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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第一章 輪廻

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第53話 ゆうなと新たなる世界

「では、肩がぶつかった者は死刑でよろしいですかな?」


治安維持を担う王が当たり前のように発言した。


「それはやりすぎです!

死刑が許されるとしたら、

他者を殺した者、国家転覆をはかった者のような大罪人だけです」


「その大罪の基準が我々にはどうも…」


ベルナさんが頭を抱えている。

法律作るって大変なんだなあ。

課題は多そうだ。


「やはり、今まで戦いのみの世界で生きてきた無法者ばかりですので…」


「最初から完璧ってわけにはいかないから、少しずつでいいと思うよ。

人を殺したから死刑ってのも過激だから、

どうしても世界として許しておけない人だけだね」


小さな島に監視施設を作ったり労働施設の建設も決まった。

流刑や強制労働によって、死刑を極力行わないよう配慮する。

殺し合いばかりしてきた人たちが取り締まるから、

当分は逮捕が死体になることはあるかもしれない。


それでも、平和的に解決しようと思えるだけ素晴らしい前進だ。



ルーナさんは皇帝になると決めた最初の会談で宣言した。


「まず私は殺し合いを含めて人を傷付けたり貶める行為を許さない。


阿修羅王決定戦はルールの中で相手を殺すことも許されたかもしれない。

これはみなが殺し合いの世界で生きてきたが故の、

苦肉の策であり殺し合いはこれが最後だと心得よ。


今後は人を殺し序列を決める行為、他者を蹂躙する行為は一切認めない。


序列を決める際は、腕相撲や指相撲、かくれんぼ等、

ゆうな様やはるま様が私に授けて下さった叡智の数々で決めることとする」


「なるほど、わかりました。

序列を決めるは我らの性、それを止めることは出来ますまいが、

殺し合い以外の方法でとのこと承りました」


「治安維持には、人を傷付ける物への対応も含まれましょうな。

その場合は、殺して止めることも止む無しでしょうか?」


「仕方ない場合もあるでしょうが、

そのあたりは法によって厳格に決めていきましょう。

それぞれの部門と協議し法整備を早急に行います。


実務は帝国宰相を務めますこのベルナが取り仕切らせて頂きます」


各国の王は、もっとギクシャクするかと思ったが、意外と受け入れていた。

あの協議ではうちがどれだけ強かったとか、あれはそちらには勝てないとか。

競争が好きなだけで、元々憎しみ合いが無かったから違和感はないんだろう。


ルーナさんの宣言通り、みんなが殺し合う世界を終わりにしようと動き出した。


トップの方針を汲み取り、

それが一番大切な物として共有されている良い雰囲気だった。



しかし肝心の法律がうまく作れない。

こればかりは、慣れない作業だし課題がたくさんあるんだろう。

私達の世界でも、法律が追いついてないとか機能してないことだってたくさんある。


殺し合いを当然とした人にとっては、

肩が当たって相手が転ぶことも、殴ることも、

たいして違いがないのかもしれない。



でも良いこともたくさん見つかった。


電気とか電波の研究をしている国があったので、

大陸全土に通信設備を整える案が出た。

道路の建設も出来そうだし、鉄道も期待出来そうだ。


今まで戦いにしか向かなかった技術や研究が、国の繁栄のために使われる。

確実に前進している。方向性が変わればこれほど変わるんだ。



「課題はたくさんあるけど、まとまる方向に進みつつあるし、

次は東の大陸に行き、支配者とやらとご対面だね」


「安定するまでひと月は見たいと思いますので、それから共にわたって頂けますか?

リヴァイアサンがいるため、安全に航海出来ると思います」


「それは私達も同行するし、

なんとか戦いにならないように東の大陸とも協調していきたいね」



沿海戦を得意とした国の造船技術を合わせて、大きな船の製造が始まった。


数か月かかる航海に耐えられるように、

兵士達が快適に過ごせる設備が数多く詰め込まれた船だ。


「ここで遊んだり出来るね!パーティーも楽しみだなあ」

小さな町のような図面を眺めてるだけでも楽しいとはるま君が興奮している。



あれから愚者とも話をしたけど、やっぱりパパのことはあれ以上聞けなかった。

でも、支配者と会えば何かわかるかもしれないと、それだけ教えてくれたんだ。


「精霊、魔力、神聖力、これらの力は魂に紐付いてるのじゃ」


「そして、同じ精霊が契約してる人は同じ魂の人ってことだよね?」


「それは間違いないが、

例えばサラマンダーはたくさんおるから、同じ個体かの確認は必要じゃよ。

お主らのイフリート、リヴァイアサン、ベヒーモスは精霊の王で特別なんじゃ」


「精霊の王って他にもいるの?」


「精霊王はたくさんおるがの、

お主らの契約しておる精霊王は五大精霊と言ってな。

精霊の中でも特別な存在じゃ」


「他の精霊王は誰が契約してるか知ってる?」


「知っとるが、教えられん」


「パパってことだね」


「それはどうかの。

我等が教えられんのは、お主の父親に関してだけじゃないのでの」


「約定で禁止されてることが、他にもあるんだ?」


「そうじゃな。この話は終わりじゃ」


他のことは事細かに話してくれるのに、やっぱり愚者も約定が絶対だった。


でもたくさんのことを教えてもらって、少しすっきりした。



数か月は進まないかもしれないが、進むべき場所が定まったので、

しばらくは私達もこの国の未来に貢献したいと思う。


「はるま君、起きてる?」


「まだ起きてるよ」


「ルーナさんが言ってたでしょ。


シグルズさんに初代皇帝の椅子を用意しても叱られる。

本当に望んだ未来のためにって…」


「言ってたね」


「パパは私達に何をして欲しいだろうって」


「パパのやったことを調べて振り回されてたら怒られるかもね」


「だよね。きっとパパは私達の人生を歩いて欲しかったんだと思う」


「難しいなあ」


「私達がやりたいことを探さないとね」


いろんな未来に希望を馳せながら、眠りについた。



次の日、起きた瞬間衝撃が走った。

「また?」


前と同じだ。

何かに閉じ込められている。

棺桶?わからない。

音が響かない。指先を動かすぐらいしか出来ない。


「はるま君~!た~す~け~て~!」

叫んでみたがやはり音が響かない。

外に伝わってるように感じない。


これは少し困ったな。

またはるま君が助けてくれるまで待つんだろうか。

はるま君、無茶しないと良いけど…


二回目だから、すぐに涙が出てくるような悲しみは無かったけど、

あの辛い日々がまた繰り返されるのかと思うと…



―― 第一章 完 ――


帝国の平定。

皇帝の誕生。


ゆうなとはるまの手によって修羅の世界は新たな局面へ進む。


この世界にもたらされた希望が、

新たなる絶望を呼び込む呼び水となったことを、

ゆうなとはるまは知らない。

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