主殿の生態記録3(アスラ視点)
総合評価2万pt、ブクマ6000超え記念SS
主殿はたまに、エルナの家で雇われている男どもに特訓を施す。
みな、主殿よりゴツい男ばかりだが、面白いように主殿にこてんぱんにされる。
「隊長!ありがとうございました!」
「っした!」
ボロボロの男たちが最後に主殿に頭を下げる様は、見ていて気持ちが良い。さすが、我が主。
「筋肉ばっかりつけても意味がない。もうちょっと対人訓練しろよ?」
「ハイッ、隊長!」
「隊長は止めろって……」
うむ。隊長は身分的に低すぎる。ここは、“我が君”と呼ぶべきじゃ。
さて、妾は歌劇が面白くて仕方ないが、主殿は同じものを何度も観るのはつまらないらしい。
「先の展開が分かっているのを、何度も観るって馬鹿馬鹿しくないか?」
『先の展開が分かっているからこそ、その世界に没入できるのではないかえ?』
「えええ~?どこが?」
おかしいのう。妾は歌も台詞も覚えてしまうほど観ているが、飽きないというのに。
『はー、残念じゃ。妾は毎日、主殿と歌劇を観たいのに』
「歌劇は嫌いじゃないけど、たとえ違う演目でも、毎日は嫌だ」
『まったく、主殿は。もう少し、情感を育てるべきじゃ』
「情感!?それ、悪魔のアスラに言われたくないぞ。というか、人間の恋愛劇をアスラは共感して観れるのか?」
む。失礼じゃな。
『1人の女を取り合って、オトコどもが殺し合いをするのは最高じゃ。結局、女が死ぬのも良いのー』
「…………」
主殿が微妙な顔になった。
「その話は、悪辣な兄が弟の恋人を無理矢理手籠めにしたため、弟が復讐する悲しい話だった気がする……」
『悲しい?!弱い弟が強くなる話であろ?』
「そうか……」
なるほど、主殿は話の筋を間違えて捉えているから、面白くないのじゃな。
「ちなみにその話の前に演っていた、貧しい少女が努力して幸せになる話は?」
『ふむ。あれは少し不満であった。……あの商家の男。最後に謝って息子にすべてを譲り、隠居したであろ?あれはイカン。少女を奴隷にし、息子は性根を鍛え直すために魔獣のいる森へ行かすべきじゃった!』
「……ナルホド。アスラは、商家の男が主人公だと思ったんだな」
主殿が遠くを見つめて呟いた。
ふうむ。
どうやら主殿は劇の内容の理解が浅いようじゃな。これからは、妾が隣でいちいち解釈してやらねばなるまい。
まったく、世話のかかる主じゃ。
『おお、そうじゃ!いずれ、妾が主殿を主人公にした歌劇の脚本を書くぞえ。主殿が世界征服するまでの物語じゃ。あの高慢ちきでイケすかない白い男にカネを出させ、世界中で公演をやろう』
「アスラ」
主殿がふいに真剣な顔になって妾の頭を優しく撫でた。
ふぉっ?!
「……私はね。アスラと契約していることを、秘密にしておきたいんだ。こんな可愛くて賢いアスラが、他の奴らから狙われるようになったら困るからね。だから、脚本を書くなんて目立つ真似は、して欲しくないな。素晴らしい脚本を書く猫なんて、みなが注目してしまうだろ?どうか、私だけのアスラでいてくれ」
『…………!!!』
わ、妾が主殿以外に心移りする訳がないではないか!
でも、そうか。
主殿はそれほどまでに妾を大事に思っているのじゃな。妾もしかり。
うむうむ、歌劇のせいで主殿が一躍人気者となってしまっては、嬉しい話ではあるが、妾が主殿を独占できぬ。脚本を書くのは止めておくか。
アスラの取り扱いに慣れてきたリン。
悪魔を手玉に取る……。
(アスラは独自解釈で歌劇を楽しんでいます)
>2024年04月19日活動報告より




