もしもアスラが猫じゃなかったら?( IF話 )
エピソード139 『学園長との話、そして次の予定は』に絡めた、IFの話
ちょっとした伝手で、たまたまテネブラエの砂が手に入った。
せっかくである。私はアスラの形代をこっそり作り直すことにしてみた―――。
「か、か、かわいいぃぃぃ……!」
新たなアスラを見るなり、リーゼッテが両手を合わせて感動したように叫ぶ。
「めっっっちゃ、かわいいです、アスラさま!」
『……うるさいぞ、モシャ娘。前より耳が良く聞こえるゆえ、そんな風に叫ばれると耳が痛いわ!』
「も、申し訳ありません」
アスラが何を言ったか、リーゼッテには分からなかったはずだが……赤い目が剣呑な光を放って睨んだからだろう、彼女は反射的に謝罪の言葉を口にし、頭を何度も下げた。
了承を取らず勝手に入れ替えをしたため、アスラは憮然としていたものの、「カワイイ」を連呼されたおかげでちょっと機嫌が良くなった。
よしよし。
頑張って作った甲斐があったものである。
『少し動きにくいのう』と文句を言いつつも、アスラはひょいと後ろ足で立ち上がった。
つぶらな赤い瞳が私に向けられる。
『可愛いかえ、主殿』
「ああ。……可愛い」
やばい。本当に……可愛い。
真っ白な兎は嬉しそうに目を細め、器用に耳を搔いた。
夜。
私のベッドの上にいつの間にか現れたアスラが、ちょんと私の体に触れた。
「どうした、アスラ」
『今夜は一緒に寝ても良いか?』
「……まあ、別に構わないが」
どういう風の吹き回しだろう?
首を傾げていたら、アスラも首を傾げて私を見上げた。
『なんだか一人だと淋しいのじゃ』
「……!」
こ、これはもしや、兎になった影響か?!
すりすりと体を寄せられては……断れるはずもない……。
―――その後。
毎夜、アスラは私のベッドで眠るようになった。おかげで私は寝不足気味である。
あまりにぴったりと小さなアスラがくっつくので、下手に寝返りが打てないのだ。
5日目、とうとう私は決断した。
「アスラ。今夜からは、もう添い寝しない」
『な、何故じゃ!?』
「私は一人の方が安眠できる」
『ひ、ひどい……』
白い兎はしゅんと耳を垂れた。そして、悲しそうに私を見上げる。
くっ。
そんな目で見るな……!
まるで私が極悪人みたいじゃないか。
『昼間、一人で淋しいのは我慢しているのじゃ。夜くらいは、一緒にいてくれても良いではないか……』
「……い、いや、駄目だ」
『妾、淋しくて死んでしまう……』
…………っ!
う、兎にするんじゃなかった!
結局。
それからしばらくの間、アスワドがアスラの添い寝番を務めた。
意外とアスワドもこの仕事(?)には乗り気のようである。どうやら最初に兎のアスラを見たときから、可愛いと思っていたフシがあるのだ。
昔は兎を狩って食べていたというのに……。まあ、魔物系の兎だが。
なおアスワドが添い寝を代わってくれている間に、私は必死でテネブラエの砂を探した。再び、アスラを猫に戻さねばならない。
あの勝手気ままな猫のアスラの方が、私も付き合いやすいとよく分かった。兎の幼気な姿で、淋しい淋しいと四六時中付き纏われたら……ある意味、拷問だ!
ちなみに、ミチルは可愛いアスラに嫉妬中……(ミチルは、リンの従魔の中で自分は"可愛い枠"と思っているので)
>2025年10月31日活動報告より




