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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第一部 第三章 回廊

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第35話 はるまと世界を救う方法

息子の仇の息子。


その言葉ばかりが、頭から離れなかった。


それでも、恐竜に会えたことは本当に嬉しかった。


だから、たくさん話をした。


恐竜の教えを守っていること。


恐竜がいなくなってからのこと。


「俺さ!すごく狩りがうまくなったんだ」


恐竜は優しい笑顔でうなずいてくれた。


「助けた子が聖女でさ!」


「うむ、よくやったのう」


頭を撫でられる。


「それでさ、それでさ……」


恐竜は何度も相槌を打ちながら聞いてくれた。


そして最後には、暖かく抱きしめてくれた。


胸の奥に押し込めていた言葉が、堰を切ったように溢れ出す。


「ごめんよ。父さんがマーリンを……恐竜の息子が……」


そこで言葉は途切れた。


涙が止まらない。


「いいんじゃ。いいんじゃよ」


恐竜は静かに背中をさすってくれた。


その優しさが、余計に胸を締め付けた。


涙はいつまでも止まらなかった。



「嬉しそうに作ったゴーレムを恐竜に見せる夢を見たよ」


恐竜がハッとしたように驚くが、その顔はすぐ喜びに変わった。


「そうか。そうか」


「マーリンがなぜ封印されないといけなかったのかわからなくて…


なんで俺の父さんが精神世界の人にそんなことするのかわからなくて…」


「その答えはな…」


「何か知ってるの?知ってるんだよね?」



「ゆうなとはるまが自分達で知らねばならんことじゃ」


「教えてくれないの?」


「ならば一つだけ教えよう」


恐竜は少しだけ目を伏せた。


「はるまとマーリン。ゆうなと聖女ナルビア。


お前たちはそれぞれ、同じ魂から分かれた片割れのような存在じゃ」


「同じ魂……?」


「だからマーリンが選ばれたわけではない。ナルビアが特別だったわけでもない」


恐竜の声が重くなる。


「あの二人が封印された理由は、お前たちの片割れだったからじゃ」


全身に悪寒が走った。


その意味を理解するより先に、ゆうなちゃんが叫ぶ。


「それって……!」


顔色を失ったゆうなちゃんが震える声で続ける。


「パパが私たち自身を封印したってこと!?」


「……はっきり言えば、そういうことじゃ」



「どうして…」


「どうして封印なんてしたの?」


恐竜はすぐには答えなかった。


「はるまがシルを救った。これが世界が救われるきっかけとなった」


「え?いや俺がやったことなんて…」


「なんじゃ? 選ばれし勇者として魔王を倒し、

この世界に光を取り戻した伝説にでもなれば満足かの?」


「いや、そういうことじゃなくて…」


「事実シルを救わねば、アーサーは国王にならず、トゥルールは滅びたまま。


さらに、魔王様がおらなんだら、そもそもトゥルールは滅んでおらん。

その代わり、さらに何万という奴隷が、

新たな宮殿の基礎として埋められておったかもしれんな」


「滅ぼしたのが良いことってこと?」


「魔王は悪い奴じゃよ。国を滅ぼして良いことなどと誰も思ってはおらんわ」


「世界の均衡など、その程度じゃ。


それが、この世界にゆうなとはるまが来た意味じゃと、わしは思っておるよ」



ゆうなちゃんが何か言いたそうにしていたが、意を決して口を開いた。


「嵐が来たら、おけやが笑うって奴だね!」


何を言ってるんだ。この姉は、馬鹿なのか。


「その言葉はよくわからんが…そういうことかもしれんな」


なんてこった、恐竜が気を使ってる!



シンシアが茶化して言う。


「魔王様食いたいって言ってたガキが、世界を救った勇者様か~」


「だから最初から魔王食いたいなんて言ったこと無いってば!」


みんなが笑う。



「でも本当に良かったよな。はるまはいっつも恐竜って寝言で泣いてたんだ」


「シンシアそれは!」



「あ…まあいいだろ」


シンシアは悪びれもせず豪快に笑った。



馬鹿だなと思ったけど、ゆうなちゃんにもシンシアにも本当に救われている。



「これで魔王様も、別の方法があると気付くかもしれん」


「魔王のやり方を変えて欲しかったの?」


「そういうわけじゃないがな。正解など誰にもわからんということじゃ。


最近の魔王様は少し過激になっておってな。結論を出すのが早いんじゃよ。


だからと言ってその魔王様の判断が間違っておるとも思ってはおらんよ。


言ったじゃろ?正解は無い。結論はひとつではないということじゃ」


恐竜は少し考えて言った。


「父の封印を解く方法があるかはわからんが、魔王様に会って確かめるか?

会わせてぐらいはやれるがの…」


俺が言い淀んでいると、ゆうなちゃんが答えた。


「いらないよ。パパが自分で自分を封印したとわかった以上、

パパのやろうとしたことを私は邪魔したくない。


でもね、パパのやろうとしたこと、それだけは知りたいから探すよ」


それを聞いて俺も覚悟を決めた。


「そうだね。 今は父さんを起こしたいんじゃない。


父さんが何を見て、何を残そうとしたのか知りたい。


魔王に会いに行くのはそれからにしておくよ」


「そうか、それがええじゃろ」


恐竜はとてもやさしい笑顔で俺とゆうなちゃんの頭を撫でた。



そんな話をしていると、突然おじさんが指をパチンと鳴らした。


足の生えたお皿が並んで入ってきた。


「うわ~すごい!おいしそうな料理が歩いてきた!」


ゆうなちゃんとシンシアが興奮してはしゃぐ。


「とりあえず飯でも食いんさいな」



食事をしながらおじさんの結界の力について話を聞いた。


空間を切り裂いたり、同じ空間をループしたり、

その道ではトップの魔術師だったらしい。


「このじじいは空間を扱う魔術では右に出る物はおらんのじゃ」


「だけんど、よその世界をつなぐ魔術の類は知らんのう。

文献もないと思うけんども」


「やっぱり俺たちの状態についてはわからないんだね」



食後、ゆうなちゃんがなぜかマジックを披露し始めた。


「パパから教えてもらったんだけど、

右手にあったはずのコインが~無くなりました~!」


いや魔法で物を消せる世界でコイン消した所で…


「お~すごいの~」


反応が予想外だ。


乗ってくれているだけだと思った。


「まったく魔力の流れを感じなかったぞ。素晴らしい魔力コントロールじゃな」


俺は着眼点の違いに笑った。


「そっちか」


視点が違えば善悪も変わる。


恐竜が言いたかったのもこういうことなのかもしれないな。



楽しい時間を過ごして、俺は深夜までシンシアと語り合った。


「でも、これからどうしようかな~完全に行き詰ったよ」


「のんびり行けば良いんじゃないか~。

とりあえず魔王様に会うか、他の国を見て回るのも良いな。


魔王様が滅ぼそうとしてる国もまだまだたくさんあるしな」


「そうか、しばらく付き合ってくれる?


俺とゆうなちゃんと一緒に、世界を見て回ろうか。


シンシアと一緒に行きたいなって思うんだ」


「それも良いな。まだまだ見たことないものたくさんあるぞ。


泣き虫はるまが心配だから、どこまでも付き合ってやるよ」



眠る前に恐竜の方を見た。


恐竜はゆうなちゃんと笑いながら話している。


もう会えないと思っていた。


ずっと会いたかった。


それなのに今、


当たり前みたいにそこにいる。


それだけで十分だった。


俺は安心しながら眠りについた。

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