お化粧(アスラ視点)
ブクマ7000超え記念
このところ、主殿は化粧品なるものをモシャ娘と作っている。
妾は歌劇場に通っているので、もちろん、化粧品がどのようなものか知っている。まるで別人のように美しく変身できる道具だ。
普段は冴えない顔の女優が、驚くほど華やかになるのを目の当たりにしたときなどは、感心したものであった。
しかし!
妾のような生まれもっての美貌の持ち主には、化粧など、不要なものである。ゆえに、化粧をしてみたいと思ったことはなかったが……主殿が作ったとなると、やはり別であろう。
というか、主殿が生み出したものが、妾以外の女を美しくさせるのは、少々、業腹ではないか。
妾ももっと美しくなって、主殿を釘付けにせねばなるまい。
主殿とモシャ娘が授業とやらへ行った隙に、人型になった。
部屋に置いてある化粧品をテーブルの上に並べる。
「アー」
「なんじゃ、バカ鳥。お主も化粧をしたいのか?」
「アー!」
「ふん。お主が化粧をしたところで、美しくなるわけがなかろう」
「ア、アアー!」
「うるさいのう。試さんでも、そんなことくらい分かるわ!」
じゃが……もし。
もしも。
主殿に怒られる場合、バカ鳥も一緒の方が矛先が分散されるかも知れぬ。
主殿は妾の美しさに感激するはずであるから、その可能性は低いが。
一応、念のために。
「……分かった。まあ、美しくなりたい気持ちは、分からぬでもない。この口紅を、塗ってやろう」
「アー!」
―――やがて、主殿が帰ってきた。
モシャ娘はおらず、一人っきりだ。
主殿は、妾とバカ鳥を見て、ピタリと動きを止めた。
「……何をやっている?」
「アー!」
「……そうか。綺麗になりたかったのか」
主殿は細い目だし、ぺったりとした顔なので感情が読み取りにくい。
が、妾の美しさに驚愕して動揺しているのは分かった。
ふふふ。
もともと美しい妾でも、さらに美しくなれるのじゃ。どうじゃ、ますます惚れるであろう?
「……っぶ、あっはっはっ!!」
その途端、主殿の大爆笑が部屋に響いた。
「アスラ、どんな美的センスなんだ!あははは、はは、やばい、腹が痛い……!」
ぬ?!
ど、どういう意味じゃ!!!
主殿に顔を洗われた。
妾の渾身の化粧は、どうも不評であった。
「口紅を大きく塗りすぎだし、真っ赤な色はアスラに似合わない」
言いながら、主殿が手際よく妾に化粧を施してゆく。
「アスラは色が白くていいんだけれど、頬に血色が足りないんだ、だから頬に赤みを足して……口紅は、薄い桃色の方がいいな。まあ、あの赤でも合うといえば合うんだが、毒々しい」
独り言をぶつぶつ言いつつ、主殿はあっという間に妾の化粧を完成させた。
出来上がったのは……ぬおお、なんと素晴らしい!
見たことがないほど可憐な美少女ではないか!!
「お、おおお……こ、これは妾か?」
「元が良いから、やり甲斐があるよ。アスラが持っている鋭さを少し弱めて、10代前半の少女らしい可憐さを前面に出してみた」
「主殿は天才ではないか、妾でもまだ美しくなれるとは!」
化粧、すごいのう!
妾も、すごいのう!
うむ、あの女教師や他の娘たちが化粧に歓喜する気持ち、よく分かったぞえ!
すると、バカ鳥がバタバタと羽をバタつかせた。
「アー!アーーー!」
「はいはい、ミチルも化粧がしたいんだな?でもミチルは青くて綺麗な羽を持っているから……こっちの方が似合うよ」
主殿は苦笑しながら、どこからか花柄のリボンを取り出した。
それをバカ鳥の首に巻く。
「そら、可愛くなった」
「アー♪」
バカ鳥はくるりと回って羽を広げた。
……まったく、単純な奴め。
リンに怒られる可能性を見越して、ちゃっかりミチルも道連れにするアスラ……。
なお、アスラはキレイなもの・カワイイものをちゃんと分かりますが、美的センスが魔界育ちなため、変です。
恐らくヘビメタな格好など、大好きと思われます。
ゾンビメイクも喜ぶかも知れません。
ちなみにこのあと、ミチルを恨めしげに見ていたアスワドにもリボンを巻いてあげましたv
>2026年01月30日活動報告より
以上にて、SSからの転記は終了! 近いうちに、新SSをUPします。
(リアクションボタンの内訳を見てみたら、『愛のカタチ』は号泣ボタンを押してる人が……!
アスラ「そうよな?!おつる、哀れよな?!みなが村人のような薄情者でないことに、妾は感動じゃ!」)




