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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第二章 幸福

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第70話 ゆうなと新生ノイジー

私は馬鹿だ。私は馬鹿だ。私は馬鹿だ。


あれだけの啖呵を切っても何も出来るわけじゃない。


レイが居なくなったことを悲しむだけのミオとセナに憤ったのは確かだ。


でもあんなこと言わなくても良かった。


一緒に頑張っていこうと励ます気持ちすら出ないほどイラついた。


きっとそうじゃない。


結局自分がレイを犠牲にしなくても、

良い方法を考えられなかったことにムカついてる。


答えは一つじゃ無いなんて知った口を聞きながら、

私は結局最悪の答えしか出せなかったんじゃないか。


今、やるべきことはわかってる。


でも何も思い浮かばない。


ここからレイの思いを受けて何をすればいい?


はるま君の言うようにライブ?


こんな気持ちで?


楽しくなんかならない。


二人と手を取り合う未来も見えない。



とりあえず、頭を整理しようと食堂に来たけど、

どんぶり一杯を食べ終わった所で手が止まる。


食欲がわかない。


目を瞑り考える…


考え続ける。


でも、思いつかない。


何も…何も思いつかない。


地獄の底にいるみたいだ。


パパに助けて欲しい。


パパならなんて言うかな?


「友達と力を合わせなさい。嫌なこと言ったのがゆうなちゃんなら謝りなさい」


そうだ、きっとパパならそう言う。


私にも主張はあるが、悪い所もある。


「ごめんなさい」


とりあえず謝ってそれからだ。


そう言いながら目を開けると、

ミオとセナが笑いながら見てる。


「え?いつのまに?」


「それ、私達に言ったの?」


「悪い所もあったと思うからね。二人も悪いけど」


「そうね。私達もごめんなさい。


言われてわかったわ。


レイは死んでない。


レイが無駄死にしたのか。


世界を変えるためにカプセルの中で戦ってるのか。


それを決めるのは私達の今後だって」



「でも、何をするべきかなって。

本当にわかってないの」


「私だってわからないけど、

とりあえずはるま君が言ったみたいに、

ライブしようか」


「歌いも踊りもしないはるまに言われてライブするのも気にくわねーけど、

今出来ることそれ以外に思いつかねーしな。


追悼ライブじゃねーぜ。


レイが舞台に立たない新生ノイジーの出発式だ」


「そうと決まれば、まずはリハーサルしようか!新しい歌割りも考えないと」


「ゆうなはどっちにしても歌覚えてねーから歌割りしても変わんねーな」


「それは練習時間も無しに舞台に立たされたから!」


ミオもセナも笑ってる。



セナもミオも楽しそうに踊ってる。


私は本当に馬鹿だった。


悲しいに決まってる。


付き合いも長いんだし、私なんかの百倍辛いだろう。


でもレイの意思を次いで最高にノイジーしてるんだ。


今回も結局私は、やると言っていないのにステージに立っている。


ノイジーのライブに関しては最初から最後まで私は受け身だった。


でもやる気が無いわけじゃない。


私も続かないと、一緒にこの世界を作り変えるんだ。


楽しい未来があふれてくる。


心と共に聖女の記憶があふれる。


やっぱり聖女は歌と踊りが好きなんだ。


レイのパートはミオとセナに振り分けられた。


セナのハスキーボイスが、とても澄んだ綺麗な歌声に代わり青空に響き渡る。


まるでレイが歌ってるような。


は?声がまるで違う?


私はそう思いながらセナを見た。


歌って…いない?


歌はスピーカー、録音?違うこれは新曲でレコーディングしてない。


何が起こっているのかと、ミオが見上げる方を見た。


レイが青空に映し出されている。


録画じゃない。


でも今はそんなことどうでもよかった。


私は自分のパートを歌う。


楽しい!なぜかなんてどうでも良い。レイと歌えてる。


その気持ちが心の底からあふれ出す。


楽しそうに歌うセナだけど、その声は震えてた。


嬉しそうに泣くミオの歌声は最高にハッピーだった。


私は楽しい!


やっぱりノイジーは最高だ!


