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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第一章 輪廻

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第41話 はるまとグズルーン

「どちらが強いのか。さらなる栄誉の為に命を懸ける。それが戦の発端です」


俺は馬車に揺られながら騎士の言葉に呆れた。


「なんだよそれ。そんなことしてたら一番強いやつ以外全員死ぬんじゃない?」


「そうかもしれません。ただ名誉ある死であればそれも望むところです」


「承認欲求の極限みたいな感じなのかな?

他者から認められることが全てってこと?」


「そうですね。自国が隣国より優れているのか。

最高の国で最高の誉れを受けることが全てです」


「くだらなすぎるでしょ」


「それは侮辱ですね。取り消して頂きたい」


そうか。考え方は人それぞれだ。

人の価値観を真っ向から否定したら駄目だな。

「そういえば名前を聞いてなかったね」


「いまさらですか?最初に名乗りましたが…」

騎士が呆れて答える。

「グズルーンです。ルーナとお呼び下さい」


「そうか、本当に悪かったよルーナ。ごめんなさい」

深く頭を下げながら自分の浅はかさに嫌気がさした。


「謝罪を受け入れます。失礼しました」



「これさ。この国は無事抜けられると思う?」


「無理でしょうね。すぐにも追手が来るでしょう」


自分の手を見つめながら、罪を重ねる覚悟を決める。

それと同時に、今までも俺の為に流された血を思い返した。

そう、アーサーさんやアリシアさんが陰で流した血も、他人事じゃなかったんだ。

俺が戦わなくてもルーナに戦わせることになるだけだ。


「俺が力を示せば、戦いを回避することも出来るだろうか?」


「王より強き力を示せば、付き従う者も出るでしょう。強き者に従うは道理です」


なら常に全力で戦おう。

俺の力がどこまで通用するかわからないけど、

相手が戦うべきじゃないと思うまで戦うしかない。



ヒヒィーーーッ!キーーーッガタンッ!


いつのまにかうたたねしていたのかハッと気が付くと馬車が止まっている。


「少しお待ち下さい。様子を見てまいります」

ルーナが馬車を飛び降りた。


「いや、俺も一緒に行こう」

俺も続いて降りた瞬間、30名程の騎士が目に入った。


少し豪華な装飾が付いた甲冑を着た騎士がこちらに向かって叫ぶ。

「貴殿が人を率いて魔大陸を打つため、キャメロットに降臨した勇者であるか?

相違なければ我が王の御前に一緒に来てもらおう!」


「俺は急ぎザルワーンへ行きたいんだ。帰りなら寄るから今はほっといてくれ!」


「それは我が国よりもザルワーンが格上と言うこと。

認めるわけにはいかぬ!無理にでも来てもらうぞ!」


「ルーナ、無理みたいだね。戦うしかないかな?」


「そうですね」


「イフリート!とりあえず半数を、

出来るだけ派手に恐怖を植え付ける方法で倒して欲しい」


「グォォォ!恐怖が望みか!マーリンよ承った!インフェルノ!」


煉獄の炎が天高く燃え上がり空から騎士目掛けて炎が落ちた。

無数の炎が突き刺さった瞬間、騎士が一気に焼け焦げ破裂する。


見ていて気分が悪くなる。

これは注文通りの派手に恐怖を植え付ける方法だがやりすぎだ。


「倒せって言った時は出来るだけ殺さないようにして欲しい。

それと俺はマーリンじゃないって何回言えばわかるんだ」


「殺したのは間違いであったか。承った!

しかしお前はマーリンだ!我が主よ」


イフリートは完全に俺をマーリンだと思ってる。

勘違いしているわけじゃない。魂しか見ていないんだ。



「これは宣戦布告と受け取る!我が国の名誉にかけて、必ず貴様の首を取る!」

そう言い残して残りの騎士は逃走した。


だがこの国を出るまで、追撃はなかった。

「おそらくイフリートの力を考え、

はるま様に触らぬようにとお達しが出たのでしょう」

この国を通過するのに二か月程かかったが、

結局何事もないまま国境の検問まで辿り着けた。


でも次の国ではまた戦うことになるんだろう。

覚悟を決めて二つ目の検問へ向かう。



「我が国の関所に何用ですかな?」


前回と同じパターンだと思っているとルーナが先に答えた。

「ザルワーンに行きたく、通して頂きたい。

貴国にご迷惑をかける意図はございません」


また戦いかなと思っていると衛兵は予想外に答えた。

「我が国は貴殿らと敵対する意思はない。

帰りに首都に赴き王にお会いして頂けますか?

魔大陸侵略の際は我が国が中心となるよう協力しましょうぞ」


ルーナがこちらを見たので俺は首を縦に振った。

「わかりました。必ず寄ると約束しましょう。

ご協力いただけるとのこと、感謝します」


検問を通りすぎてからルーナが口を開いた。

「おそらくですが、隣国ですからね。

はるま様がイフリートで騎士を撃退した話などが広まっているのでしょう。

隣国にはどの国も必ず間者を送り込んでいますからね」



「これ本当にまっすぐ北に向かってるんだよね?半端じゃなくでかい国なのか?」

この国に入って二か月、まだ二つ目の国を出られない。


「元々この国には九十六の国があったと伝え聞いています。

それが戦いに次ぐ戦いで二十八まで減ったのです。

この国は第三位の大国で元は十三の国だったはずですので領土はかなり広いです。


この国を出るまででそうですね。今は半分といったところでしょうか」


「嘘だろ…ザルワーンまでどれだけかかるんだ」


「全部で一年ほどは御覚悟下さい」


「出発から一年かかるってこと?これ以上早い方法はもちろんないんだよね?」


「ありませんね。この馬は国でも最高の馬ですから最短です」


「やばいな。こうしてる間にもゆうなちゃんはどんどん精神を削られてる。

あんなゆうなちゃんはいつまでも見ていたくない」


「聖女様のお話ですか?夢で会えると言う」


「そうだ。幽閉されてどんどん精神が侵されてるんだ」


「わかりました。休息を減らして、出来るだけ急ぎましょう」


「ありがとう。わかってくれてるだけでも嬉しいよ」

理解者がいるってだけでも気持ちが楽になる。

ルーナは本当に尽くしてくれる。マーリンとそんなに親密だったんだろうか。



結局四か月かかって国境の検問にたどり着いた。

ここまでは来られたが、問題は第三の国の態度がどうかだ。


入国するため検問に近付くと軍が見えた。

数千はいるだろうか万に届くかもしれない。

「これは…厳しい戦いが待ってる感じかなあ。勝てるのかな」


「私は千人なら倒したことがありますので、

五千ぐらいは相手に出来るかもしれません。

はるま様残りをお願いしても?」


「一騎当千の騎士って本当にいるんだ。ルーナはすごく強いんだね。

イフリートなら全力でやればいけるか?

ただし、全部吹き飛ぶぐらいはするだろうな。殺さずなんて言ってられない」


「ありがとうございます」

ルーナはなぜか頬を赤くしていた。


俺は再び覚悟を決めて検問を通り軍隊の前に立った。

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