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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第一章 輪廻

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第44話 はるまと終わりの聖女

「馬鹿が!俺より先に死ぬんじゃね~!」


気が付いたらベヒーモスの力で地面から突き出した土槍が、

俺を狙っていた兵を串刺しにしていた。


馬鹿は俺だ。何が思ったより戦えてるだ。

何が人外に鍛えられただ。

俺の傲慢がルーナの危険を招いたんだ。


「ベヒーモス!ルーナを安全な場所に!絶対助けろ!


覚悟しろよ。てめーら一人残らず殺してやる」


自分の怠惰に嫌気がさした。自分への怒りが抑えられない。

一心不乱で剣を振る。自分が知らない剣技だった。

身体が勝手に動く。切りたいと思った相手が切られていく。

これは俺の動きじゃない。そうだ。

俺は最強の剣士だ。その記憶だけが身体を動かす。


その時、ベヒーモスの方に向かう兵の姿を見た。

「カッ!」

叫ぶだけで振り下ろした腕から風の刃が飛ぶ。


「ワラワラとうぜ~ぞ!メテオフォール!」

凄まじい数の隕石が敵兵めがけて落ちていく。

一気に兵の数が減っていく。


そうだ、俺は魔王軍最高の魔法の素質を持って生まれた倉庫番の息子だ。

その記憶だけが、様々な魔法を繰り出す。


剣と魔法で次々と敵を屠る。

生死さえ気にならない。

とにかく邪魔をする人間を排除する。

そのためだけに俺は記憶のままに剣を振り魔法を繰り出した。


十人ほどの兵が俺に一斉に切りかかる。

その瞬間横から噴き出した炎に燃えつくされた。


振り向くとイフリートが笑っている。あちらは終わったようだ。

気が付くと五万はいた兵が数人になっていた。


残りの兵を軽くいなし俺は豪華な装飾が施された鎧を着た騎士に歩み寄る。

「寄るな!貴様!こっちに来るな!」

そう言いながら切りかかる兵士を全て切り捨てた。


最後に残った騎士が剣を振り下ろしながら叫ぶ。

「なんなんだお前は!」


その剣をはじき返した俺はファイアボールを撃ち出した。


「貴様一人に五万の兵が倒されるなど、断じてあってはならんのだ!」


身体を覆いつくす炎をかいくぐり、騎士が渾身の一振りを打ち出した。


軽くいなした俺の一撃で騎士は崩れ落ちた。

ゆうなちゃんを助けるために殺すことを選んだ時点で、

一人殺すのも一億殺すのも俺にとっては同じことだ。


「何人いようが関係ないね。ゆうなちゃんを探し出すためなら邪魔者は全部倒す」


騎士は憎しみのこもった目でにらみつけてきた。


「お前は希望をもたらす勇者ではなかったのか!」


俺は鼻で笑ってしまった。そもそも俺は希望をもたらす勇者なんて物を知らない。

もし、俺がみんなの希望だとしても、俺にこいつらを助ける義理は無い。


「お前達は自らの手で最後の希望を奪ったことにすら気が付かないのか?


綺麗な俺のままじゃゆうなちゃんが見つからないんだ。

一人殺したあの瞬間に、この世界を滅ぼす覚悟ぐらい出来てるさ」



ルーナが涙を流しながら駆け寄ってきた。

「陛下!あれこそ陛下の剣、やはり陛下なのですね」


「陛下?

陛下とは誰のことを…いや今はどうでも良いなゆうなちゃんの所に急ごう」



馬で一時間ほど走っただろうか。首都に到着した。

門番をイフリートが焼き払い、

邪魔な攻城兵器をベヒーモスの土壁が押し潰す。


「これじゃとてつもなく派手な野盗だな」


そのまま城に突入する。


捕まえたメイドに終わりの聖女が幽閉されている部屋を聞き出し向かった。


しかし、その部屋を見た瞬間驚愕に震えた。


一人の小さな少女が凄まじい返り血…いや人間の肉や内臓を浴びながら立っていた。


「これは…暗殺者か?」

人の形をしていないが残った服からそれが元は暗殺者だったことがうかがえる。


「お主も、我等を傷付けに来たのかえ?」

無垢な少女のように笑うその笑顔に俺は一瞬凍り付いたような感覚に襲われた。


駄目だ。この少女に敵対してはいけない。

俺がどれほど強くなろうとも、この子は違う。

アリシアさん達とはまた違った強さ。逆らってはいけない力を感じる。


「違う。君の敵じゃない。俺は姉である終わりの聖女を救いに来た」


「姉?我等に弟はおらんでな。お主は誰じゃ?」


我等に?弟はおらん?これが終わりの聖女?


「嘘だろ?終わりの聖女はゆうなちゃんじゃない?

最悪だ。ゆうなちゃんはどこに」


「お主、はるまか?

終わりの聖女などと呼んでくれるな。我等は愚者と呼ばれていた」

突然、少女が嬉しそうな顔になって聞いてきた。


「愚者…?

はるまは…俺のことだ」


「そうかそうか!お主がはるまか!奴の息子じゃな!」


「父さんのこと知ってるの!?」


「そりゃそうじゃ。

我等はお主の知る…ん~賢者と天狗じゃな。あれの片割れじゃからな」


ん?どういうことだ?


「現実の天狗と精神世界の賢者、賢者の対が同じ世界にもう一人?」


「何を言っとる。ここはお主が精神世界と言っておった世界ではないぞ?」


頭がぐるぐる回る。どういうことだ。違う世界?なんなんだこれ。


「違う世界?」

ハッとなって俺はルーナを見る。

「俺の器になった人間は誰だ?」


「我らが国王陛下の名はシグルズ様と申します」


なんてこった俺は根本的に勘違いしていた。

じゃあゆうなちゃんの手がかりは何もないじゃないか。

俺は絶望に崩れ落ちた。


「あ~そういえば、お主の姉じゃがな」


そうだ。こいつはなんでも知ってる天狗の片割れ。

ゆうなちゃんのことも知ってるかもしれない。


「姉の片割れの王女は魂の封印を死だと勘違いされての。

二、三年前に葬儀が行われておるよ」

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