23.エヴェラント探訪 2
発着場でのハプニング(未遂)はあったものの、アタラちゃんと一緒に居住区に向かう。
見せてもらおうか、戦略遊星エヴェラントの居住区とやらを。
大型移動ポッドに乗って居住区階層に降りていく。
透明なポッド越しに、メタリックなシャフト内壁を、ぼんやり眺めていると、いきなり大空に放り出された。
「うおっ!」
「びっくりしたでしょう。ここからは透明シャフトになっているのよ。少し速度を落とすわね」
「これは驚いた。何で地下に空があるの? 雲も浮かんでるし!」
「ここはエヴェラントの自然保護区よ。惑星地表を再現してるの。0.18G環境で対流圏を維持するには、最低でも五十キロメートルの厚みが必要になるのよ」
スカイブルーの青空からライトブルーに変化していく。エアロゾル層に入ったようだ。ミー散乱により白っぽく霞んでいる。
「あれは?」
上を見上げると青白い恒星が浮かんでいる。眩しさに目を細めながら指さす。
「人工恒星アレイね。天蓋にはたくさんの人工恒星が配置されているわ」
「スケールがぶっ飛んでんなー」
「薄っすらと山脈が見えるでしょう? あれで生態系を仕切っているのよ。五十以上の星系から集められたものなの」
「こんな低重力で大丈夫なの? 高重力環境出身の生物もいるんでしょ?」
「ここは知的種族の居住区じゃないからね。種族間の軋轢も関係ないわよ。隔離された高Gエリアもたくさんあるわよ」
「すげーな、ここ。気圧差で天候が大荒れになりそうだけど……」
「そこは人工知性の腕の見せ所ね。変動重力下での気象制御に、一家言を持ってる人工知性もいるわよ」
「何か壬皇並みに濃そう……」
「あはは、ベクトルは違うけど、相当なものよ。会ってみる?」
アタラちゃんが笑いながら言う。
「遠慮しとく……」
そんな会話をしながらも、移動ポッドは降りていく。
高度表示は五百メートルと出ている。地表の様子がよく見える。
ガゼルっぽい動物の大群が草原を駆けていく。何とも雄大な風景だ。
「これで自然の風景は一旦おしまい。自然保護区の体験ツアーも予定に入れてるわ。ひとまず居住区に入るわよ」
景色が味気ないシャフト内壁に変わってしばらくすると、軽やかなチャイムが響く。
「ついたわ。降りましょう」
アタラちゃんの言葉に移動ポッドから出ると、そこは空港のロビーのような場所だった。
目の前に大きなペンギンのぬいぐるみが置いてある。ご当地キャラだろうか?
「フォリナー・フラッシュ、中枢直衛軍アタラ大佐。ようこそ、エヴェラント居住区へ」
「ぬいぐるみが喋った!」
「違うわよ、フラッシュ。こんにちは、エラリー」
「こんにちは、アタラちゃん。元気にしてた?」
柔らかで温かみのある女性の声。ベルベットボイスっていうんだっけ。
「エラリーさん?」
この巨大ペンギンはエラリーさんというらしい。アタラちゃんと仲がいいようだ。
「はい。初めましてフォリナー・フラッシュ。エヴェラント居住区の行政長官を務めています」
って、大物じゃん!
「行政長官って偉い人なんじゃ?」
アタラちゃんに小声で尋ねる。
「居住区のトップね……」
小声で返事が返ってくる。
「ご丁寧なごあいさつ、痛み入ります。フラッシュ・バーンズと申します。今後ともよろしくお願いいたします」
お偉いさんにはへりくだる。これが僕の処世術だ! なお、壬皇とキンジは除く。
「かしこまらないでください。私なんて、ただの調整役ですよ」
「そうよ、フラッシュ。エラリーは気さくな人よ。気楽に話してね」
「それじゃ、エラリーちゃん。僕のことはフラッシュって呼んでね!」
「軽い……」
ペンギンが絶句している。
気楽過ぎたか……。




