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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第一章 輪廻

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第52話 ルーナと大陸の覇者

「ベルナ!俺ごと撃ち抜け!」


はるま君が敵王を羽交い絞めにしてそう叫ぶ。


「無理です!あなたは私達に必要だ!」

「放してください!その作戦は却下します!」

ベルナさんとルーナさんが同時に叫ぶ。


「クソ!じゃーどうするんだ!」

はるま君があきらめて手を放す。


凄まじい数の死体が動き回り、私達を取り囲んでいる。


この国の人は弱いと思っていたが違った。

私達が知らない所で、こんな力を持った人たちもいたんだ。


はるま君が覚悟を決めて出した作戦だったが、確かに無理だ。

私がそれを許すわけがない。

あの弟は、いつからそんな無茶をするようになったんだ。これからが心配になる。



「しかし、この戦況を打開出来る作戦が無いのも事実…

まさか、ネクロマンシーの実験が成功していたとは。

はるま様の力で戦いが止まっていなければ、

この大陸はアンデッドが支配する世界になっていたでしょう」


「ふむ、ゆうなよ。今、お前に面白いことが起きようとしているやもしれぬな。

祝福の儀を受けていないお主は聖女の力を受け付けない。

しかし、その魂には確実に聖女の力が刻まれているはずじゃ。


自らの力を受け入れて、念じて見よ。お主が思うままの力を」


「どういうこと?ナルビアに聖女の力は…」

いや、迷ってる場合じゃない。

賢者も天狗も愚者も、根拠もなくあやふやなことは言わない。

世界を知る愚者の言葉通りに…


自分の中に意識を向ける。

継承の儀ではじけ飛んだナルビアの力を探す。

みんなが神の力と呼ぶあの力、あの時感じた暖かな光は神の力じゃない。

聖女だけが、本当は神の力じゃないことを知っている。


あれは死人から肉体を切り離して動かすネクロマンスの対極にある力、

人の精神を具現化する力、歴代の聖女の魂が融合して巨大になり続ける神聖力。


私の中に確かにあることはわかる。


でも私には引っ張り出せない。


それをするための祝福の儀を受けていないから。


歴代の聖女がそれを拒否する。


少しイライラする。

民を虐げる残虐な聖女を産み続けたあなた達が私を値踏みするな!

力があるのにつかめない。歴代の聖女達が拒絶しているのがわかる。

たぶん受け入れようという意思もあるんだろう。だからつかめそうでつかめない。


だんだんむかついてきた。

私が新しい聖女の概念を見せてやる!

「あなた達では生み出せない本当のあなた達の理想を見せてやるから!

力を寄越せ!」


光が強く波打つのを感じる。

何故かわかる。人で言うなら議論が過熱してもめてるんだ。

はじけ飛びそうになったその瞬間、

大きく脈打つ光の玉が全身にいきわたるのを感じた。


全てがわかった気がした。

何がわかったのかもわからない。

でもたくさんの記憶や意識から生み出される全能感、

これが聖女が権力に走り腐敗した理由だったんだ。

神になった気にさえさせる。


「ホーリー!」

頭に浮かんだ言葉をそのまま叫んだ。

その瞬間自分を中心に魔法陣が広がる。

大きくなり続ける魔法陣が動く死体を全て包囲した。


一瞬、他の人も円に入ってるけど大丈夫か心配になる。

だが次の瞬間、魔法陣から光の柱が上った。

死体が瓦解し砂に変わる。

それ以外は人も木々も何も変わらない。一切影響がない。


「すごい!ゆうなちゃんすごい!何その力!」

はるま君がはしゃいだ。

「でもやばいこの力、取り込まれそうだ。我は神なりとか言いたい」


「ゆうなちゃんらしいよ。言いそうじゃん」


「そういうのじゃないの!なんだろう。

万能感っていうか本当に神になった感じがずっと精神を蝕みそうな。


シルちゃんもこれ知ってるんだよね?抗えてるんだろうか?」


「目的…だろうね。お主の一番大切な物はなんじゃ?」


「はるま君、パパやママ、しおりんも」


「その大切な物を守る力じゃ。

それらを守るためにお主は万能になった。

力の使い方をそれだけに限定しろ」


「なんだろう。そう言われただけで楽になった」


「力の暴走を止めるコツはな。力の使い方をちゃんと認識することだけじゃ」


「権力が目的になると人はその権力で他者を蹂躙したくなる。

国王になることが目的の人間が国王になると国が荒れるのと同じじゃの」


「なるほど、シルちゃんは民の幸せって目的があって、

その力の使い道も元々決めていたから…」


「そうじゃ。

お主は聖女の力を欲しておらなんだから、聖女の力の使い方を決めておらなんだろ?

