第48話 ルーナと世界を統べる戦い
再び修羅の国に戻った私達は、ザルワーンの女王に謁見した。
女王は拍子抜けするほど簡単に全面降伏し、責任を取り即日退位することとなった。
何人が集まるかわからないが、
各国の王様にザルワーンから使いを出して、
キャメロットで国王会議を行うために新女王と共に戻ることになった。
帰りの道中では、各国の王様に謁見を申し出て、
はるま君が軍を壊滅させてごめんなさいや、
協力してくれてありがとうと言って回った。
壊滅した軍の国王は何か言いたそうだったけど、
基本的にははるま君を怖がって無条件の和解へと至った。
国の人々の反応を見ていると、
はるま君がどれだけ滅茶苦茶したのかがよくわかった。
しおりんはあれっきり天狗に何も聞かずに帰ったし、
それ以上新しい情報は増えなかった。
「キャメロットの城が見えてきたね。
でも私達がこの世界でやるべきこと…全然わからないね」
「それなんだけどさ…
俺達が畜生の世界に呼ばれた理由があるとすれば、
呼ばれなくなったのはやっぱりアーサーさんやシルの件だと思うんだ」
「どういうこと?」
「アーサーさんが国王になったこと、シルビアが聖女になったこと。
それで人々の飢えや争いが収まったことが原因じゃないかなって思ったんだ」
「なるほど、はるま君がシルちゃんを助けたことで世界が変わったってことね」
「あの世界は文字通り畜生の世界だった。
人を人とも思わない国王が人を踏みにじることだけを理由に人を傷付け続けた。
その世界を正しい道に導くのが、
アーサーさんやシル、アリシアさんだったんじゃないかな。
実際あれから、三人の外交が成功して世界は平和に向かってるって…」
「だとしたら、この世界を正すのは…修羅の道を閉ざすこと?」
「正すのが正しいかはわからないけど、行き過ぎた修羅の道を正すとか?」
「はるま様!ゆうな様!火が!城より火が上がっております!」
俺達は慌てて走った。
さまざまな国の旗を掲げた軍隊に城が囲まれていた。
使いを出した他の国の軍隊だろう。
「しまったな。こういうことになるとは…
全員殺すってわけにはいかないし…」
「それはお姉ちゃんとして許しませんよ」
「わかってるよ。でも話し合いが出来る状態じゃないしどうしよう」
「ベヒーモスさん!とりあえず戦いを止めて!」
「主よ。承知した!」
「違う!主は俺!ゆうなちゃんは違う!でもそれで良いよ!お願い」
ベヒーモスさんが土壁で軍隊を覆っていく。
逃げ惑う兵士たち、でも傷付けずに無力化してくれた。
確認すると見事に二十一個の旗があった。
「キャメロットとザルワーン、間の国を除く二十一の国が全部敵か。絶望的だな」
まずは一番強いとされる国の王様に呼びかける。
ベヒーモスさんが作った壁の上に立ち、
十万はいるだろう兵士に向かってはるま君が叫ぶ。
「俺は一人でザルワーン五万の兵を壊滅させた。女王も一緒に連れてきている。
信じない者もいるだろうが、
それを証明するためだけに今から五万の兵を再び殺したくはない。
どうか話し合いの席を設けさせてもらえないだろうか!
少なくとも、
この壁を押し倒して大きな損害を与えることが出来ることは考慮に入れて欲しい!」
次の瞬間、飛んできた大量の矢をイフリートさんが消し炭にする。
「やっぱりか。これじゃ話にならないな」
「それほど脅威とは思えないのですが…」
ルーナさんの質問にはるま君が答える。
「一国二国ならともかく、
二十一の国相手に停戦の話し合いをすることが絶望ってことだよ」
「それならばひとまず、閉じ込めて兵糧攻めにするのはいかがでしょうか?」
「お腹すいたら考え変えてくれるかもしれないし!」
「わかった。とりあえず頭冷やす時間を与えたいし、一旦それでいこう。
ベヒーモス!絶対出れないようにしてくれ。このまま閉じ込める」
「承知した」
即座に壁が分厚く高く盛り上がっていく。
それを見届けるとみんなで城に入った。
城は慌ただしく、消火作業やケガ人の治療に追われていた。
偉そうに玉座に座るはるま君が笑える。
アリシアさんなら滅ぼそうだから参考に出来ないけど、
アーサーさんならどうしただろう。
みんなで仲良く!は難しいだろうし、結局誰かが上に立つしかないのかな。
パパなら…
やっぱり自分が悪者になっても力で抑えてまとめるのかもしれない。
違う。パパがいつも言ってた。
ルールを破っても良いのは、
ルールの中で最善を尽くし、ルールを変えようと全力を尽くした後だ。
「ルールが気に入らないならルールを破るのではなくルールを変えろ」
突然はるま君が叫ぶ。
「それだ!殺し合いで勝った方が勝者って考え方が間違ってるんだから」
「民主主義を取り入れて選挙するとか?
いやそれは、
多数決は投票する側の倫理観が問われるってパパが言ってたからダメかも。
スポーツの勝者が王様になるとか」
「それ良いかも!
勝敗がはっきりして名誉があれば修羅界でも受け入れられるだろう。
そこでの勝者には俺も協力すると約束すれば、
みんなルールを守るんじゃないかな」
「競技は勝ち負けもルールもわかりやすいのが良いね!
長距離走とかどうかな。団体戦ならドッジボールでも良いけど!」
「ドッジボールも良いかも。出来るだけいろんな力を試せる競技が良いね。
俺達が参加しても勝敗はわからないぐらいの競技…
ルーナを鍛えて、俺達が勝てばルーナが女王だ」
「なっ!私にそのような大役が務まるはずが!」
「キャメロットのために、
シグルズが戻るまでの間この国を治める役目を他の人間に譲るって?」
「そ、それは…」
「決まりだ。
シグルズの思いをつなぐ人間は自分しかいないと胸を張るべきだ。
ここを逃せば二度とシグルズが日の目を見ることはなくなる」
「いやしかし…シグルズ殿下の意思をシグルズ殿下につなぐ…
私に出来るでしょうか…」
「出来なければシグルズさんの意思は今日絶えるだけだよ。
どうせならルーナさんの力で、
シグルズさんの目指した世界を終わらせてあげたら良いと思う。
私達はパパの目指した世界がわからず苦しんでる。
でもルーナさんは違うんでしょ?
シグルズさんの目指した世界、見えてるんでしょ?」




