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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第四章 解脱

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第92話 はるまと選ばない自由

「創造神様はこんな道歩いてどこ行ったんだよ」


「創造神って…彼が聞いたら怒るわよ」


「良いじゃん。みんなで神って呼んでやろうよ。


人類を見捨てないでって言いに行くんだからさ。


俺は一貫して神様って呼ぶからね」


モモカさんはため息をついて歩き続けた。


「そうね。じゃ神様に早く会いに行きましょ」


「ちょっとお腹空かない?そろそろ狩りして野営の準備しようか」


「ほんと君はよく食べるわね。


まあ良いわ。急いでも仕方ないしね」


「じゃー狩りに行くけど、ウサギか熊ならどっちがいい?」


「食べるものなんて選んだことない…」


「百年以上前は選んでたんでしょ?選ばせてあげるよ」


「え、うさぎ…いや熊かな?いやうさぎ…」


「うさぎ?」


「うさぎで良いわ。熊は量が多そうだし」


「で良いわは駄目だよ。が良いって言わないと。


妥協で殺されて食われるなんて、獲物に失礼だ」


「あ、そうね。ごめんなさい。ウサギを頂くわ」


モモカさんが神様を呼び戻しに行くのに同行することにした。


ゆうなちゃんがリリスさんについてるし、旅が安全とも限らないからだ。


旅立ちから既に二週間ほど経っただろうか。


非常食も尽きて思った以上の長旅になった。



「もしかして火起こせない…?」


「ごめんなさい。君がやってるの見て出来ると思ったんだけど…」


「見て出来るほど簡単じゃないって…獲物ももうあるし、仕方ないな。


イフリート、お願い」


イフリートが即座に火を灯してくれる。


「魔法ってすごいのね。


いつもは自分で火を起こしてるのは何故?」


そういえばと思いながら俺は恐竜のことを思い出した。


「俺に魔法を教えてくれた師匠、いや父さんみたいな存在の人がね。


自力で火を起こせない人間が魔法で火を起こしちゃいかんって言っててね。


今でも自分で出来ることは自分でやるようにしてるんだ」


「良い教えね。だから君はそんな良い子に育ったのね」


「ありがと!」


「私も魔法使えたらなあ」


モモカさんも魔法使えるかもよって言おうかと思ったが、

少し迷って思いとどまった。


魔法の必要ない世界に魔法を持ち込むべきじゃない。


俺は無言で返した。


「そういえばさ、モモカさんはなんで神様の言うことそこまで信じてるの?」


「ん~なんでだろうね。


彼は私の居場所だった…って感じかな。


戦争で両親を亡くしてね。


それから売られて、奴隷ってほどひどくないんだけどそういう立場になったの」


「奴隷なんてあるんだ」


「好きで奴隷になる人もいるのよ。


言われることをやっていればいいし、生活は保障されるし。


だからそこまで悪い物でもないわ」


「そっか」


「でもやっぱり、疎外感って言うのかな。


自分が物みたいな存在であるって自覚はあってね。


で、最後に私を買った人が悪党でね。


麻薬王って言ったらわかるかな。


戦争で辛い思いをした人に、全てを忘れられる薬だって渡して…」


「はめて金をむしり取る?」


「そう。で、彼に殺された。


その時奴隷として傍らにいた私に言ったの。


お前はどうする?って…」


「で、ついて行ったの?」


「そう、何も考えられずに…


でもことあるごとに私に言うのよ。


自分で決めろって、それから私は自分で選択するってことを覚えていった」


俺は少し笑ってしまった。


「で、食べたいものを選べなくなった?」


それを聞いたモモカさんは大きく笑った。


「そうね。彼がいなくなったら逆戻りよ。馬鹿みたい」


「リリスさんとは親友みたいな感じ?」


「どうだろう。姉妹みたいな感じかも。


彼の求める世界を作りたいって部分では一番信頼しあえる仲間かも」


「二人ともそこまで神様のこと思えてるの凄いよね」


「そうね。彼女も同じような感じかな」


日が暮れて寝ようと思った時、山の向こうに明かりが見えた。


「あそこ、何かあったっけ?」


モモカさんが目を凝らす。


「明かりが揺らいでるわね。


こんな場所に人がいるとすれば、彼だわ」


「あと一山超えれば会えそうだね。明日は一気にあそこまで行こう」


「そうね」


そう言って俺達は眠った。



起きると見慣れた天井だった。


このタイミングか…


隣を見るとゆうなちゃんがいない。


ゆうなちゃんが俺より早く起きているなんて珍しい。


「おはよ~ゆうなちゃんこんなに早く起きるなんて珍しいね」


「何言ってるの。ゆうなちゃんはもう学校行きましたよ。


全然起きないから病気かと心配したわよ」


え?時計を見ると、十一時?昼まで寝てた?