祝福の儀はそのための物じゃ」


「聖女になりたいから聖女を目指した聖女候補が祝福の儀を受けて聖女になると、

聖女の力が暴走するってことかな?」


「そりゃそうじゃろうな。

お主はその祝福の儀の在り方に異を唱えて認められたということじゃ。

面白い娘じゃて、さすがは奴の娘よ」


「目的が定まらない者が力を持つと暴走する…」

ルーナさんが深刻な顔で考え込んでいる。


「ルーナさんはそもそも女王になりたいからなるわけじゃないでしょ。

それなら心配ないんじゃない?」


「そうなのですが、不純な者が王になり狂っていく姿には思うところがあるので、

やはり怖いなと思いまして」


「そうだよなあ。力を持った時に狂わないかって言われたら…

俺も力を持ってみないとわからないよ」


「それは私達しっかり肝に命じておかないとね」



「あ、やべ~!あの国王は?」


一同が振り返ると、対戦相手は全員ベルナさんの矢で拘束されていた。

「さすがベルナさん。抜かりがないことで」


「私達が抜けすぎなのでは…」

ルーナさんが自省と共に呆れて見える。



ゴールまで行かなくても結果は明白だけど、私達はのんびり歩いて無事ゴールした。


その瞬間、私達のチームが阿修羅王に決定した。


最終戦では敗北した最強国の王達は、

別の種目で大陸の治安維持を担うことになっている。

もしかしたら治安維持には、あのネクロマンスの力も役に立つのかもしれない。


こうして、半年に渡る国家間の覇権争いは平和に幕を閉じることになった。



翌日会議が開かれたが、当初はグダグダだった。

治安維持隊と経済部門の序列はどちらが上だとか、

今までの国の大きさで言えばとかそんな話だ。


「グズルーン陛下は、

皆さんが望むなら四年後に阿修羅王決定戦は再度行うと言われている。

しかしながら、現在グズルーン陛下が大陸の覇者であると決まった以上、

それ以外の国、部門は序列など無く等しく横並びだと認識頂きたい!」

ベルナさんが厳しい口調で釘をさす。


「丁度良い具合に、それぞれの国がそれぞれの競技で一番を取ることが出来たので、

それぞれの国が治安維持や物流と言った問題に対応して頂くことになる。


少なくともグズルーン陛下が治めるこの四年間は、

グズルーン陛下を中心に国を超えて大陸の発展に尽くして欲しい」


国王の一人が口を開く。

「それはわかりました。

ただ、ひとまず国が存在し続け、

私達が国王として大陸の発展の責任を担うのでしょう。


それなら大陸全土を帝国とし、

グズルーン陛下には、皇帝陛下として帝国を収めて頂くのが、良いでしょう」


「それは良いかと思います。グズルーン陛下、いかがしましょうか」

ベルナさんの発言に各国の王が言葉を上げる。

「初代皇帝には私がなりたかったが、軍門に下った以上仕方ない。賛成だ」

「賛成!」「賛成だ!」

「私がなりたかったが、グズルーン陛下以上の適任はおるまい」「賛成!」


「私が皇帝ですか…陛下が戻られるかもしれないのに…」


「ここはひいちゃ駄目!理想のためにするべきことを考えなくちゃ。

シグルズさんを初代皇帝にすることが目的なの?

シグルズさんの見たかった世界を作ることが目的なの?

天秤に乗せる対象を間違えちゃ駄目!」


「ゆうな様、ありがとう。そうですね。

初代皇帝の椅子を用意して待っていても陛下は私に微笑んでは下さらないでしょう。

きっと、お前は私が欲しかった物さえわからなかったのかとお叱りになる」


ルーナさんは立ち上がり正面をしっかり見つめながら宣言した。

「これより大陸全土はブリタニア帝国が治める連合国家とする。

私はその女帝グズルーンである」


全員から拍手が沸き起こった。

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