第78話 ゆうなと次なる世界
「やった~!これ全部食べて良いの?」
起きた瞬間、たくさんの人がたくさんのスイーツを運んできた。
「ゆうな様、蘇られたこと大変うれしく思いますぞ。
はるま様も早く起きて頂ければ良いのですが」
「はるま、君は、まだ、寝てるんだね」
私は大量のどら焼きを口に放り込みながら話した。
この姿をママに見られたら怒られるだろうな。
パパなら笑いながら見ててくれると思うけど…
食べても食べても無くならない。
周りにもたくさんの食べる人たち。
「食べられましたら、何か遊びになられますか?
プールにゲームセンター、スポーツ施設とあらかた揃っておるとは思いますがの」
「プール!ゲーム!ゲームしたい!」
「では、こちらにどうぞ」
途中大人たちが熱狂してる場所を通った。
あれは…ギャンブルかな?
それにみんなが飲んでるのは…たぶんお酒だ、パパが飲んでたから知ってる。
それから私はゲームをしながらおやつを食べてゴロゴロして過ごした。
「凄い!これは天国だ!」
「その通りですじゃ。
ここは人の快楽を形作る世界、心行くまでお楽しみください。神の子よ」
神の子?パパが神になるっておねえさんが言ってた。
そういうことかな?
私はその日ダラダラするだけで過ごしてそのまま眠ってしまった。
起きると、はるま君はまだ寝ている。
「天国から帰ってこないつもりじゃないだろうな」
私はそう言いながらリビングへ行くと、はるま君が起きてきた。
「おはよ~なんか次は変な世界だったね」
変な世界?といえば変な世界だったのかな。
「変と言うか...私はゴロゴロしながらお菓子食べて終わった」
「何それ!俺が知らない女の子に食われそうになってる時に!ずるい!」
女の子に食われるって何?はるま君はケーキに転生したとか?
「知らないよ~何それ女の子に食われるって、怖い」
私がジュース飲んでる間も、ずっと喉が渇いてたなんて、
はるま君じゃなくて良かった。
ママに早く行きなさいと怒鳴られて、線香に手を合わせた。
パパにもおいしいものを食べさせてあげたいなと思いながら、
行ってきますと学校へ走った。
今日の学校は最悪だった。
テストが全然出来なかった。
何故歴代の聖女は連立方程式を知らないのか…
図形の知識ぐらい持っていてくれても良さそうなものだ。
夜寝る時間が近づくと、私は嫌なことを忘れるためにもあの世界に早く行きたかった。
「はるま君!早く寝るよ!スイーツが私を呼んでるの!」
「いやだなあ。あの世界行きたくないなあ」
「泣き言言わないの!あの世界が私達を呼んでるよ!」
そう言い私は電気を消した。
起きると…また?
棺桶に閉じ込められている?
いや手足は動く、水亀が置いてある。
生きていける状況が整ってる部屋のような。
でも、スイーツは無い。
ジュースもない。
とりあえず出ないとと思い扉を探した。
どこにもない。
天井は…押し上げられそうだが重たい。
重い天井を必死で押し上げる。隙間が出来て天井をずらす。
顔を出すと、そこには大量の樽が並んでいた。
私が入ってるのも樽だ。
なに?これ。
別の樽に飛び乗った。
開けて見ると…おじさんがにらんでいる。
「何してるんですか?」
「勝手に開けるな!人とのかかわりなどいらぬ、邪魔をするでない!」
怒った老人はすぐに天井を閉めた。
また怒られると嫌だから、私は他の樽は開けずに樽から樽へ飛びながら移動した。
なにこれ?樽の世界?
どこまで行っても樽、樽、樽、終わりが無い。
数人の樽の上に座る人を見つけた。
その中の一人に話しかけた。
「ここはどういう世界なの?」
「話しかけるな!人との関わりなど人の生に不要じゃ!」
また怒られた。
何かむかついた私は、さらに話しかけた。
「なんで話すの嫌なの?友達いないの?」
「友達など不要じゃ!嫌いなのではない!会話など不要だからじゃ!」
不要だからいらない。必要なことだけする?
