第64話 はるまと知るための方法
目の前にあった、大きな木が大きな音を立てて倒壊した。
力任せに殴った。
魔力がこもってたのか、イフリートやベヒーモスの力かわからない。
何も考えられないほど、俺はイラついていた。
ナナヨさんに聞いても、情報が一切増えない。
この人は本当に何も知らないんだ。
最初はおねえさんだと思ったこの人が、今は完全にモブにしか見えない。
いらつく。
きっと、父さんは何もわからないところから、
一人で何かを探して見つけ考え行動してきたんだ。
あ~!父さん!俺にはそんな力ないよ!
父さんの力の一部で良いから使わせてよ!
なんでだ!俺には父さんの力遺伝してないのかよ!
何をすることも出来ず、周りに当たり散らしてる自分が、
最高にダサくて最低だと思った。
次の日、起きて朝食を食べていると、ゆうなちゃんが起きてきた。
ゆうなちゃんの能天気な顔までムカついてきた。
俺は最低だ。
ゆうなちゃんだって同じ世界にいるんだ。
悩んでないはずがないのに、そんなことも考えられなくなっていた。
ゆうなちゃんが隣の部屋でしおりんと盛り上がってる。
その声さえむかつく、いやあの世界のことを相談してるんだろう。
能天気なわけじゃない。
なんか全てにむかつく。
しばらくして、ゆうなちゃんが入ってきた。
「な!あのロケットランチャーゆうなちゃんが撃ったの?
使い方わからずに反対向けに?」
さすがに笑った。
俺はずっとあの軍人達のせいだと思って責めてた。
そうだ、それが駄目なんだ。
俺が理解出来ないのは俺のせいだ。
誰かに解決してもらおうなんて、笑わせる。
考えろ。頭の血管がぶち切れるまで考えろ。
「あ~あそこが空だったのは天井にね…」
「え~何それ~探す場所が違ったのか~」
「んで?はるま君は何に悩んでるの?」
俺は、ゆうなちゃんに理解出来るわけないと思いながらも、
人に話すことで整理出来ることもあると事細かに話した。
「父さんだったらどうしたかな~」
「あの…さ?」
「ん?」
「パパならっていうか、私ならね。
アマテラスに聞いてみるかな」
「ん?何を?」
「どういう仕組みで動いてるの?って」
「え?」
「え?」
「いやでも、教えてくれるわけ…」
「いやでも、別に隠してないんでしょ?だれも」
「そうなのか?」
わかってる。そうだ。誰も何も隠してないってのは俺が感じた話だ。
「パパだって、考えるより情報を集める方が先だっていつも言ってたよ?」
「そうだ。そうだった。考える前にまず知り得る情報を全て掻き集める」
「でも…なんだろう」
しおりんが言う。
「ゆうなちゃんは短絡的過ぎる時があるけど、はるま君は考え過ぎる時があるよね。
足して二で割る。今はゆうなちゃんの言う通り、
とりあえずやってみた方が良いと思うよ」
たぶん、今俺は自分が馬鹿だとわかってそれを認めない理由を探してる。
「そうだね。そうだ。聞いてみるよ」
「失礼な!私も考えてますよ!本当に今回頭がパンクしそう。
どうなったら良いのか。全然わかんない」
「それ俺も思ったけど、
アマテラスが無くなることは絶対にゴールじゃないと思うんだよ。
事故も犯罪も無い世の中を作ってることは間違いなくて、
ノイジーって人がノイズってテロ組織を動かしてもノイジー殺すってならないし…」
「ノイジーってアイドルグループだよ?」
「は?なにそれ?」
「話聞いてた?ノイズってグループの中心にいるアイドルがノイジーだよ」
「は?あれ?戦闘で戦ってたゆうなちゃん含めた四人ってこと?」
「そうだよ」
「え?どういうこと?四人のアイドルを中心に広がるテロ組織?
それと戦う政府軍に制圧の意図はなくて…
それって…」
「そう言われてみれば、映画とかのエンターテイメントショーみたい」
それだ。しおりんの言葉がやけにしっくりくる。
俺が感じてた違和感はそれだ。
なんかエンタメ感があるんだよ。
「そうだ。なんで戦車の前に立ってたの?
戦車同士の戦いに、ゆうなちゃんが間に入ったら危ないことぐらいわかるよね?」
「なんでだろう…当たり前にそうなってたから?」
「いや、駄目だよね?馬鹿なの?」
「はるま君…その言い方は…」
「いや、これ本気の話で、絶対駄目だよ?
命懸けの戦場に居すぎておかしくなった?
自分達だけ死なないとでも思ってない?」
「思ってない…いや、思ってたかも…そこまで考えてなかった…」
「ゆうなちゃんが危険な目にあったら、
俺はあの世界が滅ぼうとも力をふるうよ?
ちゃんと考えて行動してね?」
なんだか父さんみたいなこと言ってる。
父さんはいつも言ってた。
俺がいじめられたとしたら、
相手が転校して教師が辞めるまで徹底的に戦うって…
そういえば、ゆうなちゃんがそれを言われた時に…
ゆうなちゃんは、優しいからそんなこと言われたら言えなくなるわよ。
ってママが怒ってた。
「ごめん。とにかく気を付けてね」
「わかったよ。はるま君ありがとう」
あれ?いじめ?
なんか、引っかかる。
俺は何に引っかかってるんだろう?
PC98、父さんの器が関係してることは間違いない。
少なくとも俺の中で父さんといじめは絶対に結び付かない。
でも何かひっかかる。
俺がいじめられたらの話の時に、父さんは何を話してた?
思い出せ。
「父さんがさ、いじめがなんで起こるかって話してた。
俺達がいじめられてたとしても、
恥ずかしくも、俺達が悪いわけでもないから相手のためにもすぐに言えって…
なんでだっけ…?」
「いじめっ子は心の病気だから、カウンセリングを受けさせてあげたり、
大人が見つけてあげないといけないんだってやつ?」
「そう、それ…
そもそもいじめの発端は…」
「いじめっ子の暇つぶし?」
「それだ!
ムカつくとか、嫌いとか、嫌なことされたとか。
理由をどれだけ並べたとしても、他に熱中出来ることがない暇で乾いた心が、
いじめなんてくだらない暇つぶしを誘発するんだって…」
「それが?」
「いや…なんだろう?
なんか引っかかってたんだ。
でも、だからなんだろう?俺は何に引っかかってたんだろう?」
しおりんが腑に落ちない顔でつぶやく。
「はるま君は、今のノイジーと政府の戦いをそういうレベルで見てるってことかな?
でも、それじゃアマテラスの思考原理が見えない。
政府がアイドルって存在を気に入らないと思ってる理由が、暇潰しだったとしても、
アマテラスがそんなこと考えるって、ちょっと人間味がありすぎるって言うか、
AIがいじめの首謀者にはならなくない?」
「そうだよな~。やっぱりわかんない」
「だから、聞いてみたら良いんじゃない?それしかないよ」
「そうだよね。なんで聞かなかったんだろう」




