22. エヴェラント探訪 1
エヴェラントの地表が近づいてきた。
「オルカ、エヴェラントへの着陸はどうしたらいい?」
アビオニクス担当の自律機械、オルカを呼び出す。
『了解。コントロールクラウドと通信中。……針路を表示します』
「フラッシュ、コントロールクラウドにフライトプランを提出してなかったの?」
「あー、そういうのあるんだ。その辺も勉強しなきゃなー」
『アタラ大佐、自律機械のオルカです。私が代わりに提出しました』
「オルカ……。フラッシュ、あなた自律機械に名前をつけてるの?」
「あー、つけないの普通? 僕の部隊って他に部下がいないから自律機械頼りなんだよねー」
「つけないわね。上位の人工知性に指示して自律機械を動かす感じね」
「人工知性って濃い性格してるイメージがあるから、ちょっと苦手……」
「壬皇閣下ね。あの方は特別よ。象徴としての存在だから……」
アタラちゃんが語尾を濁した。やっぱり濃いって思ってるんだ……。
「まあ、自己申告してくれる子には、その名前で呼んでるよ。整備班長とか」
「自律機械を直接指揮してるんだ。だから、個別に名前をつけてるのね」
「そうそう。名前を呼ばなくても通じるんだろうけど、それだと熟年夫婦みたいでヤダ」
「あはは、そうね。自律機械に名前をつけるのもいいかもね。仕事仲間なんだし」
「うん、たまに冗談まで言うから楽しいよ」
「自律機械が冗談を? それこそ冗談でしょう?」
『アタラ大佐、今の発言を冗談として受理します』
アタラちゃんが絶句している。オルカの冗談は一級品だ。
納得がいかない顔のアタラちゃんと共に、エヴェラントの発着施設の一つにアプローチする。
「オルカ、この針路でいいの? ぶつかっちゃうよ?」
『問題ありません。透過できます』
スロットルを戻し、恐る恐る突入する。エヴェラントの幾何学模様が走る青い表面は、何かのフィールドだったようだ。青いフィールドを抜けると金属製らしきゲートが現れた。
「おお、思索の間の壁みたいなもんか!」
「あら、フラッシュ。知らなかったのね。これは次元障壁の最終防衛ラインよ」
「やっぱり勉強不足だな……」
戦艦が入れそうなゲートをくぐると、そこは広大な発着場だった。
「広い、広すぎる」
「これが通常の発着場ね。エヴェラント表面に数えきれないほどあるわよ」
「数えきれないほど……ね」
これほどの規模は、僕の感覚では把握しきれない。いや、もう考えるのはやめよう。
「じゃあ、降りましょうか」
アタラちゃんが、ハーネスを緩めて降機の準備を始める。
僕は、機体側面に格納されているボーディングラダーを展開する。セガンタの発着場では、ボーディングブリッジから乗り降りするが、セブンス・ファントムにはボーディングラダーも取り付けてもらった。
その方が戦闘機っぽいから!
ここエヴェラントは、0.18Gで統一されているそうだ。これだけ大きな人工物を、どのように重力制御しているのか気になるところだが、考えても切りがない。そういうものだと割り切ろう。
コックピットの位置は地上から三メートル程度だが、飛び降りたりはしない。しっかりとボーディングラダーに掴まって降りる。
「待った。アタラちゃん、ボーディングラダーを使ってね」
低重力環境なので飛び降りようとしたアタラちゃんを止める。これは新人あるあるだ。レーシングカレッジの恒例行事としても有名だ。インストラクターにこってり絞られるのとセットで。
「ごめんなさい」
ダメなことをやろうとした自覚はあるようだ。重力馴致の過程でしっかり教えたからな。
「次やろうとしたらお姫様抱っこの刑な。アタラちゃんを抱っこしたまま、キンジとお茶会でも開くか」
「もう……」