作業してる人が涙を流す。


道行く人が足を止める。


つい最近まで敵対してた兵隊さん達が歓喜の声を上げる。


大歓声の中、私達は夢中で歌い踊った。


リハだけど、最高の舞台になった。


「みんな~楽しい舞台をありがと!」


レイが話してる。


「凄いね。ナナヨさん!こんなことまで出来るんだね」


はるま君の声が、ナナヨさんを見るとナナヨさんは鼻が高そうに微笑んでる。


「これ、ナナヨさんがやったの?どうやって?ううん、これはレイなの?」


「そうよ。スサノオになったから出来るかなと思って、やってみたら出来たわ。


管理者が十人になったおかげで一人一人の領域が解放されて自我を外に向けることが出来るようになったの。


私が記憶を失わずに外で行動出来るようになったのと同じね」


私は、恐る恐る聞いてみた。


「じゃあ、パパ、いいえ開発の中心になった彼という人物にも会える?」


「それは無理ね。


彼は全てを統括する立場だから彼が外に出たらスサノオの機能が著しく損なわれてしまうの。


一時的にスサノオを止めれば可能だけど、彼がそれを拒否してる。


あなた達と話をするつもりはないみたい。

ごめんなさいね」



それから私達と、ノイジー、アマテラス社会を支えた軍や行政関係の人達を集め、

ナナヨさんから様々な話を聞いた。


「彼…いいえ私達は理想の社会を作りたかったけれど、

人をコントロールする気は無かったのよ」


「我々はアマテラスを神だと思っておりました」


「そう思わせたのがそもそも私達の間違いね」


ナナヨさんの話は、アマテラス社会の根幹を揺るがすものだった。


「でも、誰も間違えてはいないのよ。ただコントロールしきれなかっただけでね。


この話は深堀しても仕方ないから、前提条件として伝えただけよ。


本命はここから、スサノオとなった私達は、

レイと言う新たな管理者を迎え入れ次の局面へ向かう」


「アマテラス社会が間違えていないのなら、

スサノオに変化する必要も無かったのでは?」


そう所長が口を挟むと、ナナヨさんの目に殺気が見えた気がした。


ため息をつきながらナナヨさんが話し続けた。


「あなたのそういうところ、間違ってないからあなたは所長にふさわしい」


「光栄ですな」


「でも、あなたのそういうところ、私は殺してやりたいぐらいむかつくのよ」


「な、そのようなことを申される筋合いは!」


「これから少し融通を聞かせて改めなさいと言っているの。


あなたのことは、この社会の長として期待してるのだから」


所長はそれ以上突っ込まず複雑な顔をして、聞き続けた。


「あなたの合理的な考え方はアマテラスの象徴だった。


それ自体は必要な資質よ。


でもこれからのスサノオは非合理を受け入れないといけない。


人に配慮し、人の社会を人が暮らしやすいようにしていく。


あなたにはその配慮が出来る人間になって欲しいの。


この世界に来たばかりのはるま君が、

世界に必要だと言う理由だけで説明もせずに、

着替えろ、検査をさせろ、と傲慢に対応するあなたじゃ駄目」


「それは!いや…反省致します」


「私達には人が熱狂し楽しい人生を送る術を考える力が足りていなかった。


だからレイを受け入れ、

人が人として暮らしていくために何が必要かを学習する必要があったの」


「だから私達ノイジーが必要だったのよ」


レイのホログラムが現れ話続けた。


「これからもこうやって会えるの?」


「私の脳はスサノオの処理にほとんど使われてるの。


会って話が出来るほど自我を保てるのは、ほんの少しの時間なの。


ライブの出番ぐらいは頑張るわ!」


セナもミオもすごく喜んでる。


「アイドルは始まりよ。

これからはスポーツや趣味もたくさん認める社会にしていく。


ただし、アマテラスの合理性は正しかったと思っている。


心を病むアイドルや、挫折して人生を狂わせる選手が出ない社会は継続しないと」


「それはそうだけど、ある程度の挫折や苦しみは、

人が成長するために必要なんじゃない?」


「そうよ。だから私がこれからも世界を見て、

あなた達の声に耳を傾けてアップデートしていくわ」


ここでようやく私は確信が持てた。


レイは仕方なく犠牲になったんじゃない。


自らの意思で、この世界に変革をもたらしたんだ。



その夜、私達三人は深夜まで、

レイがやりたかった十万人ライブの構想を練りあった。


ワクワクする最高のライブを大成功させるために、

疲れて寝落ちするまで語り合ったんだ。



そして1か月が経った。


あの日、寝落ちしてから私はあの世界に戻れていない。


でも、レイを中心に三人で楽しいライブを開催してくれただろう。


それを信じて、私は私の楽しいをこっちで続けている。



―― 第二章 完 ――


スサノオの誕生。

新生ノイジーの十万人ライブ。

人々は希望の未来を夢見るようになった。


力で解決出来ない苦しみを知り、

乗り越えたゆうなとはるまが見せる成長が、

現実の世界を混沌に落としていく。

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