↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第三章 現世

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/121

第77話 はるまと許しを求める女性

「あ、あれ?川は?」


大草原にポツンと一人、大の字になって寝ていた。


少女の姿は無い。


畜生界や修羅界なのかもしれない。

でも俺はなぜ移動してる?


少女が居た世界が何かもわかってない。

ここが少女の居た世界なのかもわからない。


情報が欲しい、混乱してどう考えたら良いのかわからない。



この世界はやっぱり、息が詰まりそうなほど瘴気が濃い。


いや、昨日より熱い…寒い?なんだこれ?


肌が焼け付くように痛いのに、寒さで凍えそうだ。


ふと見上げると、いつもの山々…じゃない…燃えている。


山火事とかじゃない。山自体が燃えている。


反対側を見るとはるか彼方に海…?


いや違う、波が止まってる。

あれは凍ってるんだ。


波が凍るほどの低温と、山が燃えるほどの高温。


ここはまた違う世界なのか?


天変地異が起こった後の、知ってる世界なのか。


わからない。

魔王の力で世界が地獄に代わったようにも思える。

魔王にはそれぐらいの力があると知ってるからだ。



その時、海の方から人影が見えた。


なんだあれ?


何かで見たことある…足枷?その先に鎖につながれた鉄球かな?


両足に付いたそれを引きずりながら歩く男性の姿。


ボロボロの服を着たその男性を見ているとその後ろには同じ格好の女性も…


「な、なんだあれは?」


「囚人であろうか?」


眺めていると、その後ろにも同じような人が…どんどん近付いて来る。


こちらに向かっているのかと思われた男性がすぐそこまで来るが、こちらには目も向けない。


そのまま通り過ぎて山に向かっているが、ぶつぶつと何かをつぶやく。


凍り付いていたように、身体に霜が付いていた。


沢山の人間が俺の横を通り、山に進んでいく。


何かあるのかと考えていると、一人の女性が目に付いた。


「許されなきゃ。私は許されない。私は罪」


ひときわはっきりと言葉を発する彼女が気になり、ついて行くことにした。



熱さと寒さの均衡が崩れ、どんどん熱さが増していく。


周りの人々から身体の霜が蒸発して水蒸気を立てていく。


次の瞬間、あちらこちらから悲鳴が上がる。


「あ~!」「ぐわ~!」


叫び声の方向を見ると肌が爛れて皮膚が燃えていく。


「ぎゃー!」「く、苦しい!」


「きゃ~!」


女性が声を上げる!


俺はとっさに彼女の肩を引き来た道を引き返した。


「離して!あそこに行かないと!」


「何がしたいんだ!死ぬぞ!」


「私の罪が!許されないと!」


「なんだってんだ。あそこに行くと何があるんだ!」


「私は許されたいの!罪深き私をお許しください!」


ベヒーモスが彼女の行く手を遮る。


「離して~!離せ~!私の贖罪をお許し下さい!」


元居た場所まで戻る。


ここに居ても、生きているのが辛いほどの瘴気に、おかしくなりそうだった。


だが、山の近くよりはましだった…海の近くよりも…


彼女は日が沈んでも、泣き叫び、山に向かって進もうとする。


その間もたくさんの人が山へ向かっていった。


どれほど時間が経っただろうか。


ふと山の方から人が歩いて来るのが見えた。


さっきと同じだ。ぼろを着て両足首に鉄輪に鎖、鉄球を引きずり歩く男性。


皮膚が爛れてゾンビみたいになってる。


先ほどの男性と同じ人だったとしても見わけがつかない。


凍りながら山へ向かう人と、焼けただれながら海へ向かう人。


肉の焼ける嫌な匂いをこらえながら、

俺は何を見ているのかまったく理解出来なかった。


もしかして、この人達はこれをずっと繰り返してるのか?


俺は、泣き止まない女性をベヒーモスに任せたまま、眠気の限界で眠ってしまった。



目が覚めると、見慣れた天井だった。


あの世界はなんだったのか、昨日と同じ世界なのか?


