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罪を被った僕が煉獄刑の果てに見るものは  作者: 津本ジオ


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25. エヴェラント居住区 2

ターミナルを出ると、そこには白い巻雲が浮かぶ青空が広がっていた。

「天蓋パネルに空を映しているんですよ。このブロックは青い空を好む人たちが集まっています」

「うーん、地球の空と見分けがつかん……」

「高度一キロメートルのところに天蓋があるけど、見ても分からないでしょ」

アタラちゃんが言う。

「本当に分からないな」


でっかいペンギンのエラリーちゃんを先頭に青空ブロックを進む。地上に目を落とすと、地球の高級住宅街に少し似ている。広い敷地に低層の建物が立ち並んだ風景だ。樹木が集中しているエリアもある。公園かな?

ちらほらと鳥っぽい種族はいるが、ファリア大尉のようなハシビロコウ種族は見当たらない。

一番多いのは、ライアス大尉のようなサイにそっくりの種族だ。エラリーちゃんによるとヒラル族というらしい。


アタラちゃんや僕みたいな、純粋な人型は少ないが特に注目を集めることもない。

「アタラちゃんって有名人だろ? ジロジロ見られないのな」

「私以上の有名人がいるから……」

「ひょっとしてエラリーちゃん?」

「エヴェラント住民八千億人の行政長官よ。みんな知ってるわよ」

「八千億人!?」

太陽系全体でも百億人くらいだぞ。


「広報もしていますから、私の姿は皆に知られていますね」

「ルタ・アバトは、癒しの種族として有名なのよ。行政局のメンバーに多いわね」

「いえ、協調性が高いことは認めますが、癒しになるとは思えませんよ」

そう言いながらフリッパーをパタパタさせる。

コウテイペンギンっぽい見た目。さらに大きくて包容力がありそう。これは癒されるな。


「次は海洋ブロックに行ってみましょう」

ターミナルに戻って高速移動ポッドに乗り込む。

おっと、ちょっと豪華なポッドだな。対面式の四人掛けソファーが設置されている。ペンギンボディで座れるのかな?

「エラリー、賓客用ポッドじゃない。よくこんなのを用意できたわね」

アタラちゃんと僕が並んで座り、正面にはエラリーちゃん。ソファーが変形して、ペンギンのお尻をきちんとホールドしている。変な心配はいらなかったようだ。


「当然ですよ。第七次元からの稀人(まろうど)、フォリナー・フラッシュの視察なのです。最大限のもてなしをせよと、壬皇近侍(じんこうきんじ)閣下から指示されました」

「へぇー、キンジがねー」

正直意外だった。僕のことなんか適当でいいやって感じだし。

十分ほどの道中だったが、壁面のモニターに各ブロックの特色などが映し出されて退屈せずに済んだ。エラリーちゃんの解説も相まって楽しい時間を過ごせた。


「そろそろ到着しますよ」

エラリーちゃんの声に続いて軽やかなチャイム。海洋ブロックのターミナルについたようだ。

屋根が無いオープンエアの空間。周りを海に囲まれた、岩場だらけの孤島がターミナルだった。

そして、黄昏時(たそがれどき)のような黄色い空。

脳内システムで現在時間を参照すると、エヴェラント標準時で十三時、真昼間だ。それを補強するように、陽光は天頂から降り注いでいる。

「この黄色い空を見ると、故郷を思い出します」

本当に黄色い空だ。まれにトカチ・F・Dも、夕陽に空が黄色く染まることがあるが、もっと彩度が高く、明るい黄色だ。

岩場の陰から数人のルタ・アバトがフリッパーを振っている。エラリーちゃんも振り返している。知り合いのようだ。


「お知り合い? 話してきなよ」

「いえいえ、公務中ですので……」

「エラリー、行ってきなさいよ。私たちは辺りを散策しているわ」

「そうそう。遠慮せずに行っておいで」

「そうですか。申し訳ありませんが五分だけ……」

エラリーちゃんは、僕たちに断りを入れて知り合いのほうに向かった。

「じゃ、ちょっと散歩しようか。ここは絶景だなー。アタラちゃんは来たことある?」

「いいえ、エラリーの故郷のブロックなのに初めて来たわ。綺麗なところね」

アタラちゃんが腕を絡ませてくる。


エラリーちゃんの気持ちが少し分かる気がする。アタラちゃんの故郷はすでに存在しない。エラリーちゃんは自分の故郷の風景を見せることで、アタラちゃんが故郷の惨劇を思い出すことを恐れたんだろうな……。

今は僕という恋人がいるから大丈夫と思ったのかも。

ごめん、エラリーちゃん。僕の力ではアタラちゃんの心の傷は治せないみたいだ。

よし、余計なことを考えさせないように難しい話をしよう!


「ところでさ、エラリーちゃんって指が無いじゃん?」

「そうね。痕跡はあるけど固着していて、別々に動かせないみたい」

「以前の話なんだけど、器用に指を使えない種族は、地球の人間型文明みたいなのは築けないってのが地球人の常識だったんだ」

「ああ、ルタ・アバトは準知的種族の段階でリフトアップされたのよ。私の種族も同じ」

「なるほど……。こっちも同じか」

「それが当たり前じゃないの? あっ、地球人は違ったわね」


「そうそう。僕らは『エボルター』と呼ばれて特別扱いされてた」

「たぶんそういうのは、こちらでは始祖種族だけね。そこから銀河に文明が広がっていくのが普通。第七次元は特殊ね。エボルター種族が複数いるらしいし」

「それでも相当珍しいみたいよ。異星人とのファーストコンタクトでは相手が驚いていたよ」

「主族―従族の連鎖で銀河文明が広がるのが常識だしね」

「おかげで、第一惑星の公転軌道の離心率修正って大事業に協力してくれたんだけどね」


「へぇー、第七次元には『超越種族』もいるじゃない? 彼らもエボルターよ」

「それは御伽話(おとぎばなし)だよ。いたらスゴイなーって感じでしょ?」

「えっと……第七次元からの概念や想念は、超越種族由来のものよ」

本当にいるの? マジ? 「ウナギは蒲焼が一番だ!」って叫んだのも超越種族??

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