21. 戦略遊星エヴェラントへ
キンジにアタラちゃんの過去を聞いた翌日。
僕の専用機、セブンス・ファントムに補助シートを取り付け、アタラちゃんと一緒にエヴェラントに降下している最中だ。
セブンス・ファントムは、思考制御で飛ぶ戦闘機だが、手動操縦装置もつけてもらった。純粋に趣味だ。
今回は、高密度流体の充填は無し、回転コックピットも固定している。
「リミッターは最大4Gに設定してある。少し振り回してみようか」
戦闘時以外は、ほとんどの時間を手動で飛ばしている。かなり、マニューバにも慣れた。
「うん、やってみて」
少し元気が出てきたようだ。戦闘機に乗るのは初めてだと言っていたし、気晴らしにどうかと思ったのだ。
ああ、一応仕事だ。戦略遊星エヴェラントの視察。キンジの許可は取ってある。
「じゃあ行っくよー」
右バレルロールからスプリットS、次は左エルロンロールで三回転、からのインメルマンターンをキメる。
大気の存在しないエヴェラントでは空力を使った機動ができない。推力を複雑に操作してフィギュアを再現している状態だ。
「すっごーい!」
アタラちゃんが歓声を上げる。やはり、王道のアクロバット・シーケンスはウケがいいな。
「すごかろう、すごかろう。体調は平気?」
「もちろん! もうカオス・スフィアにも慣れたわ」
遊園地に設置した中で、最大の加速度を味わえるとっておきの絶叫マシン、カオス・スフィアにも慣れたか。やるな。
「アタラちゃんも操縦してみる?」
「いいの!?」
補助シートの操縦機能を立ち上げる。大気エミュレートモード起動。まるで、大気中のような挙動になる。
「右手をサイドスティックに、左手をスラスターに置いて、ペダルに両足を乗せて」
「こんな感じ?」
「そうそう、スティックを引くと上昇、押すと下降、左に倒すと左に倒れる感じ。スロットルはそのままで。まずはそこからかな」
「分かった!」
「それじゃあ、ユーハブコントロール」
操縦装置から両手を離す。
「えっと……アイハブコントロール?」
アタラちゃんが、ゆっくりとスティックを引く。機首が上がり始める。地平線が視界から消える。
今度はスティックを前に倒す。機首が下がり下降開始。青い大地が迫ってくるように見える。
だが、現在の高度は三百キロメートル。地球でいうところの低軌道だ。
というか、エヴェラントはデカい。デカすぎる。木星くらいあるんじゃなかろうか。知らんけど。
水平飛行に戻して、今度はエルロンロール。
「うわー、回ってる!」
「90度毎に止めながら360度回ってみて。4ポイント・ロールだ」
コックピットに姿勢指示器を表示する。
「結構難しい……。でも楽しい!」
アタラちゃんが元気になった。ヨシ!
操縦を返してもらって、エヴェラントへの降下を再開する。
補助シートの操縦機能、オフライン。大気エミュレートモード、停止。
高度百キロメートル。少しずつエヴェラントの細部が見えてくる。
遠くからは青い球体にしか見えないが、ここまで近づくと、表面を覆う微細な幾何学模様が確認できる。
「話には聞いていたが本当に人工惑星……いや、遊星なんだな」
「昔は惑星だったのよ。完成して恒星から旅立つときに、戦略遊星エヴェラントと命名されたの」
「おー、そういうことなのね」
「遊星はフラッシュの世界の概念らしいわね」
「今は誰も使わない呼び方だけどね」