先に起きていたゆうなちゃんが少し元気がない。


スイーツ食べ放題の後の顔じゃない。


やっぱりあんな世界を見た後じゃ辛いよな。


「なんかしんどい世界に呼ばれたよね」


「そうだね~なんだろあの人たち、

話しかけても怒られるし、人とのかかわりは悟りの邪魔だって…」


「俺も、女性を助けたら怒られたよ。

私は救われたいんだって、あの人はどんな罪を犯したのか。

何をしたらあんなことしないといけなくなるのか」


「そうだね~なんか樽の中に入ってる人とかいるし…」


樽?なんだろう。なんか一貫性の無い世界だな。


「食べ終わったら早く学校行きなさいよ。


ゆうなちゃんもはるま君も、テストの点数悪いわよ。

もっとちゃんと授業聞きなさいね。正解の平和はその後よ!」


「は~い」


父さんに行ってきますと言いながら、線香に手を合わせて学校まで走った。


教室に行くと同級生が話しかけてきた。


ゆうなちゃんのキーホルダーを壊した奴だった。


「なに?」


「あのさ。ちょっと相談があるんだ…」


「いま?いや…放課後、ジュース奢るから帰りに…」


「いいよ、わかった!」


俺が普通に了承したのが意外だったのか、

驚いた顔をしながら急に明るい顔になった。



放課後、彼と話をするためについて行く。


自動販売機で買ったジュースを渡しながら、言いにくそうに口を開いた。


「あのさ。最近精霊の力が少し怖いんだよ」


「精霊の力は元々怖いよ。この強さは覚悟が無い人間が使うべきじゃない」


「それはお前にやられてから、わかったんだよ。


だから反省した。


うちの父さんにも母さんにも注意しないといけないって話してさ」


「じゃ使わなきゃ良いじゃん」


「いや、なんていうか定期的に出さないと、精神的につらいって言うか。

しんどくなるんだよ」


「閉じ込められた精霊は拒否反応を示す。

お主らも箱に閉じ込められたままは嫌であろう?」


「あ、そういうことなのか!

じゃあそれはそれで良いんだ。定期的に出してあげるってことで…」


「出すのに問題があるってこと?」


「あ、ああそうなんだ。


なんだか強くなってる気がして…


なんて言うかな、軽く川で出したら津波みたいになってさ。


こんな力を制御出来ないと怖いって言うか」


だから言っただろボケがって言いたかった。


でもそう言うと、相談してくれなくなるかもしれない。


怒りをぶつけるよりも大切なことを考えろって父さんも言ってた。


「強くなったからって、調子乗らないの偉いじゃん。流石だね」


顔が柔らかくなったのを感じた。


やっぱり父さんのアドバイスは大切だな。


「最近精霊の力が強くなっていたのは感じていた。その影響やもしれぬな」


俺は呆れた。


「そういう話ははやく言ってくれよ。大切な話でしょ!」


「主が何を大切な話だと思うかなど我にはわからぬよ。


まあ次からは何かに気が付いたら出来るだけ話そう」


「よろしく頼むよ。


それでさ、イフリートは俺が殺さないでって言ったら殺さないし、

出して欲しい火力を出してくれるよね?


そういうコントロールって誰にでも出来るの?」


「そうだな。そこな人間にも出来るが、精霊を扱うには魔力が足りておらぬ」


「本人の魔力が精霊をコントロールする力になるってこと?」


「そうだな。マーリン殿は魔王軍のエリート、

魔力では魔王にも迫る素質ゆえ、問題になることは無かったが…」


やっぱりマーリンってすごいんだな。

精霊王二柱と契約!スゲー!ってほど単純な話じゃないんだ。


「それは訓練とかで出来るんですか?」


「出来るであろうな。訓練の方法を教えよう」


イフリートが魔力の扱い方、鍛え方を伝授してくれた。


人を傷付ける前にコントロール出来るように、しっかり訓練すると約束してくれた。


「他のやつらにも教えるよ!じゃないと誰かが誰かを傷付けたあとじゃ遅いからね!


でも、今となったらはるまの言うことわかるよ。

何も知らない人間がどんどん能力に目覚めるなんて、駄目なことだったね」


「それがわかってくれたなら良かったよ!」


俺は、だから言っただろうボケがって言わなくて良かったと心の底から思った。


あの女性と会話が成立するとも思えないけど、こうやって話せばもしかしたら…



家に帰ると、しおりんが来ていた。


ゆうなちゃんと天狗と三人で話をしていた。


「じゃあ、私達が三つの世界を変えたことが、

現実の世界に力を与える原因になったってこと?」


なんだって?


「どういう理屈だよそれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。