「やっば、学校行かないと?」


母さんを見るとため息をついている。


俺は急いで着替えた。


「い、行ってきま~す」


父さんの行ってきますを言いながら線香に手を合わせる。


おねえさんが持って行った首のお守りに目が行った。


「いつから戻ってたんだっけ?おねえさん返しに来たのかな」


俺がお守りを手に取ると母さんの怒鳴り声が聞こえた。


「早く行きなさい!」


「は、は~い!」


俺は学校へ走った。


教室へ入ると先生はは怒っておらず心配そうに声をかけてきた。


「体調は大丈夫か?」


母さんが体調が悪いから休みと連絡してたんだろうか。


「だ、大丈夫です。良くなりました」


「そうか、じゃあ席について」


「はるま君~不良は俺のキャラだから取らないで~」


ゆうなちゃんのキーホルダーを壊した例の奴だ。


こいつは最近急になれなれしい。


まあ前みたいに何かと突っかかってくるよりはましか。


給食の時間になり給食を食べている時にふと思った。


そうだよな。

選ばない食事ってのもあるよな。

例えば三食給食が悪いわけじゃない。

選ばないことが悪じゃない。


もしかして、選べないと思ってることが駄目なんじゃないかな…


給食を食べ終わって昼休みになると、モブ三人衆が話しかけてきた。


キーホルダーの奴は仲良くなった感じだが、後の二人は相変わらずなんだよなあ。


「今日はなんで遅かったんだよ」


「ただの寝坊だよ」


「なんだ、寝坊なのか。先生に言ってやろうか」


意外なことにキーホルダー君が制止する。


「辞めとけよ。ダサいな」


「え?なんで急に仲良くなってんだよ。

昔は一緒に…」


「言っただろ?精霊の件で世話になったんだよ。


なあ、俺あれからちゃんとイフリートさんに習った修練してるんだぜ。

スゲー魔力が上がってきてさ」


「わかってると思うけど…」


「わかってるって!人を傷付けたりしねーよ」


後ろのモブが急に突っかかる。


「あのさ俺わかったんだ。

昔ねーちゃんのキーホルダーの件でもめた時、お前本気で怒ったろ?


あの時なんか死んだって思ったんだよ」


「俺も思った。虎ににらまれたみたいな。あれなんだったんだよ」


「あれってたぶん魔力みたいな物が元々あったんだよな。


あふれ出す魔力って人を凍らせるって言うか。今ならわかるんだ」


「わかったなら良かったじゃねーか。

後ろの二人も悪さしねーように教育しとけよ」


「お、おう!わかった」


力で押さえつけても何回も突っかかってきたあいつが素直になったもんだ。


なんか、分かり合える奴がいるって、あんなやつでもちょっと嬉しいな。



アリシアさんの出現やら神の研究所の壊滅やら、

色々あったけど現代は平和そのものだった。


家への帰り道、精霊を警察が取り締まってる姿に遭遇した。


政府の、いや警察の対応力の速さには恐れ入った。


精霊を使った犯罪をしっかり抑制出来てる。


「精霊なんて未知の物が急に出てきたのに、

日本の警察ってすごいよな~優秀な人がたくさんいるんだろうな」


「はるま君を逮捕出来てないのに?」


振り返ると、ゆうなちゃんとしおりんだった。


「あれはこの世界のことじゃないから良いんじゃない?」


「良くないから気にしてるんでしょ?」


俺はぎょっとした。


「わかってるわよ。ことあるごとに思い出してること、

しかも知らない相手の過去まで妄想して…」


「妄想…なのかな」


「私達は理を超えた存在じゃない。


そんな力ないって天狗さんも言ってたでしょ」


「そうなんだよなあ」


「はるま君の気晴らしにチョコレートパフェでも食べに行こうか!」


「食べる食べる!」


家に帰りスイーツを食べに行って帰ってご飯食べて寝る。


なんだか普通の生活がこんなに普通なんだな~って、

不思議な実感をしながら、その人は何事もなく眠った。



起きるとモモカさんはもう準備を終えていた。


俺は顔だけ洗ってそのまま立ち上がった。


「よし!行くか!」


山道は順調に進み、光があったあたりに行くと山小屋が立っていた。


こんな山小屋、間違いない。


ノックをすると返事があった。


「開いてるよ。モモカかな?」


ドアを開けて中に入る。


その男は振り返りもせずに話し出した。


「樽から全員引きずり出す相談かな?それとも全て焼き払う?」

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