なんだかアマテラス社会を思い出した。
ここの人を樽から全員引っ張り出したら解決する?
いや、なぜかはわからないけど、はるま君が聞いたら怒りそうだ。
だから、辞めておこう。
「疲れた~!どこまで行っても終わらない~!」
「うるさいぞ!」
どこかの樽から声がした。
なんか怒りっぽい人達だなあ。
「あ、しまった!」
自分の樽がわからない。
戻る場所がわからないし、どこで寝れば良いのかわからないな。
どっかの樽の上で寝れば良いか。
どうせこの人達出てこないんだし。
そう思った私は一日樽の上を飛び跳ねた疲れもあって、すぐ眠りについた。
起きて朝ご飯を食べていると、はるま君が起きてきた。
あれはやっぱり、はるま君にも理解出来ない不可解な世界なんだ。
「俺も、女性を助けたら怒られたよ。
私は救われたいんだって、あの人はどんな罪を犯したのか。
何をしたらあんなことしないといけなくなるのか」
はるま君は誰か助けたんだ。
助けても怒られるんだ。
それじゃ話しかけて怒られるのも無理ない。
罪から救われたい?
あれは牢獄みたいな物なのかな?
ママにテストの点数で小言を言われながら、
いつも通り線香に手を合わせて、パパに行ってきますを言う。
パパにならあの変な世界も理解出来るのかな。
救えるのかな?
救い?私達が何か救う必要すらあるんだろうか?
あれはあれであの人たちは幸せなのか?
それすら私にはわからなかった。
「ゆうなちゃん待って~!」
学校帰りにしおりんに呼び止められた。
「やっぱりまだお父さんお母さんの許可は得られず?」
「そうなんだよね~能力が何なのかもわかってないのに危ないって」
「そりゃそうだよね~
わかってる私達でも辞めておいた方がって思うことあるもん」
「やっぱり、ゆうなちゃんも反対?」
「どうだろう~一緒に冒険出来たら楽しいだろうけどね!」
しおりんがもっと情報が欲しいからと、
うちにきて天狗さんとお話することになった。
天狗さんは私が差し出したクッキーを嬉しそうに食べる。
「聖女の力も精霊の力も魔力すら、本来こっちの世界に来ちゃ駄目なんだ」
「そうなんだ?でも方法はあったんだよね。元から」
「元々、時折この世界で能力に目覚める存在はいた。
それは小さな小さな力だったんだ。
物を少し動かすとか、紙に書いてある字を透かして見るとかな」
「いわゆる超能力ってことかな」
「そうだ。
あと、おめーらはとても特殊な事例でな。奴の存在が影響した結果だ」
「それ以外だと、自分の中に理の外の物質を取り込んだりして、
回廊を自力でつなぎとめる人間も歴史的には存在する」
「それって物理的に?例えば修羅界にしかない物質を飲み込むとか?」
「まあそういうのもあるかもな。
修羅界にしかない物質はこっちにはねーから無理だけど」
「もしかして、おねえさんがそうかも。
話してくれないけど、あのお腹の傷、何かありそう」
「あ~そうだな。あの女は自力で回廊をこじ開けるタイプだ。
我等は、奴以上にこえー存在だと思ってる」
「おねえさん優しいよ?」
「わかってる。悪い奴じゃねーことは我等もわかってる。
ただ、あの執念はおめーらの父すら超える。
おめーらの父は好きだぞ。それと同じぐらい危険な存在だ。
我等の理解を超えるって意味では、あの女の方がやべーってだけだ。
奴がおめーらに敵対しない以上、我等も敵対しないから安心しろ」
「それはわかった。
じゃーなんで、今こんなに能力者があふれるようになったのかな?」
「それは…」
「何?」
「まあここまできたら、良いか。
おめーらが三つもの世界を変えた。
そのおめーらの成長が、回廊全体を広く広げることになったんだ」
「じゃあ、私達が三つの世界を変えたことが、
現実の世界に力を与える原因になったってこと?」
「どういう理屈だよそれ!」
振り返るとはるま君が帰ってきてた。
そう、どういう理屈なんだろう。
私達が回廊を広げた?
そもそも私達にそんな力があったの?




