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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第二章 幸福

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第69話 はるまと世界を変える力

「私だけでもレイと新しい世界を作るから、

悲しんでるだけで何もしないミオとセナは辞めても良いわよ?」


「な!ゆうなちゃん!それは!」


ふさぎこんでいたミオとセナが顔を上げる。


でもその顔に覇気は無い。


立ち上がるとトボトボと部屋を出て行こうとする。


「ゆうなちゃん!そんな言い方無いだろ!二人だって…」


「関係ないでしょ!レイが命を懸けて世界の為に動いた。


許せようが許せなかろうが、悲しかろうが、

その思いを次いで立ち上がるのがノイジーだと思ってた。


自分達だけ悲しんで、私は悲劇のヒロインになんてならないから!」


セナが力なく答える。

「悲劇のヒロインだなんて思ってない。悲しいのかすらわからない」


大粒の涙を流しながらミオは黙り続けた。


「レイの思いを次いで次に進む人間にしかレイのこと悲しむ資格なんてない!」


「あんたに…つい最近加わったあんたに…」


セナの手が震える。


「あんたにレイの死をどうこう言われたくない!」


「だからそれが違うって言ってんでしょうが!」


セナとミオの肩がすくむ。


「いつレイが死んだって?死んでないでしょうが!


そんなに死んだことにしたいなら、

あのカプセル引っこ抜きなさいよ。

火葬して灰にしてから言いなさいよ!


いま…」


激しく怒鳴り散らすゆうなちゃんが声を詰まらせる。


「いまも、レイは戦ってんでしょう…なんでみんなここで止めようとするのよ!」


大粒の涙を流しながらも、毅然とした態度のゆうなちゃんに誰も声をかけられない。



そうだ。


今回俺は何も出来なくて、モブだと思った。


でも違った。


俺は、今回のことに結論付けて終わろうとしてた。


何も出来なかったからじゃない、何もしようとしてないからモブなんだ。


「なあ。セナとミオに提案なんだけどさ」


二人はこちらを向くが、返事は無い。

二人とも怒ったせいか、少し話が出来る顔になってる気がする。


「最後にライブやらない?ノイジーの残った三人でさ。


それを追悼ライブにするのか。


レイを永遠のメンバーだと発表して、再出発するのかは二人が決めたら良いよ」


「私はやらない。レイが頑張ってる今しか出来ないことがあるはずだから」


そう言い残して、ゆうなちゃんが部屋を飛び出す。


「私達は…」


セナとミオも顔を合わせたまま黙った。


これは…俺はやっぱり何も出来ないのか?



いや違う。

最初からそうだった。


畜生の国で俺に出来たことなんてない。


アリシアさんやアーサーさん、シルビアがいたから世界は動いた。


魔王が、恐竜が下準備した世界だったから成し遂げられた。


修羅の国でだってそうだ。


俺がやったのはただの人殺しだ。


ルーナがいたから、ベルナがいたから、あの世界は一つになれた。


この世界で力が通用しないから俺は役に立たない?


「はっ、笑わせる。最初から俺に出来たことなんてないじゃないか。


じゃあ、俺がやれることはなんだ?


人の助けを得ることだけだろ」


そう言うと俺は、駐屯していた防衛軍の隊長に頼んで管理棟へ戻ることにした。



管理者達の部屋。


一人寂しそうにお茶をするナナヨさんが居た。


「ナナヨさんは、これからどうするの?」


「案内役としての私の役目は終わったわ。


これから先、私に出来ることは何もないわ。


アマテラスは既にスサノオとしての進化を終えている。


スサノオの手足となって、彼らを見守ることが私の仕事よ」


「そもそも、なぜナナヨさんなのか気になってたんだ」


「どういう意味?」


「九人の中で唯一インターフェースを持つ存在として、

外部との接触を許された存在。


何故それがナナヨさんなの?」


ナナヨさんの顔色が一瞬で変わり、机を叩きつけて叫んだ。

「それは、私が一番研究員の中で若くて無能だったからよ」


「俺さ。違うと思うんだ。


アマテラスが完璧なんて管理者の誰もが思ってなかったんじゃないかな?


いや、少なくとも責任者の彼は、そうじゃなかったはずだ」


「なぜそんなことがあなたにわかるの?」


「彼が、俺の知る人と魂を同じくする人だから、

その人なら完璧な物を作りだしたなんて言わない」


そう、父さんなら、絶対にそんなことはしない。


完璧が存在しないから、最初から更新していく、

作り変える仕組みを用意するはずだ。


「あなたは、外部へアマテラスの意思を伝え、

外部からアマテラスへ情報を供給する役割を負っていたはずなんだ」


「それはないわ。


彼らがそれを望んでいたなら、間違いなくその役割が彼が担っていたはず。


私なんかにそんな重役を任せるはずないわよ」


「そんなわけないだろ!


たった九人の世界を作り変える研究を行ったメンバーの一員なんだろ?


それが、例えお茶汲みだったとしても、能無しを置いておくわけないだろ」


「それは…でも私は専門的な機能は何も作っていない。

他の八人にはあった専門的な知識がなかったんだもの」


「だからじゃない?


全てを総括して外部とつながる役割を持たせたのは、意味があったと思うべきだ。


とりあえず一番下っ端にしとこうか。


なんて馬鹿な判断をする馬鹿の集まりじゃないんだろ?」


「そう…なにかしら。でも、私に何が出来るのか。


彼なら人々を導く存在になれたかもしれない。


そう…彼なら…」


ナナヨさんが何かを振り切るように首を振る。


「やっぱり、私には無理よ。


彼のようなことが出来るわけがない。


他の七人の管理者だって、彼の発案だから協力したの。


彼には世界を作り変える何かが最初からあったわ」


「確かに、ナナヨさんには人を導くことも、世界を変えることも無理かもね。


でもさ、導くって発想が間違ってるからこその、ナナヨさんなんじゃない?」


「とりあえず国のえらいさん。所長達と話して欲しい。ノイズのリーダーとも。


彼らが何を感じ、何を望むのか、スサノオが何を与えるべきなのか」


「わかったわ。どうせ暇だもの。


話すぐらいなら、やってみるわ。


でもね…」


ナナヨさんは最初の自信満々の顔になり不敵な笑みを浮かべた。


「記憶を失ってたからじゃないの。


私は、あの所長を殺してやりたいと思うぐらい嫌いなのよ」

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