第54話 はるまと神を管理する者達
これは…ゆうなちゃんが入ってた棺桶の中?
今度は俺が閉じ込められてる?
最悪だ…首も動かせない。
音も聞こえない…いや何か聞こえる?
耳を澄ませる。
ゴォォォ……
モーター音?
突然自分の入っている何かが動き出すのを感じる。
ガコンッ!ガーーーゴン!ガンッ!
止まった瞬間、プシューーッ!大きな音と共に蓋が開いた。
強烈な光で目が開けられない。
「誰か?いるの?」
「本当に変わってる!あなたがはるま君ね!」
イフリート!ベヒーモス!危険が無いか注意して!
意識の中で反応だけは確認出来た。
目を閉じたまま身体を起こす。
「俺は確かにはるまだが…
誰だ?
ここはどこなんだ?」
おぼろげながら周りが見えるようになってきた。
「あ、おねえさんか」
おねえさんがいるってことはここは現実…というより元の世界?
「知ってるおねえさんに似ている?
私は、ナナヨ。会ったことは無いはずよ。
ここは月読研究所と言ってね。
人類の叡智を結集して、八百万の神々を顕現させる研究をしているの」
またか。その一言だけ聞けば十分だった。
ここは今まで渡ったどこの世界とも違う。
ここがどこかはわからないが、
四つ目の世界に呼ばれたってことだけは確信出来た。
また一から情報を集めて、何をするのかを探さないといけない。
その緊張感と同時に、修羅の世界が良くなっていく予感に安心した。
ゆうなちゃんのことはもちろん一番大切だけど、
今は聖女の力もあるし、少し安心出来ている。
ナナヨさんからおねえさんを感じる。
この感じ…おねえさんが父さんを、恐竜が魔王を、ルーナはシグルズを…だとしたら
「ナナヨさんは、誰かに命懸けで仕えてたりする?」
「最初に聞きたいことがそれ?
私は、確かにここの研究員だから所長に仕えてはいるけど…
別に命はかけないわ。あれが死んでも笑って葬式に行けるわね」
バンッ!
扉が勢いよく開かれた。
白衣姿の人を十人程従えた偉そうな男が入ってきた。
「ふむ、これがはるまか」
「所長!そんな言い方は!」
ナナヨさんがそう言ってくれなければ殴ろうかと思うほどむかつく男だった。
駄目だな。
修羅の世界に1年以上もいたからか、
畜生の世界での食わないなら戦わないって教えが薄れてる気がする。
「黙っていてもらおう。
君にどうこう言う権限は無いはずだ。
さて、はるまよ。
君には私の研究に協力してもらうことになっている。
すぐにこれに着替えて検査させてもらうよ」
そう言うと、手術される人が着るような服を投げて寄越した。
とりあえず様子を見るために言うことを聞いても良いんだが、
ちょっとイライラが頂点になりそうだ。
ひとまず無視してナナヨさんに話しかける。
「ナナヨさん。ゆうなちゃんって子はどこにいるだろう?」
「時間が無いのだ。そんなことは後に、」
「黙れよ!」
身体の中にあるであろう魔力を解放する。
その場にいた全員が凍り付いたように口を開けなくなった。
ナナヨさんがなんとか答えてくれた。
「ゆうなちゃんという子が入っているはずのカプセルは反政府組織に強奪されたの。
彼女は大切な存在のはずだから、
もしかしてここより丁重に扱われてるかも」
俺は魔力を押さえて礼を言った。
「ありがとう。
おねえさんの…いやナナヨさんがそう思うのなら、とりあえずは信じるよ」
「も、問題は解決したかね。なら今度はこちらの…」
「お前とはしゃべってねーんだ!とりあえず黙れよ!」
「あ、がっ」
所長は何かを言おうとしたが、
喉を詰まらせたように言葉にならない。
顔色だけがみるみる青くなっていった。
「あんた達と無駄に敵対する気はないんだ。
俺はゆうなちゃんの無事を確認したい。
ゆうなちゃんに会うために力を貸すなら、
目的によっては手を貸しても良いよ。
ただし、俺の担当はそこのナナヨさんだ。
今のところ、他の人と交渉したりする気はない。
イフリート!ベヒーモス!」
俺の後ろに現れた異形を見て、所長はその場にへたり込んでうなずいた。
脅した方が手っ取り早いと考えてしまっている自分に少し嫌悪感が無くもない。
でももう世界に振り回されたくはないという気持ちも大きくなっていた。
それぐらい修羅の世界でゆうなちゃんを追いかけた一年は辛かったんだ。
そのあと、全員出て行ってナナヨさんだけが残ってくれた。
「で、ゆうなちゃんのことを聞きたいんだろうけど、
その前に少し話をしても良いかしら?」
「大丈夫だよ。聞くべきことは聞くから」
「私達は今、八百万の神々を現世に顕現させる計画を進めているの。
イザナギとイザナミを原初の神として、この世界に平穏をもたらせるって話ね。
あなた達が、そのイザナギとイザナミなのよ」
「なんだそれ、人工の神様を作るってこと?」
「そうよ。あれを見て」
そう言ってナナヨさんは窓の外を指さした。
綺麗に整った街並み、同じ形のビルが見渡す限り広がっている。
「同じ光景が四方に広がってるんだけど、あれは全部コンピューターよ。
これらのコンピューターは全て一つの処理、人工的に作られた神を構成してる。
法律を作るのも、人を裁くのも、国家の運営すら、
その人工神、アマテラスが行っているの」
「な、コンピュータに人間が支配されてる?」
「いいえ、人を幸せに導く目的のために完璧にコントロール出来てるわ」
それは…幸せなのか?
「そしてその神が導き出したの。次なる神は、あなた達が生み出すと」
どういう理屈だ。
コンピュータが俺達の存在を認識してる?
俺達自身も認識出来ていない、回廊の外から移動してきた存在を?
「とりあえず納得出来ないことはたくさんあるけど…
先に、ゆうなちゃんが無事だと思う理由が聞きたいな」
「反政府組織は私達とは違う解釈をしてるの。
今のこのコンピュータ管理の世界を終わらせて、
あなた達が次の時代を始める存在だと思ってる」
「なるほど。
ゆうなちゃんが次の世界に必要だから、危害は加えないってことだね。
そこまでわかれば、ひとまずは安心出来た。
じゃあ反政府組織を探そうって言いたいところだけど、
まずは俺達に何をさせたかったのか聞いておこうかな」




