第34話 はるまと会いたい人
「恐竜…どこに行ったんだ」
あれから色々話を聞いたけど、何もわからなかった。
しばらくこの部屋を使っても良いと言ってもらえたので泊まることにしたが、
ここにいても情報が増えそうにはない。
「どうしたもんかなぁ」
隣を見るとゆうなちゃんは豪快に寝ている。
「気楽で良いなあ」
考え込んでも仕方ない。
寝るとしよう。
薄れいく意識の中で夢を見た。
父さんに自作のプラモを見せた時みたいに、
恐竜にゴーレムを見せてる姿だった。
恐竜がすごいねってほめてくれる顔がすごく嬉しい。
父さんみたいに、こんなの父さんには作れないよって言ってくれる。
今なら嘘だってわかる。
父さんなら作れたはずだ。
こうしてみたらもっとよくなるんじゃないかな?って教えてくれる。
あ~そうだ父さんに褒めてもらうのが嬉しくてたまらなかった。
父さんみたいになりたいってずっと思ってた。
父さんみたいに強くて、大きい男に…
目が覚めた時、涙を流していた。
あれはなんだったんだろう。
ゴーレムなんて作れないし恐竜に見せたことないのに。
父さんと恐竜が重なる夢だ。
起きるのを待っていたようにメイドさんが入ってくる。
「お食事を用意しました」
礼を言いテーブルに向かう。
ゆうなちゃんも食事に誘われるように起きた。
朝食を取りながらゆうなちゃんが気が付いたように口を開く。
「そういえばさ、結界を通る前なんだけどさ。
あのおじさん、じゃー魔王城に行かんでもって言ってなかった?
恐竜に違う場所で会える。
そう言いたかったのかなと思ってたんだよね」
「そういえばそんなニュアンスのこと言ってたかも。一回戻って聞いてみようか。
何か手がかりが手に入るかもしれないしね」
朝食を食べると礼を言い、元の場所に戻ることにした。
「戻る時ってどうやって結界を越えればいいですか?」
メイドさんが教えてくれた。
「出る時はそのまま歩いて行けば普通に小川に出れますよ」
お礼を言い城を出ると、町が広がっていた。
露店が並び良い匂いもしてくる。
ゆうなちゃんが欲しそうに肉串を眺めている。
「嬢ちゃん食べるかい!」
差し出された肉串を躊躇なく受け取り食べるゆうなちゃん。
「ゆうなちゃん!もう」
「おいくらですか?」
聞くと、店主が首を傾げて言う。
「金なんていらんよ?役に立たんし」
「そうなんですか!でもそれじゃ困るんじゃ」
「この街自体がそういう場所だからね。金が必要なければ稼ぐ必要もないさ」
「おじさんはなんのために仕事してるんですか?」
「仕事って言うか。
みんな肉食べたいだろうと思って焼いてるだけ?みたいな?
ガハハハハ」
やりたいことやって社会が回ってるってすごいことだな。
「私達は仕事してないけど食べても平気なの?」
「そんなもん気にしてるやつはここにゃおらんわ。
誰が仕事してるかなんてわかりゃーせんて、わしも働いてるのかわからんでな」
私欲が無いからなのか。魔王の求心力が凄いからか。
でもこの均衡がもし崩れたらとんでもないことになるんだろうな。
凄まじい力を持った魔神のひとりでも私欲で動けば、
どれだけの国が滅ぶかわからない。
そう考えると自分が今立っている場所の危うさに背筋が凍った。
そのあともゆうなちゃんはあちこちで食べ物をもらっては食べまくってる。
もう少しは遠慮という言葉を覚えた方が良いと思う。
歩いていると雑貨屋のような店があった。
何やら色々置いてある。
その中に見覚えのある人形が。
「あのゴーレムだ!」
店主が言う。
「知っとるんか?こりゃマーリンが作ったゴーレムだ。
まだこんまいガキの頃じゃがの。父親に褒めて欲し―て作ったもんだわ。
倉庫番もうちの息子がゴーレム作った言うてそれはそれは喜んどったわな」
倉庫番?息子?マーリンが?
「父さんが封印した俺の器が、恐竜の息子だって?」
なんてこった。
じゃあ俺は息子を封印した男の息子?敵みたいなものじゃないか。
それとも、マーリンが何かとんでもない罪を犯したっていうのか。
恐竜に会いたい…ずっとそればかり考えてきたけど、
俺はどんな顔して恐竜に会えば良いんだ。
複雑な気持ちを抱えながら草原を抜け小川を超えて森に戻る。
あの小屋が見えてきた。
おじさんが恐竜の居場所を知っているのか。
期待と同時に不安が大きくなる。
足が重くなってきた。
行きたいでも行きたくない。
悪いことをした後に父さんに会う時の気持ちに似てるかもしれない。
ゆうなちゃんは気にせずドアをノックする。
「誰じゃ~開いとるから入ってきんさい」
おじさんの声が聞こえて中に入る。
おじさんがまたソファに寝転んでいた。
「おお、君らか。やっぱり会えんかったじゃろ」
「会えないってわかってたの?」
座りなおしたおじさんが答える。
「いんにゃあの時は城におるかもなって思ったけんどな。
お前さんらに会いたい人が来とるで、戻ってくると思って待たせとった」
誰だ?会いたい人?
高鳴る胸を押さえて部屋の中に入っていく。
椅子に座る人物が視界に入る。
「シンシアちゃん!」
シンシアにも会いたかったが、正直ちょっとだけがっかりした。
「シンシアか」
「シンシアかってなんだ。泣き虫はるまが寂しいかと思って来てやったのに」
「寂しくなんてないし泣き虫じゃないよ!
シンシアこそ、シルの護衛じゃなかったの?」
「調印式も終わって平和そのものって感じでさ~。
護衛もたくさんいるし暇なんだよ」
「暇だから来たのかよ」
「ゆうなとはるまの近くの方が面白いこと起こるだろ」
たわいもない話をしていると、不安が吹き飛ぶ。
やっぱりシンシアは俺の不安や嫌な気持ちをいつも吹き飛ばしてくれる。
ずっと冒険して支えてもらってきたんだってことを実感した。
その時、後ろから声が聞こえた。
「はるま、少しデカくなったか?」
その声には聞き覚えがあった。
ずっと聞きたかった声だ。
振り返ると恐竜があの時の姿のまま立っていた。
「もう10年経ったからね」




