにした。明日は朝から自然保護区だ。

目を閉じると、隣に寝ているアタラちゃんが「ねえ……」とすり寄ってくる。


途端に元気になった僕は、夜の運動会に突入するのであった。


「ゆうべはお楽しみでしたね」

ハムちゃんの朝のあいさつがコレだ。分かってますよ的な表情がうぜー。

アタラちゃんは無言でハムちゃんをむ(・)ん(・)ず(・)と掴み「何か言いましたか?」と微笑む。

「いいえ、何でもないです!」


そのあと、朝食を済ませて出立することを伝えると、ハムちゃんが天蓋迎賓館のロビーまで見送りに来てくれた。

「ハムちゃん、ありがとう。すごく楽しかったよ」

「ご満足いただけて何よりです! また遊びに来てくださいね!」

元気に手を振るハムちゃんに別れを告げ、エレベーターまでの十メートルほどを歩くと、徐々に重力が弱くなる。僕たちに合わせた1G環境から、エヴェラント標準の0.18Gに変化していく。

昨日は驚くことが多くて気にしなかったが、ここも高度な重力制御がされているんだな。


エレベーターが到着すると、キャビンには昨日のベルスタッフ(鳥の人だ)が待っていた。

「おはよう」

「おはようございます。今日は自然保護区にご案内しますね」

僕たちがエレベーターに乗り込むと、すぐに地下に降りていく。正確には自然保護区の地上に向かっていく。

メタリックなシャフトの中を進んでいるので、周りの風景は楽しめない。代わりにキャビンの透明壁がモニターに変わり、自然保護区の案内映像を流している。


「キャビンが180度回転いたします。ご注意ください」

お、昨日のアレか。もうすぐだな。

キャビンが前方にゆっくり傾いていく。回転が停止したときには自然保護区に到着していた。

ベルスタッフが先に降りて案内してくれる。木造の素朴なコテージみたいな建物の中だ。

「こちらにお入りください。ここで防疫を行いますが、一部の腸内細菌なども排除されるので気分が悪くなったら仰(おっしゃ)ってください」

場違いな印象の白い通路に入ると前後の扉が閉まり三分ほど待たされる。


「居住区よりも念入りなんだね」

やっと扉が開いて玄関ホールのような場所に出る。

「自然保護区に放たれた生物は原種ですからね。外部からの微生物に抵抗力がありません」

ベルスタッフが説明しながら玄関の扉を開ける。

目の前には草原。見上げれば白い雲がたなびく青空。まさに大自然!


「ここからはアタラ大佐に案内人をお願いします。それでは、自然保護区をお楽しみください」

ベルスタッフがお辞儀する。

「ベルスタッフさん、ありがとう」

「ありがとう。あとの案内は任せて」

ベルスタッフに別れを告げ、草原に踏み出す。


「ふう、二人っきりになれたね」

「ゆうべも二人っきりだったじゃない……」

「そうだけどさ。誰もいない草原で二人っきりってロマンチックじゃない?」

「ふふ、そうね」

アタラちゃんが腕を絡ませてくる。

「ところでさ、ずっと気になってたんだけど、ベルスタッフの鳥の人って男性? 女性? 声も中性的で分かんなかった」

「そんなことを考えてたんだ……」


アタラちゃんに呆(あき)れられた……。

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