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■ ゼロ転生 ~ こぼれ話 ~  作者: もののめ明


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愛のカタチ(リーゼッテ視点)

100話突破+30万字超え記念

 新作の歌劇が始まった日は、いつもアスラさまは騒がしい。

 だけどこの日、歌劇を観て帰ってきたアスラさまは、釈然としない顔でした。

 スルリと人型になり、ベッドの上に胡坐(あぐら)をかいて―――

「主殿。主殿は、()いた相手が別の人間を好きな場合、身を引くかえ?普通、その別の人間を殺すものではないかの?」

と、突然、尋ねてきました。

 ふむふむ、どうやら、今回の歌劇は悲恋モノだったようですね。

 悲恋モノは、アスラさまには毎回、不評です。

 復讐劇とか奴隷からの成り上がり物語とか、血で血を洗うような、殺し合うような話がアスラさまは大の好物なのです。

 社長は、ソファでのんびり魔術書を読んでいましたが、顔を上げて首を傾げました。

「……今まで、そんな経験をしたことがないから、分からないな」

「ふむ。まあ、主殿ほどの力の持ち主であれば、みな跪くゆえ当然か」

 ……いや、アスラさま、それはちょっと違う気がするんですけど。

 あと、社長の片想いも想像がつかない。

 私の心のツッコミが聞こえたワケではないでしょうけど、アスラさまはこちらを見ました。

「モシャ娘は……聞いても無駄じゃな。おぬしでは誰にも相手にされん」

「ひ、ひどい、アスラさま……」

 そんなにバッサリと一刀両断しなくても!

 こ、これでも、今世は人目を惹く美少女ですよーう!前世だって、なんとなくいい関係の異性だっていたんですからね!

 彼氏いない歴イコール年齢でしたけど!!

 すると社長が本を置いて、身を乗り出しました。

「アスラ。人間の話だと思うから、アスラには理解出来ないんじゃないか?もし、魔物と人間の話だったら、どうだろう?」

「む?どういう意味じゃ?」

 社長は、神妙な顔をして……突然、こんな話を始めました。

 

     ※ ※ ※


 ―――あるところに、魔鳥の"おつる"という女がいたんだよ。

 ある日、おつるは人間の仕掛けた罠に掛かり、もがき苦しんでいた。

 そこへ、1人の人間の男が通りがかり……なんと、おつるを罠から助けてくれた。

「さあ、この罠の主に見つからないよう、早く逃げるんだ」

 男は優しくおつるに言い、羽の手当てまでしてくれた。

 まさか、人間に助けられるとは!

 おつるは驚きながらも感謝し、すぐに森へと帰っていった。しかし帰ったあとも、何故、男が自分を助けてくれたのか気になって仕方がない。

 そこで、おつるは人間に扮して、男に近付いてみることにしたんだ。

 男は、"野盗に襲われて荷物を奪われた"というおつるの嘘を疑いもせず、「それは大変な目に遭ったね。もしよければ、うちで休んでいくかい?」と親切に家へ招いてくれた。

 おつるの目論見通りだ。

 さて、招かれた男の家は小さく、貧しそうだったが……男はおつるのために、食事を用意してくれた。

 おつるは、不思議な気分でその食事を食べたよ。

 だって、いつもは敵対関係にある人間から、食べ物をもらったんだからね。

 その後、おつるは旅をする金がないと言って、しばらく男の元で暮らすことにした。

 男は……誰にでも親切で、優しい人柄だった。

 村では皆から好かれ、頼りにされていた。

 おつるは一緒に暮らしながら、男のことがだんだん好きになっていったよ。人間を好きになるなんて!と思ったが、おつるは森でいつも独りだったからね。こんな風に誰かと一緒にいて、くだらない話をしたり、畑を耕したりすることがなんだか新鮮で楽しくて仕方なかったんだ。

 さてある日……村に1人の神官がやって来た。

 隣の国の神殿へ向かう途中だった神官は、おつるを見て驚いた。

「魔物だ!魔物が人間の振りをしている!」

 村は途端に大騒ぎ、村人は手に手に武器を持っておつるを取り囲んだ。

「殺せ、殺せ!」

 それまで仲の良かった村人の変わりように、おつるは悲しくなった。

 自分は何もしていないのに、どうしてこんな風に襲われなければならないんだ?

 すると、たまたま出掛けていた男が帰ってきて、慌てておつるの前に出た。

「みんな!おつるは、何もしていないじゃないか。どうして殺そうとするんだ」

「いいや、おつるは魔物だ。俺たちをだまして、食べるつもりだ」

「まさか!おつるはそんなことはしない。食べるつもりなら、もうとっくに食べられている。こんな酷いことは、止めてくれ」

 男の訴えに、村人も神官も怒りだした。

「きっと、お前は魔物に染まってしまったんだ。お前も殺してしまおう!」


     ※ ※ ※


「えええっ!な、なんてヒドい村人と神官じゃ!男は、人間の仲間ではないか。おつるを庇っただけで、殺されるのか?!」

 巧みに声を使い分ける社長の話を聴き入っていたアスラさまが、叫びました。

 両手を握り締めて、すっごく感情移入しているようです。

 てゆーか、おつるって。

 まさか機織りしないでしょうね?

 

     ※ ※ ※


 村人たちは武器を振り上げ、おつると男に迫った。

 おつるは我慢が出来くなり、元の姿に戻ってしまった。そして、辺りを威圧して叫んだ。

「憎らしい神官め。お前のせいで、私の計画が狂った。男も、村人も、全部食ってやろうと思っていたのに!」

「おつる?!何を言っているんだ」

 男はびっくりし、おつるを見上げた。

「おつるは、魔物かも知れないけれど、この生活を楽しんでいただろう?俺も楽しかった。そんな嘘は言わないでくれ」

「いいや、私はお前を食うつもりだった。だけど、バレてしまっては仕方がない。そのうち、食ってやるから覚えておけ!」

 ……本当は、おつるは男も村人も食べるつもりはなかったんだけどね。

 だけど、そう言わないと男が村人から攻撃されてしまうだろう?

 だから、おつるは辛い気持ちを隠して嘘を言い、そして空へと飛び立った。

「おつる!おつる!!」

 男の呼び声が聞こえたけれど、おつるは振り返ることなく森へと帰った。

 すべては自分を助けて、親切にしてくれた大好きな男を守るために……。

 分かるか、アスラ?

 好きな相手のために身を引く、それはこんな場合もあるんだよ。


     ※ ※ ※


「おつる!……おおお、なんと健気な!!おつる、おつるぅぅぅ!!!」

 アスラさま、天に向かって大絶叫。

 いやもう、アスラさまって本当に悪魔?

 この話でそんなに慟哭する?!

 私は唖然として、語り終えた社長を見ました。

 社長はニヤリとして、親指を立てました。……社長。悪魔を手玉に取りすぎじゃないですか?

ちなみに、ミチルは同じ魔鳥仲間の話だからと親身になって聞いていたため、結末にショックを受けて大号泣。

アスワドはもちろん、人情(?)篤い犬なので、内心、号泣です(笑。←男の子だから、人前では泣きません~(笑。


>2024年12月20日活動報告より

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